今年9月、総務省統計局は日本の総人口は前年に比べ82万人減少している一方、65歳以上の高齢者は3627万人と前年に比べ6万人増加したと発表。75歳以上は、総人口に占める割合が15%を超えており、これは団塊の世代が2022年から75歳を迎え始めたと考えられると発表した。
このような背景の中、三井住友信託銀行は「人生100年時代を楽しく、安心安全に過ごす」をモットーに、さまざまな終活ソリューションを提供している。11月15日(火)には都内にて記者発表会が開催。相続資産の現状に関するレポートが発表された。
冒頭では、三井住友信託銀行 人生100年応援部部長 谷口佳充氏が登壇。人生100年時代の現状が紹介された。年間死亡数が140万人を超え、「大相続時代」を迎えたと言われる日本。高齢者の死亡数は、団塊世代の死亡時期が近づくことと相まって、2040年前後には160万人弱でピークを迎えると予測されている。
「高齢者の死亡数の増加は、相続という形で日本の家計資産の世代間移動を加速させている」と谷口氏は指摘。親世代と子世代の居住地域が異なれば、地域をまたぐ資産移動が発生し、これにより家計資産の地域分布が変化するという。
同行は、様々な統計をもとに今後30年程度の間に相続される金融資産総額は650兆円弱となると試算。このうちの2割にあたる、125兆円が地域をまたいで移動するとのことだ。
相続により、家計資産の地域間移動が膨らむ要因のひとつは、「地方に住む親と三大都市圏に住む子」という組み合わせが多いことにある。日本では、1960年代~70年代前半にかけ、地方から三大都市圏への大規模な人口移動が発生した。集団就職者を中心に15年間で1,700万人以上が転入。とりわけ東京圏1都3県は、980万人という現在の東京23区の人口に匹敵する転入者を迎え入れた。三大都市圏への転入ラッシュは高度経済成長とともに終了するが、東京圏では1990年頃まで毎年50万人前後の地方からの人口流入が続いた。
調査部 主任調査役 青木美香氏は「『地方に住む親×三大都市圏に住む子』が多いのは、高度経済成長期の名残り。東京圏に関しては、就業機会や大学の数による継続的な流入にも起因する」と述べた。
相続発生時の家計資産の「県外流出率」と「地域外流出率」を軸に整理すると、以下のようなパターンが考えられる。
A:県外流出率が高く、多くは地域外へ……青森県、山形県、新潟県、福井県、奈良県、和歌山県、愛媛県など
B:県外流出率は高いが、同一地域内の他県への移動に留まり、地域外への流出は比較的少ない県……岩手県、秋田県、岐阜県、佐賀県、長崎県など
C:県外流出率、地域外流出率ともに相対的に低い……京都府、大阪府、沖縄県、兵庫県、北海道、宮城県、愛知県など
D:地域外流出率が極めて低い県…東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県
さらに青木氏は相続に伴う、今後の家計資産地域間移動について、3つの要素を指摘した。1つ目は「親も子も東京圏内」という組み合わせでの相続が増加していく可能性が高いこと。2つ目は、相続で地方から大都市圏に資産が移動した後、「相続を伴わず」に資産が再移動するパターンが増える可能性があること。3つ目は、子世代に遺産を残さないという意向を持つ人が増加する可能性があることだ。
さらに近年話題を呼んでいる“終活”についても言及された。NTTファイナンスが実施したアンケートによると、親世代も子世代も終活に対し興味はあるものの、実際には話す機会が少ないという回答が目立った。また子世代が「親に実施しておいてほしい終活」という問いには「口座や金融資産の管理」「相続税対策」「自宅や持ち物の整理」という回答が上位を占めた。
近年では女性の3人に1人が認知症にかかると言われ、判断能力の低下によって、預貯金から払い出しが行えなくなるケースも目立っている。一方で老後に備えた資産運用への関心がありながら、認知症に伴う資産凍結を懸念し、資産運用に踏み出せない人も増えつつある。
このような課題を背景に、同行は「人生100年応援信託〈100年パスポートプラス〉」を開発。これは「三井住友信託ファンドラップ」による中長期的で安定した資産運用機能と、「人生100年応援信託〈100年パスポート〉」の財産管理機能を一体的に提供するものだ。資産運用と財産管理ニーズを同時に実現することで、多様化するニーズに応えていく。
さらに「おひとりさま信託」で現代の終活ニーズに応える。これは単身者や家族と離れて暮らす人など、“おひとりさま”向けに開発された金融商品だ。万が一の時の死後事務や相続・寄付の準備をトータルでサポートするもので、2019年にスタートした。契約時に、身の回りに関する希望を書く「エンディングノート」を預かり、遺言代用機能で資金を管理する。充実のサービス内容が評判を呼び、累計契約件数は年々増加しているとのことだ。
100歳を迎えることが決して珍しいことではない現代社会。未来に向けて豊かに暮らすためにも、信託銀行の活用は良き選択肢の一つかもしれない。