恐怖と驚きとアクションが強烈に入り混じる…!映画『オオカミ狩り』キム・ホンソン監督インタビュー
韓国映画史上最も強烈な映画『オオカミ狩り』が今週末4月7日(金)より公開中です。フィリピンに逃亡した極悪犯罪者たちと護送官の刑事を乗せた貨物船“フロンティア・タイタン号”。 太平洋のど真ん中に浮かぶ監獄は、犯罪者たちの反乱により血で海を染める。そして〝怪人”が目覚めたとき船上は地獄と化す。果たして、生き残るのは……。
監督を務めるのは、『メタモルフォーゼ/変身』『共謀者』などを通じて“ジャンル映画のマスター”として地位を築いてきたキム・ホンソン。2017年にフィリピンへ逃亡した韓国人犯罪者47名の集団送還のニュースから着想を得て、想像を絶する残虐な映画を創り上げています。今回は監督にオンラインインタビューを敢行!作品へのこだわりを伺いました。
――映画楽しく拝見させていただきました。本作はノワール映画の部分と、スリラー映画の部分両方を持っていると感じました。
ノワール映画の要素があると言ってくれたのは、藤本さんがはじめてです!というのも、多くの人がそう感じると思うのですが、この映画の骨組みが犯罪アクションからはじまり、そこからホラーとなり、最後にはSFアクションになっていく…というものだからなんですね。なので、こうやってノワールの要素があると言っていただけて嬉しいです。ジョンドゥをはじめとする犯罪者のキャラクターたちには確実にノワールの要素がある。なので、ジョンドゥというキャラクターが好きな方にはそうやって感じ取ってもらえるのかもしれません。
――実際の事件から着想を得たそうですが、犯罪者を輸送する船ということに興味を持ったのか、限られた空間での人間関係というシチュエーションに興味を持ったのか、教えてください。
実際のニュースでは飛行機で犯罪者が50人ほど運ばれてくる、というものだったんですね。ただ、飛行機の中で起こるアクションというのはこれまでもあったので、船に変更しました、仕方なく船で輸送しなければならない状況を作りました。最初に書いたシナリオは集団搬送という所からはじまっていたのですが、それが『コン・エアー』(1997)という映画に設定が似通っていました。そこで、私は改造人間に興味があって、これまでも改造人間に関するストーリーを作っていたんですね。なので、その2つを混ぜ合わせたら面白いだろうなと思い、この『オオカミ狩り』が出来ました。
――とても刺激的なシーンが多いですが、そういったシーンを撮りたいと思った理由を教えていただけますか?
コロナ禍で、映画館に足を運ぶ人が減り、多くの人が配信で映画を観る様になりました。そんな皆さんを映画館に呼び戻す為には、勝負をかけなくてはいけないと思いました。より残酷に、スリリングな作品を作りたいと思いました。昔はドラマというと恋愛作品がメインでしたが、今は配信でも優れた監督がいて、ジャンル映画的な作品もたくさん作られています。そんな中、劇場で観る映画がどう差別化をはかるかというと、やっぱり音ですよね。体が震える様な良質な音というのはなかなか家庭で味わうことは難しいと思います。本作も音での迫力を意識しています。
――船内でのアクション、狭い場所でのアクションが見どころですが、どの様な所に気をつけましたか?
まずは安全を第一に考えていました。私がアクションで意識しているのは、キャラクター性です。「こういう人だから、こういうアクションをするだろう」「彼はどの様な戦いをするんだろう」ということを一番に考えて作っています。本作でのアクションのことを“ハイパー・リアリティ・アクション”と呼んでいるのですが、生きるか死ぬか、本能的でシンプルなアクションをずっと描いています。生きる為に戦っている、鋭い刃物を突きつけられる様なアクションを目指しました。
――血のりの量が凄まじかったので、船内ですっ転ばないか心配になってしまいました…!
おっしゃる通り、とても滑ったんですね。だからこそ徹底的に安全な現場を心がけていて、誰一人転んで怪我をすることなく撮影を終えられました。日本の映画もそうだと思いますが、撮影現場というのは本当に目まぐるしくて、スタッフが絶えず走り回っているんですね。なので私が現場で一番発していた言葉は「走らないで!」でした(笑)。
――本作は怖い展開がたっぷりですが、悲しいお話でもありますよね。ストーリーのバランスをどの様に作っていきましたか?
まずは、細かな所まで映画を観てくださってありがとうございます。本作は過去からずっと繰り返されている社会的な暴力を描いた映画でもあります。暴力が繰り返されている中で、世の中がどんどん険悪になっています。人間が人間と触れ合う時に、どちらかがオオカミになるのではなく、人間性を保っていてほしい。そんな内なる気持ちをこの映画にこめています。キャラクターたちは全て二面性を持っているんですね。ドイルの暴力の裏側には悲しいバックボーンがある。そういった人間の多面的な部分も描きたいと思い、この映画に取り組んでいました。
――今日は本当に貴重なお話をありがとうございました!
【STORY】2022年、フィリピン マニラ。現地で逮捕された犯罪者たちを乗せた貨物船“フロンティア・タイタン号”が釜山港に向けて
出航した。長年、凶悪犯罪を担当してきたベテラン刑事の約20人が護送官として乗船。釜山では、海上交通管制センターで海洋監視シ
ステムを設置。万全な体制により、韓比共同護送計画(プロジェクト名:オオカミ狩り)が進められた。監獄化した貨物船には、13名
に対する殺人および殺人教唆、強姦罪に問われ第一級殺人犯として国際手配されたジョンドゥ(ソ・イングク)、特殊暴行17件で赤手
配者のドイル(チャン・ドンユン)など極悪非道な犯罪者たちが収容されていた。その夜、密かに脱走を企てていたジョンドゥと刑事
として紛れ込んでいたジョンドゥの一味により暴動が勃発。船上は武器を手にした犯罪者たちで溢れかえる。仲間以外は誰であろうと
容赦なく殺める犯罪者たちと彼らに立ち向かう警察。そこに、眠っていた“怪人”が目を覚まし、熾烈な戦いが幕を開ける。地獄の航
海から生き残るのは誰か……。
監督・脚本: キム・ホンソン
出演:ソ・イングク、チャン・ドンユン、ソン・ドンイル、パク・ホサン、チョン・ソミン、コ・チャンソク、チャン・ヨンナム、チェ・グィファ
2022|韓国|122分|シネスコ|5.1ch|原題:늑대사냥|英題:Project Wolf Hunting|字幕翻訳:石井絹香|配給:クロックワークス|R15+
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