<ライブレポート>「全方向美少女」大流行の乃紫、クリエイターとしてのポテンシャルを発揮した1stワンマンライブ

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<ライブレポート>「全方向美少女」大流行の乃紫、クリエイターとしてのポテンシャルを発揮した1stワンマンライブ

 乃紫が4月25日、東京・渋谷WWWにて1stワンマンライブを行った。

 「全方向美少女」がTikTokで大きな流行を巻き起こし、新世代のシンガーソングライターとして脚光を浴びる乃紫にとって、今回が初のライブとなる。どころか、人前に立つのもこれが初めてだという。そんな機会を目撃しようと集まった満員のオーディエンスには開演前から期待のムードが渦巻く。そして、大歓声に迎えられて登場した乃紫が見せたのは、とても初めてのステージとは思えないほどの堂々としたパフォーマンスだった。

 ライブは「ヘントウタイ」でスタート。序盤から「惑星より愛を込めて」や「学園ハイブランド」など未発表の新曲を次々と繰り出してくる。まず印象的だったのは、その音楽性が思っていた以上にロックだったこと。ギター、ベース、ドラムのバンド編成を従え、乃紫自身もエレキギターをかき鳴らし歌う。もともとTikTokを拠点に宅録から音楽活動を始めたということもあって“SNS発”なベッドルーム・ミュージシャンのイメージを持っていたのだけれど、リフ主体のロックンロールな「学園ハイブランド」などエネルギッシュな新曲の数々にはその先入観を痛快にひっくり返された。

 そして、もうひとつ印象的だったのが、音楽だけじゃないクリエイティブな仕掛けの数々があるライブだったこと。会場の渋谷WWWは地下にあるライブハウスなのだが、そこに降りていく階段にはこれまで発表してきた楽曲のイメージを伝えるようなビジュアルとコピーを添えたポスターの数々が掲示されていた。また、ステージ背後には巨大なLEDビジョンが設置され、オープニングから曲ごとに様々な映像演出が繰り広げられていた。リリックビデオ的なカラフルな映像もあれば、エモーショナルなギターロックの曲調に合わせてレトロなデジタルカメラで撮影されたムービーが映し出される未発表の新曲「月と指輪」など、MVのような没入感をもたらすものもあった。こうした曲ごとの世界観を伝えるコンセプチュアルな映像にも目を見張った。

 「何度も『緊張してる? 大丈夫?』って言われたんですけど、そんなに緊張してなくて。私よりスタッフの方が緊張してるみたいです」と大物っぷりを見せたMCに続いては、やはり未発表の新曲「何者」。ソリッドなバンドサウンドに乗せ、ラップも駆使しながらシニカルなコメントや刺々しい言葉に対峙したときのリアルな感情をストレートに歌い上げる、かなり尖ったナンバーだ。アーティストとしてのポテンシャルを感じた一曲だった。

 後半は「みんなの可愛いところ見せてね!」と披露した「接吻の手引き」など、オーディエンスを巻き込んで会場のボルテージを上げていく。曲中では「男子! 女子!」「高校生! 大学生! 社会人!」とオーディエンスに手を挙げさせていたのだが、若い女性が圧倒的に多かったことも印象的だった。

 そして、クライマックスとなったのが「全方向美少女」だ。「一緒に歌って!」と乃紫が告げると<正面で見ても横から見ても下から見てもいい女>というサビのフレーズでシンガロングが巻き起こる。ライブが始まったときにはオーディエンスの中でも「初めて乃紫の姿を見れた」という興奮のほうが上回っていたせいか盛り上がりに少々ぎこちなさも見えたけれど、あっという間に会場には一体感が生まれていた。

 さらに、熱量たっぷりのバンドサウンドに乗せて歌う「先輩」を畳み掛け、アグレッシブなギターとともに情感たっぷりのメロディを歌い上げる「A8番出口」では演出の桜吹雪が舞い上がる。熱気が最高潮を迎えるなか、ラストに「アフターオール」を披露してライブは終了。「今日は本当にありがとうございました!」と笑顔で告げ、大きな拍手と歓声に包まれて乃紫はステージを降りた。

 終演後にはファンクラブの設立と、今秋に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)と大阪・Yogibo META VALLEYで2ndワンマンライブが開催されることも告知された。

 まだまだ乃紫というアーティストのストーリーは始まったばかりだ。おそらくこの先、フェスへの出演などを通してその真価はより広く知れ渡っていくだろう。ライブが終わったフロアには、記念すべき瞬間に立ち会えたオーディエンスたちの高揚感がしばらく残っていた。

Text:柴那典

◎公演情報
【乃紫 1st ONE MAN LIVE】
2024年4月25日(木)
東京・渋谷WWW

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