資産吸収のブラックホール? 大資産移動時代の相続課題とは

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「人生100年時代」と謳われるようになった昨今、相続資産問題も社会的に大きな課題となる。その現状について解説された「三井住友信託銀行 相続資産・終活ソリューション記者発表会」が11月15日に実施。人生100年時代の現状について、三井住友信託銀行株式会社 人生100年応援部 部長の谷口佳充氏から語られた。

信託の持つ本質は「繋ぐこと」であると言う谷口氏は、財産を託す人と託される人、利益を受け取る人という3者関係の繋がりが、人口ピラミッドの変化により日本の総人口において高齢者が占める割合が伸び続けている中、終活に直結するとのこと。長生きすればするほど認知症の出現率も増加していくため、認知症有症者の増加にともない2021年には254兆円とされる資産総額が2025年には286兆円となる見込みで、保有財産も急増しているという。

三井住友信託銀行の人生100年応援信託〈100年パスポート〉では、認知症と診断された場合、手続代理人が代わりに払い出すことができるなど、年金資金を払い出せなくならないように対策。さらに人生100年応援信託〈100年パスポートプラス〉では運用資産の継続運用も行えるなど、サービス拡充にともない累計契約件数も伸びを見せているとのこと。

続いて人生100年時代では、大相続時代における多死時代を迎えて大資産移動時代になっていくという動向について、相続による家計資産の地域間移動に関して、同調査部 主任調査役 青木美香氏から詳細が語られた。人が亡くなった場合の相続について、現在は年間死亡者数140万人のうち、高齢者の死亡数が130万人を超える大相続時代となっていることが解説。この推移は年々増加傾向で、2040年にピークがくると予想されている。

基本的には親から子への資産相続となるが、問題となってくるのは、親と子が住む地域が異なれば地域をまたぐ資産移動が発生する点だ。地方に住む親と大都市圏に住む子どもという図式が確立しており、相続適齢年代で約1200万組と推定されている。親が亡くなり、その資産が地方から都市部へと流動する資産移動の膨らみが課題となっているのだ。

特に埼玉・千葉・神奈川を含む東京圏は他地域より58兆円を吸収しており、ブラックホール並みの資産吸収力を見せているというデータが示された。地域内でも流動は県ごとに傾向が異なるが、地方中核都市を包含している都道府県は県外流出率、地域外流出率も低い傾向に。

今後は地方Uターンなどによる相続を伴わない資産移動の可能性や、子ども世代へ資産を残さずに地元の社会貢献活動などに活かされる可能性なども考えられるが、同時に多様な個別ニーズが発生することでケースごとに寄り添った資産相続のサポートが求められるだろうという結論となった。

地方にとって(資産移動は)打撃はあるものの東京圏にまとまること自体は悪いことではないとしつつ、日本全体に還元されればと青木氏は個人的に語り、「三井住友信託銀行 相続資産・終活ソリューション記者発表会」は終了した。

身近な問題でありながら、なかなか家族であっても話す機会が少ない相続や終活問題。現状の課題を認識しつつ、個人や家族単位でそれぞれの答えを出して最適な形で相続ができるように、普段からコミュニケーションをとって考えていきたい。

三井住友信託銀行公式サイト:
https://www.smtb.jp/

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