職場で、家庭で、不機嫌ハラスメント増殖中!? その実態と対処法を専門家が徹底解説
「ハラスメント」とは、相手の嫌がることをして不快感を与える行為のこと。パワハラ、セクハラ、マタハラなど、さまざまなハラスメントがある中で、これから注目を集めていくのが「フキハラ」かもしれません。
「フキハラ」とは「不機嫌ハラスメント」の略。今回紹介する満倉靖恵さん著『フキハラの正体 なぜ、あの人の不機嫌に振り回されるのか?』では、「フキハラ」について「不機嫌な態度をとることで、相手に不快な思いをさせたり、過剰に気を遣わせたり、精神的な苦痛を与えること」(同書より)と説明されています。
たとえば、「家庭や職場の暗黙のルールを破らないよう常に気をつけている」「パートナーが不機嫌そうにしているだけで、気分が落ちつかない」「人が怒られているのを見ると、自分まで不安になる」といった項目に当てはまったら、フキハラ「被害」にあっている可能性があるそうです。いっぽうで、「思い通りにならないと不機嫌になる」「イライラするとまわりが委縮する」などに当てはまれば、自身がフキハラ「加害者」になっているかもしれないといいます。
そしてフキハラの特徴は、「不機嫌」という感情そのものが原因で発生するため、意図する・しないにかかわらず、すべての人が被害者にもなりえ、加害者にもなりうることです。相手との優位性を利用したセクハラやパワハラなどとは異なり、フキハラの背景にあるのは「不機嫌な感情が別の誰かに伝染する」という現象。このことが、長年の研究によりわかってきたのだそうです。
しかし「不機嫌」という目に見えない感情を知るためにはどうすればよいのでしょうか。これを計測するために同書に登場するのが、感情をリアルタイムに可視化する「感性アナライザ」という装置。電極が仕込まれたヘアバンドを装着し、その脳波解析によって「集中度」「ストレス度」「興味度」「好き度」「不快度」など30種類以上の感情別にその数値がグラフ状に記されるというものです。これを使った研究の中でわかってきたのが、私たちは「『ネガティブ』な刺激には敏感で、『ポジティブな刺激』に対しては鈍感であること」「『ネガティブな感情』は払拭しにくく、『ポジティブな感情』は持続しにくい」(同書より)という脳の性質です。また、ストレスなどのネガティブな感情は伝播しやすいという特徴も見えてきました。要するに、フキハラとは「脳からダイレクトに『不機嫌がうつる』ということ」だと著者の満倉さんは言います。
この、不機嫌な感情の電気記号を「脳のオーラ」、略して「ノーラ」と呼んでいる満倉さん。同書では、誰かの「不機嫌ノーラ」から身を守るための方法やストレスコントロールなどについて詳しく紹介されています。特に、ストレス度の軽減に大きな変化をもたらすという”ある香り”については、すぐにでも取り入れたいところ。心の不調を軽くし、「フキハラ」対策にも効果が期待できそうです。また、私たちが家族や職場の人たちと円満に過ごすためには、「自分の『不機嫌ノーラ』が相手に想像以上のストレスを与える可能性は常に気に留めておくべき」(同書より)だと言えるでしょう。
私たちの感情を脳波データによって科学的に解明し、『フキハラ』の実態や対処法、心の不調の影響について解説している同書。自身の不機嫌な感情を持て余している人、他人のネガティブテレパシーを受けやすい人は、一読してみてはいかがでしょうか。
※「感性アナライザ」は株式会社電通サイエンスジャムの登録商標です。
[文・鷺ノ宮やよい]
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