『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』セドリック監督&マキシム監督・ビッケブランカに聞く!「楽しいエンターテイメントで問題提起をする」
フランスで公開されたフランス映画初日動員数 No.1(2022 年 4 月 13 日フランス公開時)と大ヒットを記録、実在するゲイの水球チーム《シャイニー・シュリンプス》をモデルに、仲間と絆と成長を描いたロードムービー『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』が大ヒット上映中です。
前作に引き続き本作の監督・脚本を務める、セドリック・ル・ギャロさん、マキシム・ゴヴァールさんのお2人と、世界共通エンディングテーマ「Changes」を手掛けたアーティストのビッケブランカさんにお話を伺いました!
――今日はよろしくお願いいたします、ガジェット通信の藤本と申します。
ビッケブランカ:Gadget Tsushin is an “Otaku” website. Do you know “Otaku”?
セドリック監督&マキシム監督:NO.
ビッケブランカ:“Otaku” means something close to geek or nerd.
セドリック監督&マキシム監督:I see! I understand very well, thank you!
――ビッケさん、素敵なご紹介をしていただきありがとうございました! まずはビッケブランカさんの楽曲が全世界共通エンディングテーマになっているということで、本作をご覧になっていかがでしたか?
ビッケブランカ:すごく面白かったです。エンターテイメントとして面白いのに、前向きな問題提起があって。様々なキャラクターが、華やかなまま色々な問題を解決してくれるという、すっごく楽しい映画に携われて嬉しいです。
セドリック監督:ビッケさんが、言ってみれば日本の初めての観客なわけですよね。初めての観客にそう言っていただけて嬉しいです。こうしてコラボをした方がそうやって褒めてくれたことが何よりも嬉しいです。
マキシム監督:地球の裏側に住んでいて、文化も違う方々に受け入れられているということが嬉しいです。多くの方にこのテーマが、この作品が共感してもらえるのだなと思います。ビッケブランカさんには素敵な曲を作っていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。
ビッケブランカ:Merci.
――ビッケさんがおっしゃった様に、本作は問題提起もしながら、エンターテイメントとして楽しいというのが素晴らしいですよね。
マキシム監督:考え方として、僕は映画は楽しいものでなくてはいけないと思っているので、エンタメであることってとても大切だと思う。皆さんに観てもらえなかったら、伝えたいメッセージも受け取ってもらえないわけだからね。
――監督が人間を描く時に一番大切にしていることは何でしょうか?
セドリック監督:「このキャラクターどこかで見たことあるな」ということは避ける様にしています。これだけ映画があるわけですから、全く見たことのないキャラクターを作り出すことは難しいのですが、それでもどこかオリジナリティある要素は足したい、驚きの要素は付け足したいです。そして、僕個人的には、奇抜なのだけど繊細なキャラクターが好きです。ペドロ・アルモドバル監督の作品のキャラクターは超奇抜で超繊細ですよね。それは『シャイニー・シュリンプス!』とも通じると思います。
マキシム監督:僕は「こういう人いるよね」という人物を描くことがとても好きです。出会ったことはないけれど知っている公的な人だったり、昔どこかで会ったことがある様な気がする人だったり…。そういう人を描こうとしています。
――フランスでは、前作の『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』がきっかけで、LGBTQ+のあり方が議論されることも増えたそうですね。私一個人からすると、フランスはそういった議論はすでに発展している印象があったので意外でした。
セドリック監督:他の国から比べたらフランスは進んでいるとは思っています。同性婚が認められていますし、同性同士で子供を持つことも出来る。他の国からしたら進んでいる部分も多いと思いますが、進んでいるからといって問題がないわけではありません。同性愛の中でもみんなが同じ考えではないし、同じ活動をしているわけではありません。この20年で、フランス国民の考え方もすごく変わったと思いますし、だからこそこの映画を撮りたいし撮れると思いました。
この映画で伝えたかったのはLGBTQ+のポジティブな主人公です。フランスでも、まだまだ権利を得るための戦いは続いていくと思いますが、何よりも楽しい作品を作りたかったんです。
マキシム監督:本作で語られているのは、性の問題だけではなく、アイデンティティの問題だと思うんです。そういう部分では、フランスもまだまだ理解が足りない部分があります。“違う”人たちと共存しながら調和を持っていくという課題はたくさんあります。例えば、一つの問題提起をしたいという方が運動を起こしたとして、問題提起自体は素晴らしいのだけれども、その運動が極端な発言をしてしまったり、寛容さを求めるあまりに自身が寛容さを無くしてしまうこともある。やっぱりバランス感覚が大切ですよね。
ビッケブランカ:今、マキシムの言葉を聞いてその通りだなと思いました。僕も音楽を作る時は、ネガティブな感情があるとして、それを「ネガティブのままにはしない」ということが自分一人の中のルールとしてあるんです。ポジティブで楽しい音楽を作りたいと思っているので、だからこそこうして映画と音楽のシナジーが築けたのかなと思います。
マキシム監督:そのとおりですね、ありがとう!
ビッケブランカ:予告で僕の音楽を聴いて、いいねと言ってくれたかたがすごく多いので、2人が大切に作った映画に目を向けてもらえるきっかけの一つに、この曲がなればありがたいなと思っています。
セドリック監督:僕は本当に音楽が好きで、映画を観ていてもすぐ「この曲なんだろう」と気になるから、曲を検索してくれるアプリ「Shazam」を映画館で起動しているよ。ビッケさんの曲もそうやって見つけて欲しいな。
マキシム監督:映画館でスマホを使うのはマナー違反だよ!(笑)
――音楽つながりで。本作はとても音楽の使い方が素晴らしい作品ですが、皆さんが好きな映画音楽、音楽映画はありますか?
ビッケブランカ:『プラダを着た悪魔』です。「Suddenly I See」(KT Tunstall)はもちろん、すべての曲が好きです。ジャミロクワイの楽曲であったり、U2の曲の使い方も素敵で、知らない曲もあったので、調べました。映画を観て、唯一サントラを調べたのはこの映画くらいかもしれません。
マキシム監督:『インターステラー』の音楽が好きです。すごく大きなオルガンの音の使い方が好きで、よく車を運転しながらスーパーハイな気分になっています。
セドリック監督:まず好きな作曲家でいうと、マックス・リヒターです。あとはテクノミュージックが好きなので、テクノが流れている作品には興味が湧きます。
――今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!
撮影:オサダコウジ
タイトル:『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』
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