ドローンで農地解析、市場連携や種子開発まで|インドBharatRohan、精密農業の提供で農家を支援
農業の分野においても、最新テクノロジーの活用が進んでいる。
本稿で紹介するBharatRohanは、ドローンを用いて農業の変革に取り組むインドのスタートアップだ。農家が持続可能で収益性のある栽培ができるように支援することで、インドの農業を活性化させることを目指している。
同社はRishabh Choudhary氏とAmandeep Panwar氏により、2015年に設立された。2人は航空工学の学位を持っている。
インドの農家はさまざまな問題を抱えている。現地メディアは、気候変動による洪水や干ばつ、新しいテクノロジーへの認識不足や変化への抵抗による時代遅れな農業の採用、農薬の過剰使用による土壌の侵食などを問題視して伝えている。
周知のとおり、インドの人口は今や世界トップだ。上昇する食料需要を満たすには、農業の改革がもはや避けられない事態となっている。
ドローンで農地を解析して農家をサポート
BharatRohanの開発したCropAssureは、農家に精密農業を提供するサービスだ。「精密農業」とは、作物の管理を通じて農場内の変動を観察、測定、対応することに基づいた農業手段を表す用語であり、1990年代から2000年代初頭にかけて世界的に普及したといわれる。(参考)
同社はさらに、土壌に基づく品種の選択から収穫後の市場連携まで、さまざまな面でサポート。これにより農家が精密農業の恩恵を受けられるようにしているのだ。
CropAssureのおおまかな流れは以下の通りだ。
まず初めにドローンに載せたハイパースペクトルカメラによる農場の空撮を行う。この高度なカメラを用いれば、人間の目には見えない光のスペクトルを捉えることができ、作物や土壌の状態に関する豊富な情報を取得できる。
画像データはセンターで処理され、農学の専門家が分析する。そして、分析結果をもとに最適なアドバイスがチャットで各農場に送られる。
ほかにも、作物の病害虫の発生や栄養欠乏などといった脅威を定期的に通知するアラート機能、残留物のない農産物の生産と大手バイヤーへの販売支援、土壌検査にもとづいた最高品質の種子の提供など、価格に応じてさまざまな支援が用意されている。
このように幅広い機能を提供して農家に貢献している同社だが、この技術は他にも最適な種子の開発にも生かされている。
ハイブリッド種子の開発をサポート
SeedAssureと呼ばれる同社のサービスは、種子会社向けに提供されており、顧客のハイブリッド種子の開発をサポートする。ハイブリッド種子とは、異なる特性の品種の種子を交配させて生み出された一代かぎりの品種で、一般的に純正の種子よりも成長が早く、収量が多い特徴を持つ。
このハイブリッド種子のテストにドローン技術を用いるのだ。
SeedAssureの特徴は、発芽から収穫までの全生育期間にわたる包括的なデータ収集にある。生育の間、ドローンが定期的に農場を調査する。収集された複数のパラメータは、農学者によって検証されて種子会社に提供される。
このサービスの利点は多岐にわたる。まず、プロット固有の詳細なデータ収集により、各品種の性能を正確に評価できる。また、タイムライン中心のデータベースにより、品種間の比較分析が容易になる。さらに、無人スカウティングによるデータ収集は、人力に頼るよりも迅速で正確だ。
同社はブログ記事で、降雨不足による作物被害や2017年以降のインドにおける豆類の供給量の減少を伝えており、浸水や干ばつにも強い品種の開発が必要だと訴えている。
持続可能な農業へ
「CropAssureサービスを利用し始めてから、作物被害の抑制が非常に簡単になりました。早期アラートと科学的なアドバイスを受け取り、被害を事前に制限できます。適用すべき資材の時期、量、名称についてガイドしてくれます。」
これは、CropAssureを実際に活用した農家の声だ。同社は今後、2021年には6000人規模の農家の3万エーカーの農場をカバーし、2024年には10のインド州で50万エーカーの農場のカバーを見込んでいる。
今年5月には、230万ドルの資金調達が現地メディアによって報告された。同メディアにて創業者の2人は、「これにより、農業をより科学的で持続可能、そして収益性の高いものにするため、サービスを向上させ、全国に展開する決意が強まりました」と述べた。
同社は2025年までに、15のインド州で100万エーカーをカバーするように事業を拡大する予定だ。
参考・引用元:
BharatRohan
(文・松本直樹)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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