中古マンション市場、築20年以内が好調? 首都圏不動産流通の動向を解説

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中古マンション市場は、築30年超の比率が拡大、築20年以下の需要は底堅い

東日本不動産流通機構(以下、東日本レインズ)の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」の結果を見ると、築20年以下の中古マンションのニーズが底堅いことが分かる。詳しく見ていくことにしよう。

【今週の住活トピック】
「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」を発表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)

首都圏の中古マンション市場は、築30年超物件の比率が拡大

データ元の東日本不動産流通機構について、説明しておこう。まず、指定流通機構とは、国土交通大臣指定の組織で、各地域の主な不動産会社が会員となっているもの。会員の不動産会社は、REINS(レインズ)と呼ばれるネットワークシステムに、不動産の情報を登録することで情報を共有している。東日本レインズは、全国のうち東日本地域を管轄している。

今回のデータは、東日本レインズが2022年の1年間において、REINSに新規に登録されたり成約の情報を得たりした、首都圏の中古マンションと中古一戸建ての物件を“築年数”の観点から分析し、市場動向をまとめたものだ。

今回の首都圏の市場動向の特徴の1つが、築年数の古い中古マンションの市場に占める比率が高いことだ。
中古マンションの市場を見ると、「築31年超」の物件が占める比率は、新規登録物件(新たに売り出した物件)で2021年44.7%→2022年46.9%に拡大し、成約物件(契約が成立した物件)で2021年29.7%→2022年31.5%に拡大している。その分、築年の浅い「築5年以内」や「築11~15年」が縮小している。

新規登録物件・成約物件ともに、「築5年以下」の比率が拡大している中古一戸建て市場と比べると、対照的な結果だ。

築20年以内の中古マンションの売買は好調?

特に注目したいのが、築20年以内の中古マンションの状況についてだ。

まず、築年帯別の平均価格を見ていこう。
売り出す側はできるだけ高く売りたいので、まずは希望価格で売り始める。一定期間で売れない場合は、価格を下げることになるし、買う側はできるだけ安く買いたいので、不動産会社を通じて価格交渉を行う。このため、新規登録価格よりも成約価格のほうが下がるというのが一般的だ。

中古マンションの平均平米単価と中古一戸建ての平均価格を見ると、新規登録物件と成約物件で、常に一定の開きがあるのは、このためだ。そして、それぞれ築年帯が古くなるほど下がっていく傾向が見られる。

上が中古マンションの築年帯別平均平米単価、下が中古一戸建ての築年帯別平均価格(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

上が中古マンションの築年帯別平均平米単価、下が中古一戸建ての築年帯別平均価格(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

次に、築年帯別の新規登録件数に対する成約件数の割合=「対新規登録成約率」を見ていこう。
中古マンションでは、「築6~10年」が最も対新規登録成約率が高く(35.2%)、「築0~5年」「築11~15年」「築16~20年」がおおむね28~30%程度となり、築20年を超えると下がり続けることが分かる。

これに対して、中古一戸建て市場の対新規登録成約率では、築6~築25年以内ではおおむね30~32%で横ばいとなっており、中古マンションに比べると築年帯別による対新規登録成約率の差が小さくなっている。

築年帯別の取引動向「対新規登録成約率(成約件数/新規登録件数)」(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」から一部データ抜粋)

築年帯別の取引動向「対新規登録成約率(成約件数/新規登録件数)」(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」から一部データ抜粋)

「対新規登録成約率」(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)から一部データ抜粋」)

「対新規登録成約率」(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」から一部データ抜粋)

中古マンションのカギは、広さ&築年か?

中古マンションには、「築年帯別平均価格」のデータもある。実はこちらを見ると、築20年以内までは新規登録件数と成約件数の平均価格がかなり近いことが分かる。

中古マンションの築年帯別平均価格(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

中古マンションの築年帯別平均価格(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

具体的に平均価格を見ていくと、次のようになっている。「築6~10年」では、成約平均価格が新規登録平均価格を上回っている。

○成約平均価格○新規登録平均価格築0~5年:6638万円6777万円築6~10年:6193万円6053万円築11~15年:5543万円5616万円築16~20年:5250万円5578万円

ではなぜ、築20年以内の平均価格では両者が近くなっていたのか。これは平均面積を見ると分かる。築20年以内までは、新規登録物件の平均面積は約55~65平米であるのに対し、成約物件の平均面積は約63~70平米と開きが大きくなっている。

中古マンションの築年帯別平均面積(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

中古マンションの築年帯別平均面積(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

したがって、築20年以内の中でも、面積が広いもののニーズが高く、その結果として成約物件の平均価格が高くなっていると考えられる。対新規登録成約率が最も高くなっている「築6~10年」は、「築年数×面積×価格」のバランスがよいということだろう。

そうはいっても、築20年以内の中古マンション平均価格は5000万円を超える高額となっている。平均価格が2000万円台となる「築26~30年」、「築30年超」の価格的訴求もあり、築年数の古いものへの需要も高いのが実態だ。

おそらく、築年数が浅いものの中でも面積が広いもの、築年数が古いものの中でも利便立地や管理状況のよいもの、などが選ばれて成約に結び付いているのだろう。築年数の浅いものの市場シェアが少ないからといって、それだけで売れるわけではなく、広さと価格とのバランスが大事だと理解しておきたい。

●関連リンク
「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)

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