AIと分からないレベルの自然な会話で、100%AI対応のコールセンター実現か|YCが支援するVocode社の技術に注目
AIを活用したコールセンター市場に急成長が見込まれている。Global Market Insightsの調査によると、2023年に18億ドルだった世界市場規模は今後CAGR19.8%で成長、2032年には86億ドルに達する見込みだ。
中でも、ボイスボット(音声ボット)は注目度が高い分野。人間と区別がつかないほど自然なAI音声で電話着信・発信を自動化するのがカリフォルニアのVocodeだ。「24時間365日、100%AI対応」のコールセンターを実現するとしている。
2023年に設立されたばかりのVocodeは、日本でも有名なシードアクセラレーターY Combinator(以下YC)の支援を受ける「YCスタートアップ」。2024年2月にYCおよびエンジェル投資家からシード資金として325 万ドルを調達。具体的なビジネスプランなしでYCに採択されたスタートアップとして注目を集めた。
始まりはAIの「いたずら電話」ツールから
実は、Vocode発のAI音声技術は約1年前にも「PrankGPT」が話題になっていた。「Prank」とは「冗談・いたずら」の意味。会話の内容と電話番号を指定すると、家族や友達に音声ボットが電話をかけてドッキリを仕掛けるという機能だ。
PrankGPTの時点ですでにAIとは分からないレベルの自然な会話が可能だったことが、あるYouTuberによる当時の「使ってみた」動画で確認できる。
「ycinterview.ai」ではAIを相手にYC面接対策が可能?
Vocodeからは、PrankGPTとほぼ同時期に「yicinterview.ai」も発表されている。このツールについては、音声ボットがYC側の面接官「Jared」役、Vocode社のKian Hooshmand氏がスタートアップ側として会話する動画で確認可能だ。
動画の左下隅にワイプで映っているのがHooshmand氏。何も知らずに視聴すると、どちらがAIでどちらが人間かすぐには区別できないほど自然な会話が進んでいる。
Vocodeが構築したycinterview.aiの音声クローンはPlay社のもの、認識はAssemlyAI、Replit上でホストされている。詳しくはGitHubで確認可能だ。
音声エージェント構築のためのオープンソースライブラリ
Vocodeは「音声エージェントを構築するためのオープンソースライブラリ」を自称。ドキュメンテーションやAPIレファレンスを公開して、LLM上に音声ベースのアプリを構築するためのツールやアブストラクションを提供している。
コードを数行書くだけでAIによる電話受発信やアシスタント業務、Zoom会議参加などが可能になるという。
同社の高いコンポーザビリティや一般的なワークフローに適した即座に使えるツールにより、顧客企業の開発者は音声インターフェイスを簡単に構築・アプリに組込み可能。エンジニアリングにかかる時間と労力を削減し、企業はコア製品やサービスに専念できるとしている。
「人間とコンピューターをつなぐ会話型の音声AIを作り上げること」がミッションだと語る共同設立者のAjay Raj氏とKian Hooshmand氏は、 中学校からの幼馴染。2人は同じ高校に進み、カリフォルニア大学バークレー校では共にコンピューターサイエンスを専攻した。
大学卒業後、Ajay氏はStripeで、Kian氏はBrex(こちらもYCスタートアップ、AIによる企業の支出管理などを行う企業)でソフトウェアエンジニアとして活躍していた。学業以外での共同は、2023年のVocode設立以降のことだ。
調達資金で社員採用・チーム拡大予定
現在、Vocodeの公式サイトではAIによるコールセンター機能を前面に押し出している。リアルな音声や多言語対応、AI教育などの標準装備に加え、利便性を高めるためスケジューリングや支払いといった機能も組み込まれている。顧客への対応状況モリタニングも可能だ。
無料プランと有料プランで通話時間などの条件が異なるが、無料プラン・月25ドルのプランでも音声による電話受信が可能。見積もりが必要となる最上位プランではAIによる電話発信も含まれる。
急拡大が見込まれるAIコールセンター市場では、当然競争も激化するだろうが、YCが可能性を見出したVocodeの躍進に注目したい。同社は2月に調達した資金を使って社員を採用、チームを10人に拡大するほか、アメリカ国内のテック企業との統合を継続するという。
参考・引用元:
Vocode
(文・里しんご)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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