復旧した只見線を往復乗車。車窓&ビューポイントから絶景を望む
出かけるときは列車か自転車に限るという老舗のフリーライター荻窪圭です。
まずは、2022年10月1日、只見線が全線復旧いたしました。おめでとうございます。
以前、『びゅうたび』で只見線を訪れたときは、まだ2011年の豪雨による橋梁流失からの復旧がなされておらず、「会津川口駅―只見駅」間は代行バスの旅でした。それが復旧したとなると、おめでとうの意も込めて訪れないわけにはいきません。今回は、無事全線復旧した只見線から秋の渓谷を楽しむ列車旅です。
東京駅
東京からとき309号で浦佐へ
只見線は、新潟県にある上越線のJR小出駅と福島県にある磐越西線のJR会津若松駅をつなぐ135.2kmの長いローカル線。所要時間は片道4時間12分。それを一気に乗ろうというのですからかなり酔狂です。
出発はJR東京駅。乗り換えがぎりぎりになるのは避けたいので早めの出発です。駅で写真も撮りますし。8時52分発の上越新幹線「とき」309号。これでJR浦佐駅へ。
約1時間40分で浦佐駅着。ここで11時4分発の上越線に乗り換えて只見線始発駅の小出駅へ向かいます。
浦佐駅ではさっそく「只見線全線運転再開」をアピールするのぼりが出迎えてくれました。
浦佐駅から小出駅へは2駅。到着予定は11時12分ですが、小出駅を出発する次の只見線は13時12分のため、乗り換えに2時間ほどあきます。次の便でも間に合いますが、ぎりぎりは避けたいですからね。
小出駅
小出駅で旧国鉄カラーの車両に遭遇
小出駅に到着したら、すでにホームには只見線の車両が。しかも2両編成のうち1両は国鉄カラーのラッピング。幸先良いですね。
発車まで時間があるので地図を開いてみると、駅の裏手にある川の土手や線路を越える陸橋の上から只見線のホームが見えそうなので、ちょっと散歩です。
陸橋から見た小出駅。左手のホームが上越線で、右端に停車しているのが只見線です。後ろには山が見えます。
小出駅裏手にある土手から見た只見線のホーム。出発までまだ2時間あるのにもう人が!
気がついたら発車まで約30分。慌ててホームへ向かうと、すでに行列ができていました。平日ですが大賑わいです。
車内はラッシュ時の通勤列車のような混雑。取材は2022年10月末でしたが、全線復旧してからずっと人気なのだそう。座れないので、ドア横の景色がよく見えるところに立ちました。只見線の車窓は「川がつくった渓谷」がミソですから、地図を見て、川がよく見えそうな側を選びます。
只見線全線
復旧した只見線の橋梁を走る
いよいよ出発。長いトンネルを抜けて福島県側に入ると、まもなくJR只見駅です。では、復旧した只見線の車窓を楽しみましょう。
車窓からは時折「おかえり只見線」と書かれたのぼりが見え、沿線では多くの人が手を振ってくれます。只見線を見たら手を振ろうというキャンペーンが行われていたようです。
豪雨で流失した橋梁は3つあり、最初に通過したのは「第七只見川橋梁」です。
続いて「第六只見川橋梁」です。黄色い新しい鉄骨が美しい。
※編集部注:三角形になるように接合した骨組み
実はこの第六只見川橋梁、2011年の豪雨では完全に流失し、こんな状態でした。この写真は、前回の取材時に代行バスから撮影したものです。
次の「第五只見川橋梁」は、鉄橋のトラス部分は残りましたが、その先が流失してしまいました。こちらも代行バスから撮影した写真がありました。
残ったトラス部分はそのまま採用されたようです。第五只見川橋梁を通過中は徐行してくれたのでゆっくり撮影できました。
午後は雲が出てきて車窓からの眺めもいまひとつでしたが、日が沈み、やがて4時間12分の旅も終わりを迎えます。
この日は会津若松駅周辺の宿に宿泊しました。
会津若松駅
早朝の会津若松駅は霧の中
翌朝、今度は会津若松駅から小出駅方面へ向かいます。2日かけて往復という贅沢な旅です。
が、早朝の会津若松は濃霧。不安になって地元の方に尋ねると、早朝の濃霧は晴れて暖かくなるきざしだそう。一安心ですね。
ホームで朝7時41分発の只見線を待っていると、濃霧の中、入線してきました。濃霧の只見線もよいものです。
さすがに、早朝の只見線は混雑もなくゆったり座れます。
話に聞いたとおり、出発して1時間もすると霧も晴れ、気持ちのよい晴天に。只見線ならではの澄んだ水ときれいな青空と色づきはじめた山々。特に水面の美しさが目をひきます。
なぜ、只見線から見える川は、山間部なのにこんなに澄んでいてきれいなのか。それはダムがあるからだそう。只見川には、何カ所かの水力発電用のダムがあり、水を堰き止めているので流れが緩やかで水量が多く、そのため澄んでいるのです。
緩やかな流れで、船遊びをしている人もいました。
会津川口駅
会津川口駅の時刻表が復活していました
約2時間かけてJR会津川口駅へ到着しました。今日はここで途中下車。会津川口駅は、只見川のすぐ脇にホームがあり、車両と川と山を一度に楽しめる絶景駅です。
我々が乗ってきた車両は、会津川口駅から団体貸切となり(地元の小学生の社会科見学だそうです。奥会津の歴史と文化を学びにいくとか)去っていきました。
会津川口駅から只見駅方面へは1日に3本しかなく、次の便まで5時間ほどあります。でも、代行バスが走っていた頃の2017年の時刻表と比べてみると格段の違いです。あのときは下り方面がなかったのですから。
食堂おふくろ
会津川口名物はカツカレーミックスラーメン?
