The fin.とShe Her Her Hers出演 中国深圳〈Strawberry Music Festival〉レポート

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The fin.とShe Her Her Hers出演 中国深圳〈Strawberry Music Festival〉レポート

日本からThe fin.She Her Her Hersの2バンドが出演をした中国・深圳市で開催された『Strawberry Music Festival』の模様を現地で観戦した音楽ライター金子厚武のレポートでお届けする。

2023年5月20日・21日に中国・深圳市で開催された『Strawberry Music Festival』にShe Her Her HersとThe fin.が出演した。The fin.のYuto UchinoがShe Her Her Hersの作品でミックスエンジニアを務める一方、She Her Her Hersのドラムの松浦大樹はThe fin.のライブでサポートを務めるなど、この2組は盟友と言ってもいい関係性である。

『Strawberry Music Festival』は中国の音楽レーベル・Modern Skyが2009年にスタートさせた中国最大級の野外音楽フェスティバルで、毎年場所を変えながら開催。出演者は中国のアーティストがメインだが、過去にも日本人アーティストが出演していて、北京と上海の2会場で開催された2018年にはThe fin.が水曜日のカンパネラらとともに出演し、上海と成都で開催された2019年にはRADWIMPS、Yogee New Waves、never young beachらが出演。深圳での開催は5年ぶりで、コロナの影響により日本人アーティストの出演は3年ぶり。各日1万5千枚のチケットが一日で売り切れたことからその人気の高さが伺える。

広東省に位置する深圳市は北京市、上海市、広州市とともに中国本土の4大都市のひとつ。特にIT分野が盛んな都市で、中国でのストリーミングサービスで最大のシェアを誇るテンセントやファーウェイといった企業が本社を構える。会場の大梅沙海浜公園はその名の通り海に面した砂浜で、両端にStrawberry StageとLove Stageの2ステージを設置。深圳市は香港の真上にあり、亜熱帯気候ということもあって、5月でも最高気温が30度を超え、会場では日傘を差したり、ビニールシートを敷いてくつろぐオーディエンスの姿が見られた。また、場内には飲食や協賛企業のブースが並び、このあたりは日本のフェスとも大きく変わらない光景だった。

She Her Her Hers

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メタル、ニューウェイヴ、ヒップホップなど幅広いジャンルのアーティスト全12組が出演し、日本でもお馴染みのフェイ・ウォンの娘である竇靖童/リア・ドウがトリを務めた初日、She Her Her HersはLove Stageの3組目として登場。彼らはもともと2019年に3rdアルバム『location』を発表した際、中国のレーベルであるWeary Bird Records(Taihei Music Group)と契約をし、本土での配信およびCDリリースが行われ、同年には7都市を回るツアーを成功させるなど、中国での人気を確かなものとしていた。コロナ禍に入ってからは中国限定の配信ライブを行うなどしてアプローチを続けてきたが、昨年中国のTikTokである抖音/ドウインで楽曲がバズを起こし、特に「Episode 33」はネット上で月間1000万回再生されるなど、その知名度を大きく上げた中での4年ぶりの中国でのライブとなった。

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ステージにヴァイオリンとベースのサポートを含めたメンバー5人が登場すると大きな歓声が起こり、その人気の高さが早速伝わってくる。中国では日本以上にSNSの力が大きく、場内では写真や動画を撮るオーディエンスの姿があちこちで見られたが、シーハーズの登場時にも一斉にスマホが掲げられていたのは非常に印象的だ。ライブは「Diagram X」からスタートし、「Bloody Mary Girl」では曲に合わせて飛び跳ねる人も。シーハーズのライブでの最大の特徴であるヴァイオリンのオリエンタルな旋律は、改めて中国との相性の良さを感じさせるものでもあった。

