なぜ「発達障害もどき」は増えている? その背景と改善法を臨床経験35年以上の小児科医が解説
近年、発達障害と呼ばれる子どもが劇的に増えているといいます。文部科学省のある調査によると、2006年の時点では全国で7000人足らずだった発達障害児の数が、2020年には9万人を超えたそうです。これまで小児科医、研究者として、多様な臨床現場を経験してきた成田奈緒子さんは、「この子どもたちのすべてが発達障害児にはどうしても思えない」と言います。成田さんがたどり着いたのは、「少なくない数で『発達障害もどき』の子がいる」という考え。「発達障害の診断がつかないのに、発達障害と見分けがつかない症候を示している状態」の子どもが最近特に増えてきているというのです。
この「発達障害もどき」の概念を知り、そこから抜け出す方法を試すことで、親が子どもと向き合うのがラクになったり、子ども自身の悩みや苦しみを減らしたりできないかとの思いから書かれたのが、『「発達障害」と間違われる子どもたち』です。
日本では2000年代初頭に発達障害者支援法が成立し、全国に発達障害者支援センターができたことなどで、発達障害という言葉が世の中に浸透していきました。教師や親の中で「発達障害」という選択肢が一つ追加されたことにより、「この子も発達障害なのかもしれない」と思う人が激増したのも事実だと成田さんは記します。
しかし、学校などで指摘されて成田さんのところに相談に来る事例の中には、医学的に発達障害の診断がつかない例も多く含まれているそうです。発達障害の診断は、子どもの成育歴・発達歴、普段の行動、そして心理検査の結果などを見ながら、専門家が時間をかけて慎重に判断をくだすものです。さらに、「診断はときに主観的であり、流動的なものでもある」(同書より)こと。一度診断されたからといって一生発達障害というわけではなく、「そのときによって診断結果が異なる可能性もないとはいえない」(同書より)と言います。
同書ではこうした「発達障害もどき」が増えた背景について記すとともに、「発達障害もどきの症候を改善するための対策」についても解説しています。同書では、私たちの「脳」を以下の3つに分けて進めます。
(1)からだの脳(脳幹や間脳など。呼吸・体温調整など生きるのに欠かせない働きを担う部位)
(2)おりこうさん脳(大脳と小脳。言葉や計算の能力、手指を動かす力などをつかさどる部位)
(3)こころの脳(前頭葉。論理的思考力やコミュニケーション力などをつかさどる部位)
この順番に子どもの脳を育てていくことが大切であり、この成長バランスが崩れると「発達障害もどき」の状態になりやすいと説明します。
では、脳の成長バランスが崩れている場合、どうすればよいのでしょうか。「その方法として、行ってほしいのが『生活の改善』」(同書より)だといいます。同書には改善ポイントなども具体的に書かれていますので、「うちの子は発達障害かも……」と感じている人がいたら、まずはこの部分を見直してみるとよいかもしれません。
なお、著者の成田さんは、医療・心理・福祉・教育の枠を超えた専門家と家族の交流の場「子育て科学アクシス」を主宰しています。さらに詳しく知りたい方は、同書を読むとともに、子育て科学アクシスのサイトにもアクセスしてみることをおすすめします。
[文・鷺ノ宮やよい]
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