『火の鳥 エデンの花』STUDIO4℃・田中栄子プロデューサーに聞く「冒険譚でありながら、人間の愚かな行いに警鐘を鳴らすメッセージを持っている」

STUDIO4℃が手塚治虫の伝説的な原作「火の鳥」 望郷編を映像化した新作アニ メーション映画『火の鳥 エデンの花』が上映中です。

『火の鳥 エデンの花』は、“漫画の神様”と謳われ、今も世界中で敬愛される巨匠・手塚治虫。その代表作 にしてライフワークともなった不朽の名作『火の鳥』全12 編のうち、地球と宇宙の未来 を描いた「望郷編」の初のアニメーション映画化。

製作期間7年をかけて入魂のスペクタクル巨編を完成させたのは、アートな映像作品を生み出し続ける 「STUDIO4℃」。地球から遠く離れた辺境の惑星・エデン17 に降り立った主人公ロミの人生を描く、 あまりにも壮大な愛と冒険の物語。時空を超えた旅路の果てに、ロミが見出す「故郷」 とは? STUDIO4℃の代表取締役の田中栄子プロデューサーにお話を伺いました!

――本作楽しく拝見させていただきました。製作期間7年をかけて作られたということですね。

構成とシナリオ、絵コンテに長い時間をかけています。辺境の惑星・エデン17はどんな星なのか?なぜ滅んだのか?フィクションでありアニメーションであったとしても、そこにリアリティーが無いと物語が成立しないと思いました。例えば、エデン17で滅びた移民はどうやって生活していたのだろう?ここに水脈があったのかな?など描かれていない人々の暮らしにも、想像力を働かせていきます。

――細かな設定をいくつも設けているのですね。

アニメはフィクション、言ってみれば嘘なので、嘘を信じられるように描かないといけません。実際にはエデン17に行ったことは無いわけですが、「こういう星なのだろうな」と想像出来る背景を築く事がアニメ作品に必要だと思っています。

――その細かな設定が、STUDIO4℃らしい美しいアニメーションで表現されていますね。

美術監督の木村真二さんがしっかりSF空間を設計してくれました。未来の地球はデブリに覆われ、極度に温暖化して地上にはゴミ焼却炉や排気炉が溢れている。そんな荒廃した様子なのですが、どこか惹かれてしまう、SFの世界観にあふれていますよね。

――おっしゃるとおり、孤独なサバイバルであったり、過酷な状況も描かれますが、見ていてワクワクするんですよね。

初号試写を観た方が「田中さん、これは冒険譚ですね!」と真っ先に感想を伝えてくれたのですが、確かにこれはSF冒険譚だなと感じました。原作の素晴らしさももちろんなのですが、西見祥示郎監督の描く動きやアングルの捉え方、表現力というのは、本当にワクワクドキドキさせてくれるものだと思います。

――ロミさんの声優を担当した宮沢りえさんのお声もとても素敵でした。

宮沢りえさんは本当に透明感があって素敵な声で、本作を作り始める時から、ロミは宮沢理恵さんにお願いしたいと決めていました。本当に実現して嬉しい限りです。

――田中さんが音響監督も兼任されていたのですか?!

そうなんです。実はこの作品には音響監督がいなくて、私と西見監督で担当しています。制作スケジュールも慌ただしいものだったので、私と監督の2人でやれば、宮沢さんやイッセー尾形さんの空き時間にすぐ合わせることが出来る。そういった考えもあります。宮沢さんは私の本業を音響監督だと思っていらっしゃるかもしれません(笑)。

――「火の鳥ってどこから読めば(見れば)良いの?」という方もいると思うのですが、本作は冒険譚として受け入れやすいかもしれませんね。

これまでこの「望郷編」がアニメ化されていないのは、原作にそれだけ表現が難しい内容が含まれているということだと思います。今の時代では特に描くのが難しい事象もあります。ただ、地球に対する人間の愚かな行いに警鐘を鳴らすメッセージは今にも通じますし、むしろ今こそ強く受け取ってほしいと思います。

――壮大なストーリーなのですが、普遍的なメッセージを持っていて、改めて凄まじい物語ですよね。

本当に手塚治虫さんってすごいですよね。絶望的なことばかりが起こりますが、ロミたちの前向きに生きていく力を感じるアニメ作品にしたかったので、人間はすごく弱い生命体かもしれませんが、何があっても強く生きていく。そんなストーリーを大きなスクリーンで感じていただきたいです。音楽もとても素晴らしく、11月19日には群馬県・高崎市で、村松崇継さん(音楽・指揮)、群馬交響楽団による『火の鳥 エデンの花 シネマ・シンフォニー』という催しも行われますので、ぜひ体験していただきたいです。

――田中さんの本作への想い、パワーをとても感じるエピソードですね!ぜひたくさんの方にご覧いただきたいと思います。今日は素敵なお話をありがとうございました。

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【STORY】
あなたは、生きなさい。
荒涼たる辺境惑星エデン17に1台のロケットが降り立った。わけあって地球から逃亡してきたロミ(声:宮沢りえ)と恋人のジョ
ージ(声:窪塚洋介)は、この星を2人の新天地にしようと誓うも、未開の惑星での生活は厳しく、ジョージは井戸掘り中の事故で命を落としてしまい、ロミは一人息子のカインと AI ロボットとともに、孤独なサバイバル生活に送ることに。
ロミはカインのために自分の命を少しでも引き延ばすこと決意し、コールドスリープに入る。だが、機械の故障で1300年間も眠り
続けることに。ようやく目覚めたロミは、新人類が築いた巨大な町・エデン17の女王となる。
そんなある日、心優しい少年コム(声:吉田帆乃華)は、宮殿で悲しみに暮れる女王ロミと出会う。ロミの望郷の想いを知った
コムは、一緒に地球に行こうと、無謀な挑戦と知りながら、2 人で広大な宇宙に飛び出していく。
旅の途上で、地球人の宇宙飛行士・牧村や宇宙のよろず屋・ズダーバン(声:イッセー尾形)、そして人智を超えた未知の生
命体の数々との出会いを重ねながら、故郷の地球を目指す。

監督/西見祥示郎 音楽/村松崇継 原作/手塚治虫「火の鳥」(望郷編) キャラクターデザイン・総作画監督/西田達三
脚本/真野勝成・木ノ花咲 美術監督/木村真二 演出・CGI 監督/斉藤亜規子 色彩設計/江上柚布子
編集/重村建吾 音響監督/笠松広司 プロデューサー/田中栄子
アニメーション制作/STUDIO4°C
製作/「火の鳥 エデンの花」製作委員会
配給/ハピネットファントム・スタジオ

(C)Beyond C.

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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