星のようにきらめく光速ライヴ──Midnight Grand Orchestra 1st LIVE 「Midnight Mission」 【OTOTOYライヴレポ】
寺本秀雄 (Spinnage) によるOTOTOYライヴ・レポートをお届けする。
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僕はいまライヴの余韻に包まれながら、会場となった豊洲PIT近くの駐車場に停めた車の中でこのテキストを書いている。Midnight Grand Orchestra 1st LIVE「Midnight Mission」、素晴らしい体験だった。
Midnight Grand Orchestraは、チャンネル登録者200万人を数える人気VTuber・星街すいせいと、かつてゲームサウンド・クリエイターとして『鉄拳』『リッジレーサー』『アイドルマスター』シリーズなどに関わり、独立後はソロ・アーティストそしてサウンド・プロデューサーとして活躍するTAKU INOUEのプロジェクトだ。2022年の8月にはバーチャル空間での配信オンリー・ライヴ「Overture」を行っていた彼らにとって、初めての有観客ライヴとなった今回の「Midnight Mission」、グッズに身を包んだ約3,000人のファンが詰めかけたフロアでは誰も彼もがその期待を高めていた。ステージには、宇宙空間を思わせる黒く大きな映像用のスクリーンが全体を覆うように張られていて、そのスクリーンの手前にはTAKU INOUEと星街すいせいが立ち、バンドメンバーはスクリーン裏に位置する構成になっているようだった。
そして始まった今日のライヴは、圧倒的なスピード感に満ちたものだった。ステージ全体に宇宙船のコクピットのような映像が立ち上がり、フロアは宇宙船となって飛行を開始する。1曲目、2022年の配信ライヴ「Overture」でもオープニングを飾った “Never Ending Midnights” でスタートすると、フロアはブルーのライト一色に染まった。たたみかけるように2曲目 “SOS”。星街すいせいの一挙手一投足に歓声があがる。そして「ありがとう」とTAKU INOUEの短いひと言のあと、永山ひろなおのピアノとCHICA・細川亜維子・結城貴弘のストリングスが穏やかなフレーズを奏で、一転、迫力の “Midnight Mission” が投下される。BOBOと山本真央樹のツインドラムが刻むビートが、ステージ左右に吊られた巨大なラインアレイスピーカーから満員のフロアに叩きつけられる。そしてIchika Nitoのギターから “Igniter” のフレーズが奏でられると、ここでもフロアは光速で反応した。宇宙への旅が続く。
きらめく照明とレーザー。滝のように押し寄せる光の演出。ノンストップで投下されるキラーチューン。ファーストEPからの “Rat A Tat” に続いて、最新アルバム『Starpeggio』からの “夜を待つよ” ではフロアから手拍子が起こる。ダイナミックなドラムソロのあと “Blackhole Dancehall” では、TAKU INOUEが「みんなまだ踊れますか?!」とフロアを煽り、かつて星街すいせいがアルバム『Starpeggio』制作前に焼肉店でやってみたいとTAKU INOUEに話したという「コール&レスポンス」が最高の形で実現していた。
“Tuning (Interlude)” でフロアに静けさが戻ると、ミディアムバラード “流星群” 。イントロではフロアから温かい拍手が起こる。“Starpeggio” の冒頭でもフロアからおおっと歓声があがる。今回のライヴでは曲紹介が一切なかったにもかかわらず、フロアがダイレクトにそれぞれの曲に反応しているのが印象に残った。そんな熱心なファンに支えられたMidnight Grand Orchestraのボーカル・星街すいせいが歌い上げる “ソリロキー” そして “Light the Light” では、渡辺ほのかと宮原ひとみのコーラスがさらなる彩りを添えていた。
ここからライヴは再び熱量を上げていく。「光速じゃ足りない」と歌う “Moonlightspeed”、そして最後の曲 “Allegro” へ。 “Allegro” では曲中で星街すいせいが大きな武器アレグロをその手に構え、フロアから大歓声が上がっていた。
“Allegro” の演奏が終わっても、もちろんフロアは満足せず、アンコールの声と手拍子が鳴り止まない。
アンコール1曲目は、Midnight Grand Orchestra結成前にTAKU INOUEが星街すいせいをフィーチャリングした、ソロ・アーティストTAKU INOUEのデビュー曲でもある “3時12分”、つづいては星街すいせいのファースト・フルアルバムの表題曲であり、TAKU INOUEがプロデュースを手がけた “Stellar Stellar”。歌い出しの「だって僕は星だから」で、フロアの熱気は最高潮に達した。TAKU INOUEと星街すいせいの2人にとってメモリアルな曲のあとは、彼らから短い挨拶があり、ラストの“Highway” でステージに幕が降りた。
今回のライヴで強く感じたのは、Midnight Grand Orchestraがまさにオーケストラであると証明するような、バンド・サウンドとしての迫力だった。音源からさらにアレンジを加えられた各曲のサウンドからは、バンドマスター・TAKU INOUEによる明晰な演出意図が伝わってきたし、MCらしいMCもなく全17曲が濃縮されたノンストップのセットには、音楽こそがMidnight Grand Orchestraなんだというメッセージが込められていると感じた。
まるで宇宙旅行から帰ってきたみたいに、放心状態で豊洲PITを後にする。Midnight Grand Orchestraのクリスタル・クリアなライヴ・サウンドは1音1音がキラキラと輝く星のようだった。今夜の東京は生憎の曇りで、豊洲の夜空に星はひとつも見えなかったけれど、僕の心の中にはMidnight Grand Orchestraが描いた深宇宙の暗闇と幾千万の星の光が宿っていた。
時計を見る。アンコール含めて1時間強の飛行時間は、体感で10分くらいだった。驚いた。どうやら僕らは、光速に近いスピードで移動していたらしい。
取材&文 : 寺本秀雄 (Spinnage)
写真 : 鳥居洋介
Midnight Grand Orchestra 1st LIVE 「Midnight Mission」 セットリスト
2024年2月20日(火)・東京 豊洲PIT
01. Never Ending Midnights
02. SOS
03. Midnight Mission
04. Igniter
05. Rat A Tat
06. 夜を待つよ
07. Blackhole Dancehall
08. Tuning (Interlude)
09. 流星群
10. Starpeggio
11. ソリロキー
12. Light The Light
13. Moonlightspeed
14. Allegro
– Encore –
01. 3時12分
02. Stellar Stellar
03. Highway
ライヴ配信情報
公演の模様は有料ライヴ配信される。配信は3月12日(火) 23:59まで視聴可能。配信チケット販売も3月12日まで。視聴・チケット購入はSPWNにて。
・配信チケット [マルチアングル] : ¥6,500
・配信チケット [マルチ+定点] : ¥8,500
【冒頭無料配信】Midnight Grand Orchestra 1st LIVE「Midnight Mission」
Midnight Grand Orchestra “ソリロキー” Music Video
2月20日22時、“ソリロキー” のMVが公開された。Midnight Grand Orchestra初の縦型MVとなっている。
Midnight Grand Orchestra『ソリロキー』Music Video
インフォメーション
2nd MINI ALBUM『Starpeggio』特設サイト
midnight-grand-orchestra.jp/starpeggio/
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