複数の時間軸が交差する、ダレン・アーモンドによる7年ぶりとなる個展「Timeline」


ダレン・アーモンド《Entropy》2023、麻にアルミニウム、金、銀、アクリル、146 x 102 x 3 cm 
協力:SCAI THE BATHHOUSE



SCAI THE BATHHOUSEでは、11月18日(土)より、ダレン・アーモンドの7年ぶりとなる個展「Timeline」を開催。


いかにして時間を表現するか。これは古今東西の科学者、哲学者、そして芸術家たちが長年探求してきた問い。
英国ウィガン出身のダレン・アーモンド(1971- ) は、数字や言葉という記号で測量される時間や距離といった客観的な指標が見過ごしてきた豊かな世界に分け入り、個人の記憶や感情、あるいはその土地の歴史 を手がかりに、時間について思索を続けてきた。時間が支配の道具となる管理社会の画一的な時間概念を批判的に考察し、技法やメディア自体をコンセプチュアルに扱うことで開かれるのは、人間だけでなく、地球そして宇宙まで含む「存在」をめぐり、揺らぎ続ける現実と想像の地平。


SCAI THE BATHHOUSEでの7年ぶりとなる個展は「Timeline」と題されている。このタイトルが示唆するように、会場内には複数の時間軸が交差している。本展で世界初公開となる新作シリーズ《エントロピー》と《英国の歌鳥》には、これまでの作家の軌跡を踏襲しつつも、コロナ禍や身近な人の死を経て更新されたアー モンド独自の時間概念が凝縮されている。


会場で一際存在感を放つ5連のペインティング《エントロピー》。銀色の大きな0という数字が、分割された8枚のパネルを縦断し、作品全体に安定をもたらしている。一方、0以外の数字は、フリップ時計の文字盤のように、機械的に上下に分断され、画面上を漂っている。静的でありながらも躍動感のある色とりどりの数字の断片は、どこか風景のよう。それは、満月という自然の照明の下、秘境を長時間露光で撮影し、夜と昼が同居するかのような神秘的な時を捉えたアーモンドのデ ジタル写真シリーズ《Fullmoon》のように、既視感がありながらも、決して到達されないロマン主義的な想像の景色を思わせる。


5年の歳月をかけたというその制作方法にも、時間に対するアーモンドの姿勢が現れている。まずキャンバスの一部に銀箔等の金属箔を貼り、放置することで経年変化を生じさせる。その過程で生まれた色彩は丹念に抽出され、カラーパレットに加えられる。変化した金属箔の表面は、色彩の抽出後に封じられるが、新たに調合された色彩は、既存の絵画上で分断された数字に塗り重ねられ、剥き出しのまま変化していくことになる。工業的なフォルムを装った数字は、拡大され、分断され、彩色され、資本主義社会の時間神話を批判しているよう。しかし同時に、目視できないほどの微細な時間の推移や、天文学的で刹那的な時間、あるいは誕生から死までの時間を語れるほど洗練されていない人間の言語にとって、数字への収斂は不可避であることを物語っているよう。エントロピーとはギリシア 語で特殊な状況下における不可逆的な状態の変化を意味するが、本シリーズでは、変化の過程を物理的に示す数字が、キャンバス上の時間の地層となり、時間の 不可逆性そのものを問うている。


ダレン・アーモンド「Timeline」
会期:2023年11月18日(土)- 2024年2月10日(土)
時間:12:00〜18:00 日・月・祝日休廊
2023年12月20日(火) – 2024年1月15日(月)は、冬期休暇でクローズとなります。

会場:SCAI THE BATHHOUSE(東京都台東区谷中6-1-23)
TEL : 03-3821-1144
www.scaithebathhouse.com

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