倉悠貴＆芋生悠インタビュー「生き辛ければ逃げてもいい」「一緒に走り出せたら違う世界へ行ける」　映画『こいびとのみつけかた』公開

若手注目俳優の倉悠貴さん、芋生悠さんの初共演で贈るラブストーリー『こいびとのみつけかた』が公開になります。

本作は『まともじゃないのは君も一緒』の監督・前田弘二と脚本・高田亮が贈る＜おかしな二人の物語＞第二弾で、コンビニで働く園子（芋生さん）と、彼女に片想いをしているトワ（倉さん）が主人公の物語。

変わり者のトワと変わり者の園子にしかわからない世界で、ふたりにしか分からなくていい関係を作り出すラブストーリーではあるものの、その姿は観る者の共感を誘います。倉悠貴さん、芋生悠さんに話を聞きました。

■公式サイト：https://koimitsu.com/ [リンク]

●脚本の高田亮さんによる物語の最初の印象はいかがでしたか？

倉：とても面白い物語だったので、この映画化で面白くできなければ、それは自分の責任だという意気込みで撮影に臨みました。何かに葛藤している主人公がいて、ライバルがいて、恋敵がいてという分かりやすいストーリー展開ではなく、一見するとどうなっていくか分からないようなところにとても惹かれたことを覚えています。

芋生：ふたりの世界がとても愛おしくてかわいいなと思ったことと、ふたりを取り巻くみなさんの温かさというか、ふたりだけがはみ出すのではなく、みんなで守っている感じが、とてもいいなと思いました。

●演じられた役柄については、どのように理解したのですか？

倉：大島杜和(トワ)という人は、植木屋で働きながら温かい家庭を夢見る、ちょっと妄想する癖がある青年なんです。新聞の切れ端をポケットにしまい、たまたま出会った園子という人と近づきたくて、落ち葉を並べてしまうような人です。とてもピュアな人ですね。

芋生：園子は変わっているように見えますが、わたしは普通の女の子だと思っていました。楽しかったり苦しかったりすることを素直に感じ取れますし、その感じ取ったものを表現という手段を使い、創作物を作ってみたり、曲を作ってみたりする。そういうものに昇華することで、自分の生き辛さをいろいろなもので武装しながら生きているんです。とても人間らしくて、どこにでもいるような女の子だなと思いました。

倉：彼は素直だからこそいろいろなことをしでかしてしまう。ピュアだからこそ周囲に変わり者だと言われてしまう。だからこそ世の中に対して生き辛さを抱えているということが、僕の中でトワの軸にしたことでした。

でもこれはトワ自身から出るものではなくて、周囲によって表現されるものだと思うんですよね。だからトワを演じる自分は、素直でいることを大事にしていました。彼自身は、ただただ素直な人だと思うので。

●トワの落ち葉のくだりなどデフォルメされてはいますが、不器用なところは誰にでもあって、共感度も高そうなキャラクターでしたよね。

倉：そうですね。もはや前田監督そのままと言いますか。

芋生：監督がトワ君自身なんですよね。言動も全部トワ君っぽいんです。

倉：監督が台本を読まれた時に、落ち葉を並べるとはなんて素晴らしいのだろうと思ったそうなんですよね。ケーキと餃子、ふたり並んで美味しいというシーンで本当に泣いてしまうくらいピュアな方なので。

●おふたりは今回が初共演だと思いますが、それまでの印象を踏まえて共演の感想はいかがでしたか？

倉：芋生さんの作品をいくつか拝見しているのですが、重く暗めのトーンの作品が多い印象がありました。その影響か口数が少ない方かなという印象があったのですが、今回まったく違う朗らかな雰囲気だったので、驚きはありました。

芋生：倉くんは映像映えすると言いますか、劇場でスクリーンに映った時に心をわし掴みにする人だなって思っていましたが、実際どういう方なのか会ってみないと分からなかったので、楽しみにしていました。撮影が始まると自然に溶け込み、無理して仲良くなろうとせずとも、自然にお芝居に入ることが出来ました。

倉：芋生さんはとても情熱がある方で、それは映画に対する向き合い方、熱量が僕よりも高いんです。包容力もあり、普段から読書など勉強している姿を見ることもあったので、素晴らしいなと思っていました。

芋生：体から発するものがある方で、それは他の人では代えられない魅力のようなものなんです。倉くんだからこそのトワがいる。それがいろいろな動き、体から全部出ているイメージ。それが魅力的だなと思いました。

●改めてうかがいますが、この『こいびとのみつけかた』の世界から受け取ったものは何でしょうか？

倉：生き辛い世界の中で逃げてもいいんだよ、ということが一番のメッセージだと思うのですが、本当に温かい気持ちになれる映画だなと思いました。僕自身、脚本を読み進めていた時に、ちょっと空を眺めてみようかなと思ったんですよね。

芋生：自分の見えている世界がすべてではあると思うのですが、現実はなかなか変えられないから、この小さい世界の中で生きていくしかないのかなと思うと、とても生き辛くなってしまいますよね。でも、たまたま出会った人が、違う悩みではあるけれど、どこかで噛みあう部分があり、一緒に走り出せたら違う世界に行ける気がすると思うんです。

倉：それとお客さんがいつこの映画にめぐり合うかどうかも大切ではないかなと思っていて、もしかしたら辛いことがあったらこれを観て胸がスッとなるのではないかと思います。

芋生：あのふたりがもしも外から見たらよくない関係に見えたとしても、その人たちが生きるために選択したものであればいいと思うし、外からとやかく言える話ではないと思うんです。ひとりひとりが選択するのは自由なのかなと思ったりしました。

倉：毎日流れて来るニュースは暗い内容だったりするし、SNSが盛んになったから人に攻撃することも攻撃されることも多かったり、生き辛さは人によりけりでその大小もあると思うのですが、みんながみんな小さなことでも抱えていると思うので、世代問わず性別問わず観ていただきたいと思います。

■ストーリー

コンビニで働く女の人・園子（芋生悠）に片想いをしているトワ（倉悠貴）は、毎日植木屋で働きながら、彼女がどんな人か想像している。
朝起きてすぐ元気なんじゃないか、一緒に歩いてても置いていかれるんじゃないか、でもその後ろ姿はすごくかわいいんじゃないか。
園子を見つけるまでの彼は、恋人を作りたいと思ったことはなかった。
考える時間がなくなってしまうからだ。
彼は気になる記事をポケットいっぱいに詰め込んで、
イギリスのEU離脱やミツバチが絶滅したら人類が滅亡することを気にかけていた。
でも今は園子のことで頭がいっぱいだ。
話せるようになったら何を話そう。その前にどうやって話しかけよう。
彼がついに思いついたのは、木の葉をコンビニの前から自分がいる場所まで並べて、彼女を誘うことだった。
二人は言葉を交わすようになり、周囲にはよく理解できない会話で仲を深めていくのだが、園子にはトワにうまく言い出せないことがあり…

撮影＝塚本桃

【倉悠貴】
ヘア＆メイク：　NOBUKIYO
スタイリスト:　カワセ　136

【芋生悠】
ヘア＆メイク：　TSUKI
スタイリスト:　Yasuka Lee

©JOKER FILMS INC.
10月27日（金）より新宿シネマカリテほか全国ロードショー

(執筆者: ときたたかし)