【ライヴレポート】yosumiが作り上げた、祝祭の1日──〈yosumi birthday live 2023 -式日-〉
2023年9月9日(土)、バーチャルアーティスト
今年で2回目となる誕生日記念ライブ。大まかな形式はそのままに、去年よりも全体的にグレードアップされ、様々なファン層が楽しめるように展開されていた。歌を投稿して約4年の月日が経ち、今でもコンスタントに楽曲を展開し、ライブも行ってきたyosumiというアーティストの節目となったライブイベントの様子をレポートする。
オープニングアクトに登場したのは、1部にThe Herb Shop、2部にDJ WILDPARTY。それぞれ違った選曲でライブのスタートを彩っているのが印象的で、音楽性は違えど、一貫してライブの雰囲気にマッチした空間を作り出していた。”yosumi”というアーティスト像を汲み取るかのように、アップテンポの楽曲を乱立させるような盛り上げ方ではなく、ジワジワと音の振動を感じ取れるような楽曲で、オーディエンスを奮い立たせていた時間だった。
暗がりのフロアに「こんばんは、yosumiです」の言葉が鳴り響く。全体の雰囲気とは少し反抗的で煌びやかなSEを背景に、目まぐるしい映像が飛び込んでくる。徐々に激しさを増すBGMに同調して、yosumiの姿が徐々に浮かび上がっていくのがわかった。今回のイベントの主題にもなっている「式日」の文字が消えると、いつもの衣装を身に纏ったyosumiがリズムを刻んで登場する。どこかの一室をモチーフにしたような、メルヘンチックで微量の不気味さも感じられるライブステージに一気に没入感は増す。ライブに対する高揚感と平行して、言葉に言い表せない美しさに圧倒されながら2021年にリリースされた「パトリオットノイズ」が始まる。
「パトリオットノイズ」の激しいビートとは裏腹に、yosumiは乱れることなく淡々とリズムを刻んでいく。誕生日記念ライブとは思えないほどダークネスなスタートを切った「式日」だが、これがyosumiの楽曲を含めた世界観だろう。オーディエンスも何も気にすることなく純粋に音に酔いしれていく。続いて「seek」が始まると、yosumiの高音の歌声がフロア内に響き渡り、またガラッと空気が変わる。バラついた光の粒子が背後で不規則に動き回り、楽曲はアップダウンを変則的に繰り返す。少し神妙な空間の中で、徐々にオーディエンスもリズムを刻んでいく過程が印象的だった。
yosumiの楽曲の特徴は、クリエイターによるそれぞれのyosumiへの解釈で楽曲が彩られているところだろう。yosumiの創造する要素を軸に置きつつも、クリエイター陣の解釈もyosumiの世界観を構築する重要な要素となっている。一貫的なアプローチや曲自体の雰囲気に共通点はあるものの、音源やライブを見ているとジャンルレスであることがわかる。次に披露された「phantasm」では、アンビエントな音の中を心地いい音程でメロディを刻んでいく。ステージには、絵画が配置され、曲を重ねるごとにアーティスティックに変貌していた。
「今日という日を祝祭日のような気持ちで過ごしてもらいたい」という言葉から始まり、さらには1つの節目として自身のこれまでの活動や音楽と改めて向き合いたいと「式日」に込められた思いを語った。続けて、これまでの活動における葛藤なども吐露する場面があり、同時に徐々に徐々にステージ上の世界が暗がりへと変化していくのがわかった。その流れから「窓辺のモノローグ」「星の唄」「ひとひら」とメロディックな楽曲を連続で披露。一緒に歌いながらリズムを刻むオーディエンスの姿がこのタイミングで多く見られた。
ライブも折り返し地点。オーディエンスが埋め尽くすフロアの熱量は楽曲を積み重ねるたびに上がっていくのがわかる。楽曲における情緒の起伏も、yosumiの世界観や作品の特徴とも言えるだろう。そして、後半の1曲目には新曲「幽霊船」を披露。ここ最近のyosumiの楽曲の傾向を見るに、「ネコひねり問題」も含め、本人もMC中に言っていたが揺蕩うような雰囲気の楽曲が特徴の1つだと感じている。もちろん過去の楽曲にも様々なメッセージ性は込められてはいるだろうが、特に「幽霊船」はストレートな言葉はないにしろ、楽曲全体を通して聴き手に脱力感や一体感を彷彿とさせている。そのまま「揺らいで」「Purgatorial Time (feat. yosumi) 」「synerzy」を披露。浮遊感のあるビートや音と、キャッチーなメロディを軸にフロアの一体感はさらに上がっていく。
ここからまた別のフェーズへ突入するかのように「synerzy」「Snap ‘n’ Clip (feat. yosumi)」とMOTTO MUSIC収録曲が披露された。今年の8月に披露された新衣装を身にまとい、ステージの演出も目まぐるしいほどのポップが溢れ出す。楽曲もガラッとダンスミュージックの要素が上がっていき、yosumiの跳ねるようなラップパートに合わせてオーディエンスも激しく体を動かしていく。音楽に比例してフロアの熱気を上げつつも、ステージ上の映像は美しさを保ったまま、自身の楽曲を通して様々な想いを提言する。続いて披露した「syzygy」は、yosumiの楽曲の中でも屈指の人気曲。フロア内がclapの波に包み込まれ、オーディエンス自体もラストスパートをかけだしたかのように高揚する。
曲の終わりとともに、映像にノイズが走った。再びいつもの衣装を身にまとったyosumiが現れ、束の間の新衣装の時間が終わる。余韻を感じる間もなく「for good」が流れ出し、yosumiは左右にリズムを刻んでいく。神妙でリリカルなメッセージをポップな音楽と上手く調和し、受け取り手に委ねるかのように、限りなくラフに歌い上げている姿が印象的だった。そして、曲の終盤のピアノの旋律が終演の香りを漂わせるように鳴り響き、蛍火のような光の粒子が揺蕩い出すと、そのまま最後の楽曲「with Night」が始まった。yosumiらしい夜を題材とした楽曲でフィナーレを演出し、心地良いメロディも相まってエモーショナルな空間が広がる。曲の終わりに「またね」という言葉を吐いて「yosumi birthday live 2023 -式日-」は終演した。そのあとは、やってみたかったとアンコールが行われ、1部2部それぞれ違った楽曲を披露した。2回目となったバースデー記念ライブだったが、まずは圧倒的な映像演出に惹かれた。言ってしまえば、曲を完璧に覚えていなくとも映像美だけでライブ自体楽しめてしまう。楽曲だけではなく、映像と共に構築し表現するライブスタイルは、まさにyosumiのアーティスティックな要素であり、また1年で築き上げた先に待つパフォーマンスに期待してしまう。
会場内では、秋葉原エンタスの会場をフルに活用し、物販や原画展が展開されていた。yosumiの活動の特徴として、自身の世界観を各クリエイター陣と共にグッズに落とし込む楽しさとクオリティの高さがとにかく秀でている。開場と同時に物販には長蛇の列ができ、グッズを買い求めるファンの姿が広がっていた。フロアの前線で常に音に酔いしれていたり、時折物販を買いに行ったりと、それぞれが自分のペースでライブを楽しんでいる姿が印象的だった。
取材&文 : 森山ド・ロ

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