中国人から見た“ニホンゴ”の不思議
「日本」という国の名前。「ニホン」と「ニッポン」どちらの読み方が正しいのか? 答えは「どちらも正解」だ。
昔から曖昧なこの読み方は、かつて文部省の臨時国語調査会が「国の読み方はニッポンで統一しよう」と決めようとしたことがあるが、結局、定着しなかった。そして、2009年に政府は「ニホン」と「ニッポン」どちらも通用しているので、統一する必要はないという見解を示した。
なんともいいかげんな感じもするが、それだけ日本語という言語は奥深いということだ。
『月とにほんご 中国嫁日本語学校日記』(井上純一/著、矢澤真人/監修、アスキー・メディアワークス/刊)の主人公は、40歳の日本人オタク男・ジンサン(井上)と、その妻である20代の中国人、月(ゆえ)。人気マンガ『中国嫁日記』のスピンオフ的な作品で、中国人の月が通う日本語学校での日本語にまつわる体験をマンガで紹介している。
日本語はその時代によって、流行りもあれば、変化もする。例えば「全然」という言葉、「ぜんぜんお金を譲る」という日本語は間違っているように思える。
しかし、「全然」というのは、明治時代にできた新しい言葉で、「全て」という意味で使われていた。「ぜんぜんお金を譲る」は「すべてのお金を譲る」という意味で、当時は正しい使い方だったのだ。その後、「全然わからない」のように否定を伴う言い方が生まれ、これは今も使われている。
そして、最近この「全然」に新しい変化が起こっているという。「全然かっこいい」「全然安い」といった使い方を聞いたことはないだろうか。この場合の「全然」は、「とても」「すごく」という意味で、新しい言い方だ。このように「全然」には3つの異なった意味があるにもかかわらず、どれが間違っているわけでもない。その時代ごとの「全然」の使い方が正解なのだ。
日本語は難しくもあるが、「全然」のように1つの言葉に注目して分析してみると面白くもある。そして、ややこしくもある。そのややこしい言葉の例が、「結構です」だ。
肯定にも否定にもとれてしまうこの言葉の基本的な意味は、「良い」「満足だ」だが、「もう満足なので、お断りします」という拒否の意味にもなる。自分が相手のことを肯定しているのか拒否しているのか、はっきり伝えたいなら、手前に「大変」(肯定)か「もう」(拒否)を付けるとよいそうだ。
当たり前のように日本人は使っている言葉でも、中国人の月さんから見ると、どうしてそうなるのか疑問に思うものが多いそうだ。
その疑問に日本人である私たちがすぐに答えられるかというと、実はよくわからない・・・ということも多い。難しくも、ややこしくもある。それでいて面白い。奥深い日本語の世界をマンガで楽しく読める一冊だ。
(新刊JP編集部)
■著者・井上純一さんのインタビューを新刊JPニュースで配信中!
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