Interview with HIMAWARI(CANNABISオーナー/YELLOW BUSH CEO)
原宿・キャットストリートで20年を超えて愛されているセレクトショップ、CANNABIS。音楽やアートなどカルチャーをバックグラウンドに持つ服が揃い、ジャンルを超えた繋がりを生む場所となっている。そのCANNABISのアイコンとして知られるHIMAWRIと畑中良太の二人は、昨年6月にYELLOW BUSHという会社を立ち上げ、経営母体であったPR会社ワンオーを離れ独立。自身の会社でCANNABISの運営を始めた。独立から約1年、新生CANNABISとしてルックブック『MIMIC』をリリースするタイミングに合わせ、HIMAWARIにこれまでの経緯や変化、今後の展望を聞いた。
――まず、独立の経緯から聞かせてもらえますか。
HIMAWARI「CANNABISに新卒で入って7年間勤務して、そこから5年店長兼バイヤーをやっていたんですが、会社と週1回数字中心のミーティングをやっていたのが不毛すぎて(笑)。どんなブランドを取り扱ってるか、なにが今売れてるかもわからない人たちにただ数字だけで説明して意味があるのかって思っていたんです。服屋は“買い付け”という先に出ていくお金が膨大で、買い付けたものに対して利益になるのが半年後以降なんですよ。それまではわりと自由にさせてもらっていたんですが、コロナ禍になってお店を臨時休業して売上も下がったところで、その買い付けなど数字の面を大分シビアに見られるようになって。さらに、会社の事情で急に店舗のフロア移動をしなくてはいけなくなって、会社にいたら今後もこういうことがあり得る。それだと形骸化してしまうから、自分たちでちゃんと舵取りをしたいと社長に独立の相談をしました。社長はカンナビスの立ち上げから携わっていたこともあって、状況や気持ちをすごくわかってくれて。ただ存続するだけで格好いい店でなくなるくらいなら独立したいという話をしたら、逆に応援してくれたんです。それで円満に独立が叶いました」
――会社を設立すると一言に言っても簡単ではないですよね。その手順や資金は?
HIMAWARI「資金は国から借り入れて、返済しながら運営してます。借り入れの申請に最低限の資本金がいるので、それは一旦親から借りました。国には3年分の返済計画を提出してるんですけど、元々毎日の売り上げをExcelでまとめたものが20年分あったので、それを基に売り上げ見込みを立てて、毎月の返済額を計算したんです。手順に関しては、freeeという会社立ち上げのサポートサイトに頼りました。登記のために会社のハンコを作ってくださいとか、区役所に住民票を取りに行ってくださいとか全部指示してくれるんですよ。登記をするために顔写真付きの身分証が必要だったんですけど、パスポートの期限が1ヶ月前に切れて使えないですって言われて。3日後に登記提出しなきゃいけなかったから原付の免許を1日で取ったり(笑)、バタバタしながら準備しました。ただ、通常の業務的には独立して新たに増えたものはないんです。仕入れ売り上げや在庫などの数字管理、海外にアポイントとってバイイングしたり、接客してお客さんの顔を覚えること、セールスやイベントの開催も全て7年間で習得していたので、やれると思っていた。その自信が一番の担保でしたね」
――なるほど。CANNABISという看板を残すということは、「音楽、ファッション、アートを切り口にアウトサイダー(異端児)たちが集まる場所」という設立当時からのポリシーを引き継ぐことになるということでもあると思います。独立して残すものと刷新するものについてはどう考えましたか。
HIMAWARI「今言われた、カルチャー面での人の繋がりがファッションと絡んでいく場所であり続けるというのは本当にコアの部分で守っていきたいところです。23年間のカンナビスの歴史、携わってきた先輩たちのおかげで今の自分たちのコミュニティーがあるので。変えた部分では、コロナや戦争などいろんな影響で服の価格が高騰したので、もうちょっと買いやすいブランドを増やしました。自分たちの所でしか取り扱っていないようなフレッシュなものも入れたくて、Arte Antwerp、BLUEMARBLE、Drôle de Monsieur、jian ye、SUNFLOWERなど二人がいいなと思った新しいブランドが加わって。それに伴って、真っ黒のイメージだった店内も明るい色が増えたかもしれません」
――変化を起こす中で、カンナビスらしさやお客さんのニーズに沿っているかという基準はどのように測っているんでしょう。
HIMAWARI「アイテムの着用写真のモデルをほぼ全て良太がやっていて、それを見て来てくれるお客さんが多いんですね。だから良太が似合うものという選び方は一つあります。例えば以前はプリントロンTやTシャツの取り扱いが多かったんですけど、良太が普段あまりそういうものを着ていないから、段々もっとシンプルなものになってきたり。あとはコロナ前からではあるんですが、次のシーズンの受注会を重店でやらせてもらって、どんなものをお客さんが今求めているかを常にキャッチするという取り組みもやっています」