ちょっと散歩したあとは早めのランチ。訪れたのは、駅からすぐの場所にある「食堂おふくろ」です。
ここの名物は「カツカレーミックスラーメン」。メニューには「迷物ではありません。名物です」と書かれています。
カツとカレーライスとラーメンのミックス。みんなの好きなものを全部ひとつにしました、という感じですが、20年ほど前、ある常連さんのリクエストに応えてつくられたそうです。
お店の人がレクチャーしてくれたとおり、混ぜないで上からいただきます。するとこれが、すごく美味しい。正直、びっくりしました。ポイントはメニューにあるようにライス、ラーメン、カレー、カツが層になっていること。
カツを食べ、カレーが絡んだ麺をいただいたところで、最後にシメのごはんが現れるという変化があるのです。ぺろっと平らげてしまいました。
奥会津ビューポイント かねやまふれあい広場
徒歩で行ける只見線ビュースポット
おなかいっぱいになったら只見線撮影タイムです。
会津川口駅から国道252号を線路に沿うように会津若松駅方面へ10分ほど歩くと、「奥会津ビューポイント かねやまふれあい広場」があります。駅から歩ける撮影スポットとして見逃せません。
狙いは12時29分、会津川口駅発の会津若松駅行。まだ30分以上ありましたが、もう車両はホームで待機していましたから、すすきの隙間からそっと撮影。
広場へ向かって歩いて行くと、その手前にある上井草橋のたもとにカメラを持つ人がいるではありませんか。なぜこの時間に? と思って遠くを見ると、こちらへやってくる車両が。心の準備ができていなかったので焦りました。
これはラッキー。会津鉄道の「お座トロ展望列車」が、特別に只見線を走る日だったのです。
無事カメラにおさめたあとは、かねやまふれあい広場に到着。澄んだ水に反射する遠くの山、そしてその手前の大志集落という絶景に2両編成の只見線。待った甲斐がありました。
特に、奥に見える大志集落とその後ろの山が一緒に水面に映っているさまは絶品です。
川口トンネル付近
駅近くに只見線の穴場スポットを発見??
絶景を堪能したら会津川口駅へ戻ります。
実は、駅の少し南側にもうひとつ只見線スポットを見つけました。駅から只見駅方面へ国道252号を少し歩くとトンネルがありますが、その手前、右に入る旧道が残っています。その旧道から只見線の野尻川橋梁がすぐ近くに見えるのです。駅から徒歩5分もかかりません。
地元の方によると、眺望を遮っていた木々を思い切って伐採したんだとか。だから見通しがよくなったのですね。穴場スポットかもしれません。
会津川口駅
会津川口駅から小出駅へ
再び、会津川口駅へ戻ります。
やがて、15時29分発小出駅行の只見線が到着。混雑はしていましたが、昨日ほどではありません。
午後の陽射しを浴びて赤く染まった秋の山々が青や緑といい感じに交じって日本の秋を感じさせてくれます。
日は暮れ、17時47分、只見線は小出駅へ到着。往復で約8時間半という只見線の旅も終わりです。
片道4時間12分と聞くと長いのですが、絶景が繰り返される車窓を見ていると退屈しません。本数が少ないので不用意な途中下車はできませんが、きれいな空気と絶景を楽しむだけでも価値があります。
東京駅
掲載情報は2022年12月20日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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