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松浦の英語でのMCに対するリアクションもすこぶるよく、ときおり黄色い歓声が起こるのも日本ではなかなか見られない光景。その後も「Arrows」、「s」と曲を続けていったが、主に日本語で歌うシーハーズの楽曲がしっかり浸透していることには驚かされる。そして、この日最大のリアクションがあったのはやはり「Episode 33」。シンセの高音とベースの低音が立体的な音像を生み出す序盤から、マーチング風のリズムとともにヴァイオリンが印象的なメロディーを奏でる展開での盛り上がりは相当なもので、途中のリズムチェンジにもしっかり歓声が起こったりと、この曲を生で聴けたことに対する喜びが会場内からヒシヒシと伝わってきた。

ライブ後半ではとまそんが「この日のために勉強してきた」という中国語でのMCを披露。中国語で「520」の発音に近いことから5月20日は中国で「我愛你の日」と呼ばれ、その日に4年ぶりの中国でのライブを行うことになったのを受けて、中国のシンガーである石玺彤/シィー・シィートンをゲストに迎え、新曲「Mo ai ni」(5月31日リリース予定)を作ったことを伝えると、オーディエンスからは大きな拍手が贈られた。最後は「Imaginary line」から「Day Tripper」が演奏され、髙橋啓泰がシューゲイズなギターをかき鳴らし、松浦がパワフルにドラムを連打して、大盛り上がりの中でステージが終了。アジア圏におけるさらなる活躍を期待せずにはいられないライブだった。

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The fin.

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中国産ポストロックの元祖と言われる惘聞/ワンウェンや、この日限りのオーディオヴィジュアルセットを披露したベテランニューウェイヴバンドの重塑雕像的权利/Re-TROSらが出演した2日目は、Strawberry Stageの3組目としてThe fin.が登場。彼らもすでに中国での人気を確かなものとしていて、2019年に13都市で行われたツアーは1000人規模の会場が全公演ソールドアウト、2020年に行われた配信ライブは20万人が視聴したという。この日の前日にも西湖で行われたフェスに参加し、すぐに飛行機で移動して会場入り。終演後には場内を歩くYutoを捕まえて一緒に写真を撮るオーディエンスの姿も多数見られた。

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この日は松浦ではなく、The fin.がイギリス滞在時にドラマーを務めていたTom Carterが参加し、サポート含むメンバー5人がステージに姿を現すと、やはり大きな歓声とともに一斉にスマホが掲げられる。ライブは「Pale Blue」からスタートし、Yutoの透明感のある歌声とチルウェイブ風のサイケなシンセサウンドが海沿いのロケーションにぴったりだ。キラキラとしたシーケンスが美しい「Sapphire」ではハンドマイクで歌い、「Loss, Farewell」や「See You Again」では椅子に座ってキーボードを弾いたりと、Yutoの姿からはリラックスしながらもライブを楽しんでいる様子が伺える。

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Yutoは英語でのMCも手慣れたもので、「海を見ながらプレイするのはアメイジングだね」とにこやかに話し、オーディエンスからは大きな拍手が。そして、曲紹介とともに大歓声が起こり、この日一番の盛り上がりを見せたのは「Night Time」。セットリストの中で最も古い曲である「Night Time」に一番のリアクションが起こるというのは、それだけThe fin.の存在がしっかり浸透していることの証明だったと言える。間奏ではYutoが「Are you ready? Shenzhen!」と呼びかけると一斉に手が上がって、それは実に美しい光景だった。

場内に手拍子が広がった「Outer Ego」から、最後は「Deepest Ocean」が披露され、竹之内一彌によるアウトロのサイケデリックなギターソロとともに演奏を終えると、The fin.はすでに6月からの中国ツアーが決まっていることもあり、「Thank you so much! See you soon!」という言葉とともにこの日のステージを締め括った。コロナ禍が収束へと向かい、日本人アーティストの目線がこれまで以上に海外へと向けられる中、以前から海外を意識して活動を続けてきた2組が確かな成果を残した『Strawberry Music Festival』は、日本とアジアの音楽シーンの未来を考える上でも、意義のある2日間だったと言えるだろう。

(文:金子厚武)

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