――そこにHIMAWARIさんの感性や持ち味はどのように加わってるんですか。
HIMAWARI「良太というアイコンがベースにあった上でですが、自分がバイイングを始めてから優しい色味のものが増えたかなと思います。あと、メンズファッションの勉強はしっかりやったんですけど、女性だから自分を反映させて考えるということをしない。その客観性やフラットな目線はバイイングにも接客にも活かせてるのかな。正直、大学で空間デザインをやってたこともあって、服にこんなに長く関わるとは想像してなかったんですよ。でもCANNABISで、長くその人に沿っていく一生ものを売ってるんだって感覚を味わって抜けられなくなったんです。家具を売るような感覚というか。CANNABISのお客さんは服以外でも格好いいし、そこが育っていく場所でもあるから、流行り廃りではないセレクトをしている。それは自分が勉強してきたこととも共通してるし、アートも音楽も好きだからこそ提案できるファッションがあるというのが嬉しいんです」
――最後に、独立してからの振り返りと今後の展望を教えてください。
HIMAWARI「先日ビームスとコラボしてショップ・イン・ショップをやったんですけど、あれは同世代の子の企画だったんですよ。そういう風にみんなで一緒に盛り上げていこうという感じで横の繋がりから面白いことができて、地方にもポップアップに行けたり、海外でもやれそうだったり、自分たちの強みを活かしながらフットワーク軽く動けてるなと思います。
今後で言うと、独立してすぐにECサイトを新しくしたんですけど、売り上げが倍くらいになってるんです。お店に来れない人や来づらいという人に向けても、ECは重視していきたいですね。今回アート方面に振れたルックブックを作ったのも、新しいカンナビスになったということを伝えたいと同時に、ECで垣間見えた女性を含めた潜在的な客層に向けても世界観をしっかり伝えたいという思いもあって。それをちゃんと形にしよう。さらに、自分たちと近い人たちと作ろうと試みて今回のルックブックが出来上がっています。やっぱり人と人の繋がりは大切にしたいし、繋がりを作っていきたいというのがCANNABIS。2ヶ月に1回やってるクラブイベントも、初めてクラブ行く人が来れるようなものにしたいと思ってやってるんですけど、お客さん同士がそこで繋がって、周年イベントに一緒に来てくれたりしたんです。そういうの、すごくいいなあって。お客さんと自分たちが繋がる、お客さん同士も繋がる、お店同士も繋がる、そういういろんなハブとしてやっていきたいです」
HIMAWARI/早坂向日葵
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CANNABIS
https://cannabis-tokyo.shop
住所:東京都渋谷区神宮前5丁目17−24 CAT STREET BUILDING 3階
03-5766-3014
OPEN:12:00-20:00
text Ryoko Kuwahara (IG)
写真は23SS CANNABIS LOOKBOOK『MIMIC』(3000yen+tax)より抜粋
model SEGA(https://www.instagram.com/okrsg__/) Cruella de Vil Utashiro
photography Ryoma Kawakami(https://www.instagram.com/ryoma_kawakami/)
direction / style NUGA(https://www.instagram.com/nuga.jp/)
styling assistant yuta kawakami(https://www.instagram.com/percypogotcha/)
hair YOSHIMIKI(https://www.instagram.com/yoshimiki0929/)
special thanks Tomoya Nakagawa(https://www.instagram.com/tomonyan55/) Rie Fujii-Biddie(https://www.instagram.com/riefujii/) Itsuki (
https://www.instagram.com/_ltsuki/)
cannabis HIMAWARI(https://www.instagram.com/h_mawari/) Ryota Hatanaka(https://www.instagram.com/ryota_hatanaka/)
都市で暮らす女性のためのカルチャーWebマガジン。最新ファッションや映画、音楽、 占いなど、創作を刺激する情報を発信。アーティスト連載も多数。
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