2023年度の【フラット35】利用者、中古マンション・戸建てで年収倍率が下がる、全期間固定型ローンを活かすポイントも紹介

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2023年度の【フラット35】利用者、中古マンション・戸建てで年収倍率が下がる、全期間固定型ローンを活かすポイントも紹介

金利のある時代がやってきた。住宅ローンの金利上昇が懸念されるなか、先行して、全期間固定金利型の住宅ローンの代表格【フラット35】の金利がじわじわ上がっている。その【フラット35】は、どういった人が借りたのだろう?住宅金融支援機構が発表した2023年度の調査結果を見ていこう。

【今週の住活トピック】
「2023年度 フラット35利用者調査」を発表/住宅金融支援機構

【フラット35】利用者の半数近くが注文住宅。新築マンションは減少、中古は増加

調査対象は、2023年度(2023年4月~2024年3月)に、住宅を取得するために【フラット35】を利用した3万2382件。日本銀行が「マイナス金利解除」を決めたのは、2024年3月19日の金融政策決定会合でのことだが、【フラット35】の金利は2023年度にかけてに大きく変動した(最頻の金利で1.72%~1.96%の間で上がり下がりした)。こうした背景を元に、調査結果を詳しく見ていこう。

まず、【フラット35】利用者の取得した住宅を見ると、「注文住宅」(土地付き注文住宅+注文住宅)が44.2%と半数近くを占めるのが特徴だ。次いで「建売住宅(新築分譲戸建)」の20.4%、「中古戸建」の15.3%、「中古マンション」の12.1%、「(新築)マンション」の8.1%となる。10年前と比べると、価格の高騰が激しい新築マンションの利用者が減り(2013年度16.6%→2023年度8.1%)、中古(中古戸建+中古マンション)の利用者が増え(2013年度13.9%→2023年度27.4%)ている。

融資区分別(建て方別)利用割合の推移(出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」)

融資区分別(建て方別)利用割合の推移(出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」)

中古(戸建・マンションとも)で借入額が減少。年収倍率も下がる

次に、【フラット35】をいくら借りたか、融資金の額を見よう。
まず、土地と建物の両方を取得する「土地付注文住宅」がもっとも高額で、前年度より153万円増えて4171万円となり、「注文住宅」でも73万円増の3040万円となった。建設費用や地価の上昇に加え、近年の注文住宅では高性能化が進んでいるので、そうした影響もあるのだろう。

前年度より最も増加したのは、価格上昇が止まらない「(新築)マンション」だ。一方、中古マンションや中古戸建は2022年度以降横ばい傾向となり、2023年度には大きく下がった。増加傾向だった「建売住宅」も2023年度に反転して下がった。

融資金(融資区分別)の推移(出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」)

融資金(全国)の推移(出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」)

注意したいのは、住宅取得のために借りているのは【フラット35】だけではないことだ。全国平均で見ると、手持金(頭金)は12.7%、【フラット35】の借入額は82.6%、その他に民間金融機関からの融資が4.5%などとなっている。【フラット35】の窓口となる金融機関の住宅ローンで、不足する分を補っている状況もうかがえる。

さて、融資の額で前年度より減少したことの影響を受けて、年収倍率も「建売住宅」「中古マンション」「中古戸建」でかなり下がるという結果になった。中古については年収の5~6倍内に収まっているので、無理のない範囲で借りていることになる。

年収倍率(全国)の推移(出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」)

年収倍率(融資区分別)の推移(出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」)

「変動型」に押され利用者が減る「全期間固定型」の特徴を活かすには?

ここで、【フラット35】の利用者調査の結果と、他の調査結果とを少し比較してみよう。

まず、住宅金融支援機構が実施した【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】と比べてみよう。利用した住宅ローンの金利タイプは、超低金利を受けて「変動型」が増加トレンドで、76.9%を占めた。「固定期間選択型」(15.1%)や「全期間固定型」(8.0%)は減少トレンドにある。

変動型が増加しているのは、0.5%以下などの超低金利が理由だ。当初の金利が低いほど年間の返済額が抑えられるだけでなく、年収に占める返済額の割合(返済負担率)も低くできるので、より多くの額を借りることができるという側面がある。

実際に、首都圏の新築マンションと中古マンションの2023年度の平均価格と比べよう。マンションの取引事例の多い首都圏のデータを見ると、市場全体の平均価格のほうが、【フラット35】利用者の平均購入価額よりも高いことが分かる。より多く借りるために、【フラット35】ではなく、変動型を選択していると推測できる。

●2023年度(首都圏)の比較
不動産経済研究所:首都圏の新築マンションの平均価格/7565万円
東日本レインズ:首都圏の中古マンションの平均価格/4700万円
【フラット35】利用者:首都圏の新築マンションの平均購入価額/5801.2万円
【フラット35】利用者:首都圏の中古マンションの平均購入価額/3378.6万円

ただし、変動型は適用される金利が変動するため、金利が上昇すると返済額が増えるというリスクがある。返済に余力があれば、そのリスクに対処することができる。

返済余力の一つの指標が、「世帯年収」だ。世帯年収が高いほど家計に柔軟性があるため、返済余力が高いことになる。世帯年収の平均値は、【住宅ローン利用者】では791.1万、【フラット35】利用者では660.5万円で、【フラット35】利用者のほうが低めだ。また、【フラット35】の利用者では、世帯年収400万円未満が19.8%を占めることも特徴だ。世帯年収が低めの人ほど、全期間固定型を選んで住宅ローンの返済額を安定させるほうが得策だ。

一方で、【フラット35】は住宅の性能が高いほど、当初金利を引き下げる【フラット35】Sの引き下げ幅が大きくなる。そのため、住宅の性能が高い注文住宅での利用者が多いという見方もできる。かつては新築マンションも性能面の恩恵があったが、価格が高騰をしている今は、より多額の融資が受けられる低金利の変動型が選ばれるということなのだろう。

いま、住宅ローンについては、さまざまな選択肢がある。取得するのはどんな住宅か、世帯年収やライフスタイルはどうか、などをよく考えて、自身に合う住宅ローンを選ぶことが重要だろう。

●関連サイト
住宅金融支援機構【2023年度 フラット35利用者調査】

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