【会場レポート】中国のシリコンバレー、深圳でEeIE智博会開催|「製造設備の国産化」奨励、国産CPUなど展示
7月18日~20日、深圳で最も大規模なコンベンションセンター深圳国際会展中心(深圳宝安区)にて、2024EeIE智博会が開催された。
EeIE智博会(Electronic equipment Industory Exposition)と題した、深圳国際知能設備産業博覧会&深圳国際電子設備産業博覧会は、今年で11回を数える製造自動化設備の展示会だ。「世界の工場」として名高い深圳では、このような製造設備の展示会が多様なタイトルで頻繁に開かれている。知能ロボット博覧会、電子製造設備博覧会など、名前はさまざまだが、いずれもインダストリー4.0が叫ばれる時代になってから盛り上がっている、インテリジェントな製造設備の博覧会だ。
中国の大きなテーマ「製造設備の国産化」
インダストリー4.0に加えて、ここ数年は米中貿易対立などから、中国国内では「製造設備の国産化」が奨励され、各地方自治体が補助金や税金の減免、工業団地の無償貸与などの奨励策をとっている。製造用設備はいま、投資が集まっている分野であり、会場には各地域からの投資集団も見られた。
中国を代表する工作機械メーカーの一つ、HAN’S LAZERも出展。工業用レーザー加工機を主力に、すでに上場済みの同社だが、協働ロボットやCNCなど、次々と工作機械を開発している。会場では自動はんだ付けロボットを展示していた。
日本企業も展示、高精度の需要に応える
また、日本の製造業機器は中国でも人気で、高精度が要求される工場では日本メーカーの設備が並んでいることが多い。このEeIE智博会でもYAMAHAのSMTマシンほか、日本企業のブースは人気だった。
YAMAHAブースでは表面実装(SMT)マシンを展示しており、訪問者も多くみられた。実際に中国の工場を訪れると、同社のSMTマシンを見かけることは多い。また、中国企業の開発したSMTマシンが、交換品の規格などをYAMAHAのものに合わせてあることも多い。
中国国産CPUと国産PLCは成功するか
深圳に本社を置く华龙迅达は、中国政府工業情報化部の進める産業用インターネット国産化を進める企業だ。中国が国策で進めるCPUやIoTシステムの国産化、独自技術を実際のサービスとして実現する事業を展開している。
PLCを使ったデジタルツイン
世界中の工場で機器の制御で使われているPLC(Program Logic Controller)コントローラは、一連のシーケンスで動悸して動くように機械を制御するコントローラだ。産業用機械の制御で長い歴史があり、欧州のシーメンス、台湾のRockwell、日本の三菱電機などが代表的な企業で、中国大陸にも多くのメーカーがあるが、制御できる機械の数が小規模なものが多く、世界シェアは小さい。
华龙迅达は国産の大型PLCコントローラを開発している。PLCの技術は各社で互換できるようにある程度標準化されており、华龙迅达のPLCコントローラもIEC-61131-3標準やEtherCATなどの標準を採用しているが、加えて国産のLoongOSによるデジタルツイン機能を備え、稼働中の機器をVR空間上でモニタすることができる。
国産CPUとHarmony OS
华龙迅达製品は、CPUに龍芯中科が開発した中国製CPU,龙芯3A5000を採用している。CPUの命令セットに独自のLoongArchを採用したサーバー・産業用機器向けCPUで、Linuxカーネルを採用した同社のLoongOSで動作する。これで外国の知的財産に一切抵触しない部品・OS・PLCシステムを作っている、というのが华龙迅达の特徴だ。
PLCコントローラの制御を行うOSは华龙迅达がオープンソースのOpen Harmonyを元に自社開発したHualong OSを採用し、Harmony OSの開発元であるファーウェイと深く連携して開発している。(中国CSDNでの記事)
PLCとしても動作するが、動作状態のビジュアライズや仮想環境によるモデリング、データベース化やクラウド連携による結果分析、マルチデバイスの連携など、日本でもインダストリー4.0や製造業のDX化でよく挙がる機能を備えている。それぞれの機器をボトムアップに連携させるのでなく、先にHualong OSという統合環境があることにより、全体に対するセキュリティ担保や外部とのデータ連携、優先順位の整理含めた自動化がしやすくなる。
国策企業による国内向けデモンストレーションで終わるか、海外に広がるかに注目
Han’z Lazerほか、深圳の民間企業が開発している多くの製造用設備は、コストパフォーマンスに優れ、深圳市内の各工場や東南アジアでもよく見かける。また、異なるメーカーの機械が混在するなかで見かけることも多い。こうした形で中国の製造用設備はすでに海外進出しはじめており、深圳政府はこうした海外輸出を補助金などで大きく支援している。
一方でHualong OSのようなアプローチは、政府の意向を反映した国策企業が新しい環境をつくる、というかたちだ。ドラスティックなぶん見栄えは良いが、筆者の知る限り中国国内の工場でも導入事例を見ない。もちろん市場でのポジションを得られるような製品が、こうした研究開発から出てくることがないとはいえない。
「世界の工場」深圳と世界の距離を占う意味でも、今後も深圳での製造業展示会には注目だ。
(文・高須正和)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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