ギャレス・エドワーズ監督、SF超大作『ザ・クリエイター/創造者』のロケを回想 「自由があったからこそ、普通では撮れないようなものも撮れた」

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)などのギャレス・エドワーズ監督が贈る、AIと人間の起こりうるかもしれない未来を描いたSF超大作『ザ・クリエイター/創造者』が公開中です。すでにここ日本でも、IMAX鑑賞率が突出しているというリリースも届いています。

「日本は心から大好きだし、この作品は日本へのラブレター」と来日中に明かしていたギャレス・エドワーズ監督。本作の制作秘話を聞きました。

■公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies//thecreator [リンク]

●本作公開のタイミングで偶然にもAIは注目されていましたが、この偶然についてはどう受け止めていますか?

SF作品を手掛ける場合、年を限定することは避けるようにしていて、キューブリックでさえ『2001年宇宙の旅』としてしまったくらいだからね。だから2070年くらいにしておけば僕はその頃死んでいるだろうし、その時の状態に合っていなかったとしても、死んでしまっていればバカだなと言われようが気にならないよね。ただ、今となれば2020年にしておけばよかったかな。思った以上にAIの進化が早かったからね(笑)。

●本作は工場の看板などを見てアイデアを膨らませたとのことですが、普段から日常的なものを見て着想するのですか?

そうですね。昨日は仕事がなかったので音楽を聴きながら歩き回り、いろいろなものにインスピレーションを感じようとした。そうしていると、アイデアがどんどん浮かんでくるからね。特に作品を完パケしてパブリシティーでインタビューを受け終わった後、いったん自分の頭の中のHDDがリフォーマットされ、とてもスペースが空くんだ。アイデアって面白いことに、追いかけると蝶のように離れていってしまうものでね。奇妙な話、心静かに動かないことにより、反対にアイデアがやってきてくれるものなんだ。普段自分が見ているものは、映画のシーンとしてはまったく使えないものもあるけれど、いくつか重なることでストーリーが見えてくることがある。そうするとこれは映画に出来るかもと思ったりするんだ。

●今回は、どのような過程を経てあのような形になったのでしょうか?

最初にこのアイデアが生まれたのは2000年頃だった。ある映画がかかっていて、ちょっとしたシーンを観た時に、とても自分に通ずるものがあって印象的だった。『子連れ狼』でね。サムライと子どもの関係性が気に入り、実は1作目の『モンスターズ/地球外生命体』(10)でやろうと思ったけれど、子役はお金がかかり、働ける時間も限定されるので、やらせてはもらえなかったんだ。

なのでアイデアをずっとポケットに秘めていたのだが、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)の後、僕の彼女の家族に会いにアメリカを旅した。その長いロードトリップに出た際、高い草がある草原にポツリと工場が建っていて、看板が日本のものに見えたんだ。その頃、もともとロボット映画を作りたいと思っていたので、その中にロボットがいたら面白いのではないかと。ロボットが初めて外に出たら、空や草をどう思うのか発想したけれど、それだけでは映画にはならない。ただのひとつのアイデアで終わりそうだったけれど、『子連れ狼』と合わせたら面白いだろうと。そのふたつがストーリーを作り始めてくれて、彼女の家族の家に着く頃は、だいたい映画は出来ていたよ。これは、自分にとってはレア(な体験)だったけれどね。

●撮影はグリーンバック的な手段を使わず、ロケ中心だったそうですね。ポストプロダクションでVFXを足したという。

(もともとVFXアーティストだったから)ブルーバックやグリーンバックを使う人は、その撮らなかった部分を誰かが、つまりVFXアーティストが一から作らなければいけないことを、たぶん考えてないんだと思うんだ。自分の仕事じゃないからね。6か月後にVFXアーティストが大変な思いをして作らなければいけないわけで、これはVFXアーティストにとっては悪夢にも近い状況なんだ。

かつてVFXアーティストだった身としてはグリーンバックを使ってほしくないし、実際にロケ現場に行ったとしても上手く工夫すれば一部だけVFXにして処理することができるんだ。なので、自分にとってはこのやり方のほうが効率がいいし、安くできるし、より作りやすい。作品としてもベターだ。なぜみんなそうしないのかと思うほどだよ。

●そのやり方は(スタジオなどを)説得するのは大変ではなかったですか?

今回まず、スタジオからロケハン用に少額のお金が出たんだ。それで東京、インドネシア、ネパール、タイに行ったけれど、こっそりカメラを持って行った。カメラに付けたレンズは、70年代のビンテージのもののコーワのもので、実際に映画の撮影でも使っているものだ。それで8分間の動画を作った。映画と同じようにILMにお願いして、後からVFXを足すものを作ったんだ。それをスタジオに見せた時、8分間のすごいスケールの映像になったので、「あのお金で?ウソだろ?」という状況になったんだ。僕の頭の中の計算機が回り、これならいけるだろうと(笑)。

●『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)の時に撮りたいものが撮れて満足したと言われていたと思いますが、今回はいかがでしたか?

やりたいことが出来たという意味では、今回はそれ以上だったと思う。今回は伝統的なスタイルではない撮影の手法を採り、またコントロールをいろいろな意味ですることが出来た。360度の撮影ができるロケーションでは、スタッフも見えないようにしなくてはいけないから、みんな隠れなくてはいけない。仕事をしなければいけない人は、役の衣装を着なければいけない状況だから、現場には5人くらいしかいないような状態なるよね。

タイには世界で2番目に長い木の橋があり、かなり有名な旅のスポットだ。ブロックせず普通に観光客がいるなかで。渡辺謙さんとスタッフ5人くらいで撮影をしていた。セルフィーで撮られてインスタに上げられるかなと心配したけれど、そんなことはなかった。たぶん彼らは、まさかこんなことをやっているいとは思っていなかったんだ。YouTuberか学生映画か何かだと思って見ていたからだと思う。でも、それだけの自由があったからこそ、普通の映画では撮れないようなものも撮ることができたのさ。

■ストーリー

遠くない未来、人を守るはずのAIが核を爆発させた——人類とAIの戦争が激化する世界で、元特殊部隊の〈ジョシュア〉は人類を滅ぼす兵器を創
り出した“クリエイター”の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。だがそこにいたのは、純粋無垢な超進化型AIの少女〈アルフィー〉だった。
そして彼は“ある理由”から、少女を守りぬくと誓う。やがてふたりが辿りつく、衝撃の真実とは…。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の監督×『TENET テネット』の主演俳優×渡辺謙。近未来の世界、“ニューアジア”を舞台に描か
れる感動のSFアクション超大作、開幕。

原題:The Creator
監督・脚本:ギャレス・エドワーズ(『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『GODZILLA ゴジラ』)
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、渡辺謙、ジェンマ・チャン、アリソン・ジャネイ、マデリン・ユナ・ヴォイルズ

撮影=オサダコウジ

(C) 2023 20th Century Studios
大ヒット公開中!

(執筆者: ときたたかし)

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