ドローンによる高解像度の画像とAI解析で、作物の生産性を向上。Aeroboticsの営農サポート
アフリカにおいて農業は国の経済の要ともいえる分野だ。日本財団によるとアフリカでは農業がGDPシェアの20%以上を占めている国が30か国にのぼり、人口の約6~7割は農村で小規模な農家を営みとしているという。ちなみに日本の農林水産分野がGDPに占める割合は10%前後で推移し続けている(参考)。
世界に残る可耕地面積の52%がサブサハラ・アフリカにあるという事実を鑑みると、今後世界においてアフリカの土地や農業は他の先進国を支える重要な拠点となりうるかもしれない。
こうした機運の中、ドローンやAI、ロボットなどを取り扱うテック企業がアフリカの農業へ進出している。南アフリカのケープタウンと米国カリフォルニア州に本社を構えるAeroboticsも、その1社だ。
農業におけるドローン活用の重要性
近年、ドローンが農業分野への進出を果たし、世界各国で農業への利用が進められている。
農業への利用方法としては農薬の散布、農作物の育成状況の観察といった「人の目」の代わりなど、実質的な“作業効率の向上”を目的としたものが一般的である。
日本でも、こうしたドローンを活用して農業従事者の負担を減らす施策が講じられている。
アフリカの最先端システムが目指す近代農業の姿
アフリカでは2050年に人口は24億人まで増加し、食糧の需要がさらに高まると予想されている。しかし、近年アフリカでは農業生産性が低下しているという。
要因としては気候変動と土壌劣化の影響だけでなく、非効率な肥料・農薬散布や、生育状況に合った対応ができていないことが挙げられる。また、昨今は肥料価格の高騰によってアフリカの小規模農家が多大なダメージを受けているという報告も。
Aeroboticsはドローンで撮影した航空画像とAIを活用して農業経営を支援するツールを提供している。
同社の共同創設者兼CEOであるのJames Paterson氏はケープタウン郊外の果樹園で育ち、その後、南アフリカのケープタウン大学でメカトロニクス工学の学士号を取得し、その後、米国のマサチューセッツ工科大学へ進学し、航空宇宙工学の修士号を取得した経歴を持つ人物。
Paterson氏はケープタウン大学でのちの共同設立者兼CTOとなるBenji Meltzer氏と出会う。やがて2人は航空学と機械学習のスキルを組み合わせて、農業が直面する課題を解決する方法を見つけるべくチームを結成。そして2014年にAeroboticsを設立した。
ドローンによる“高解像度”の撮影
航空画像による“情報の価値”は、その画質によって左右される。画質が低ければ、木の健康状態や農作物の生育状況などを正確に把握することは難しい。
Aeroboticsでは、このドローン空撮において最先端の技術を採用している。例えば上空で撮影した土地全体の写真は高画質で送信され、データ分析を経て病気のリスクや育成状態の把握、それによる土地のケアなどまで様々な情報を提供することが可能だ。
AIを利用することで、季節や環境に合わせた育成状況のデモンストレーションを行い、問題点を解決することで生産性を大幅に向上させている。
さらに作物保険やバックオフィスの事務処理までを網羅しているというから驚きだ。
Aeroboticsが目指すもの
Aeroboticsは「四季を通じて顧客にインテリジェントなツールを提供し、世界中に食料を供給できるようにすること」を目標としている。
農業をビジネスとしてとらえ運営をする人が増えた現代において、農業は単に「生産すること」ではなく企業として管理・マネジメントをしていくべき対象なのである。樹木のカウントや作物の育成状況の管理に始まり、現在は物流支援まで視野に入れた壮大なスケールの企業であるといっても過言ではない。
アフリカに始まった農業改革は今後、世界中に広がり人類の食料供給問題に一石を投じることだろう。
参考・引用元:Aerobotics
(文・獏 弥生)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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