小規模飲食店のオンライン売上強化を支援するOwner.com、“手数料無料”の配達サービスを展開

米国の飲食業界では労務費や食材の調達コストが激しく上昇し、もともと低い利益率をさらに圧迫している。そのためコロナ禍以降、大きく伸びているオンライン販売で売上増を目指す飲食店も多いという。しかし小規模飲食店にとっては、自前の魅力的なオンライン販売サービスを用意することは、ハードルが高い課題であり続けた。

そんな中、米国カリフォルニア州のOwner.com(以下、Owner)は、そのような小規模飲食店のオンライン売上増に焦点をあてたオールインワン型パッケージを提供している。同社は今年1月時点で、数千の顧客を抱えており、その数は昨年度の3倍だという(参考)。また飲食店の年間数千億ドルにもおよび取り引きを処理し、数千万ドルもの収益をあげている。

今年1月、OwnerはシリーズBで3,300万ドルの資金調達を発表した。これによってOwnerの総調達額は5,870万ドルに到達した。同社はこの資金で飲食店のサポートを拡大するとともに、生成AIを活用したマーケティング支援機能などを強化する計画だ。

オンライン売上強化に特化したプラットフォームを提供

Image Credits:Owner.com

Ownerの共同創業者兼CEOのAdam Guild氏は、小規模飲食店の悩みをこのようにとらえている。

わずか5年前には、飲食店は優れた料理とサービスを提供するだけで十分でした。

しかし今では、オンラインでの顧客体験に多くがシフトしており、飲食店をみつけるのもオンラインです。大手チェーン店はエンジニアやマーケティング担当者のチームや広告費に何十億ドルも費やす余裕がありますが、小規模飲食店はそうもいきません。私たちが取り組んでいるのは、こうした変化の中で小規模飲食店が存続するだけでなく、繁盛し続けるための手助けをすることです。

引用:TechCrunch

Ownerが提供するオールインワンプラットフォームは、オンライン売上強化に特化した機能を備えている。数日で構築できるオンライン注文サイトには、SEO(検索エンジン最適化)対策が組み込まれており、Googleの検索上位ランキングをねらうことが可能だ。

この機能は、大手飲食店と同等のオンライン注文サイトを簡単に実現したいニーズに応えるものだ。しかし特筆すべきは、Ownerが提供するモバイルアプリとマーケティング・オートメーションだろう。

Image Credits:Owner.com

Ownerは飲食店のブランドでの自前スマホアプリを提供する。飲食店の顧客は、快適なオンライン注文を体験でき、飲食店はリピートオーダーが期待できる。マーケティングオートメーションには、事前にマーケティングプログラムが組み込まれている。飲食店は、生成AIの助けを借りて、タイムリーなキャンペーンを打つことができる。

なお今年1月の資金調達には、Jack Altman氏が参加している。同氏は、ChatGPTを提供するOpenAI CEO、Sam Altman氏の兄弟だ。

利益を生み出すOwnerのフードデリバリーサービス

Image Credits:Owner.com

Ownerのソリューションをさらに際立たせるのが、フードデリバリーサービスだ。

米国におけるオンライン注文は、Doordash、Uber Eats、Grubhubのようなフードデリバリーサービスが80%を占めている。これらサービスは、飲食店に対して20%から30%の手数料を請求するうえに、消費者からも追加料金を徴収している。しかも大規模チェーン店であれば手数料カットの交渉が可能だが、多くの小規模飲食店はそのような交渉力を持たない(参考)。

これが飲食店経営を強烈に圧迫していることをみてとった Guild氏は、レストランが手数料無料で利用できるフードデリバリーサービスを、Ownerのソリューションにバンドルした。

同サービスはOwnerのオールインパッケージに含まれており、利用料金は月額500ドル(サブスクリプションベース)だ。これは他社のWebサイトビルダーに比べれば高額だが、自店舗ブランドのモバイルアプリとマーケティングオートメーションがバンドルされていることによる。

なお配達料金は、飲食店が4ドル、顧客が3ドルとなっており、大手のフードデリバリーサービスよりも格安だ。

これが、フードデリバリーサービス単体で収益をあげないというOwner独自の顧客獲得戦略だ。

逆風が吹く飲食業界で成長を遂げる

Guild氏はOwnerの創業前に、大手飲食チェーンと提携して、オンライン注文のプロモーションを支援していた。しかしコロナ禍でその会社の解散を強いられた後に、一念発起をして再起をはかったという。そして飲食店オーナーらに電話をかけ、飲食店オーナーが抱えているオンライン注文の問題を解決しない限り、飲食店の存続に深刻な状況が生まれることを悟ったとのことだ(参考)。

小規模飲食店のオーナーに限らず経営者の究極の課題は、収益の向上とコストカットだ。それに対するOwnerの提供価値は、大手チェーン店と同等のオンライン販売のテクノロジーを提供するだけにとどまらない。

収益向上に焦点をあてたオンラインマーケティングと、コストカットに直結し利益を生み出すデリバリーサービスのパッケージは、小規模飲食店オーナーを悩み知らずに変える「全部おまかせソリューション」といえるだろう。

競合がひしめく業界の中にあっても、Ownerはひときわ輝いている。

参考・引用元:Owner.com

(文・五条むい

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