盛岡三大麺に盛岡さんさ踊り。小岩井農場も巡る盛岡満喫の旅
温泉と地元食をこよなく愛す、旅ライターの野水綾乃です。今回の目的地は岩手県盛岡市です。「盛岡さんさ踊り」ってご存じですか? 東北の夏祭りのひとつで、毎年8月1日~4日に開催されるのですが、それが春から秋にかけては毎日のように楽しめる宿が盛岡市内にあるらしいのです。
盛岡といえば、わんこそば、盛岡じゃじゃ麺、盛岡冷麺の三大麺も食べたいところ。お祭りと温泉とグルメ、さらに歴史ある名所や工芸にも触れて、盛岡の魅力を2泊3日で味わい尽くしてきました。
東京駅
東北新幹線「はやぶさ」で盛岡へ
JR東京駅から東北新幹線「はやぶさ」で盛岡に向かいます。JR大宮駅を出るとJR仙台駅まではノンストップ、そして次はもうJR盛岡駅。約2時間10分の道のりです。仙台~盛岡間の車窓には広大な田んぼが多くて癒やされます。
盛岡駅
盛岡駅構内をちょびっと探索
盛岡駅の新幹線ホームから改札に向かって階段を下りると、「盛岡さんさ踊り」の様子を表現した和紙人形がありました。さんさ踊りのことをあまり知らなかったのですが、色鮮やかなそろいの浴衣の踊り手と太鼓奏者がパレードするお祭りのようです。本番の祭りも迫力あるのでしょうが、この和紙人形の数にも圧倒されます。
改札を出て「わんこロードはこちら」の看板につられて行ってみると、岩手県の観光PRキャラクター、わんこきょうだいで埋め尽くされた楽しい通りがありました。メインキャラクターの「そばっち」は、わんこそばと国内生産量1位の岩手の漆(うるし)を使った漆器がモチーフ。こくっち、とふっち、おもっち、うにっちのほかのきょうだいも各エリアの特産や郷土料理を表しています。
東家 駅前店
駅前のお店でわんこそばにチャレンジ
ランチは、盛岡三大麺のひとつ、わんこそばに挑戦するため、明治40年創業の老舗わんこそば店「東家 駅前店」へ。市内に4店舗(※)ありますが、駅前店は盛岡駅南口から徒歩約3分で立ち寄りやすい。わんこそばは先着順となり、昼の部は早めに受付を終了する場合もあるので早めに来店したいところ。
※編集部注:東屋4店舗のうち、わんこそばが食べられるのは「東家 駅前店」と「東屋 大通り店(本店仮店舗)」の2店舗です(2022年9月現在)。詳しくは店舗までお問い合せください
わんこそばはお給仕付きで、何杯食べても料金が変わらない食べ放題システム。椀を積み重ねるか、算木と呼ばれる数え棒を置いていくかで料金が変わります。値段は高くなりますが、椀を重ねるほうが最後に記念写真も撮れておすすめ。
注文すると、まずはセットの薬味が運ばれてきました。マグロの刺身、なめこおろし、出汁で煮込んだ鶏そぼろ、刻んだ野菜を青唐辛子と米麹で漬けた一升漬など。
そして隣にはひと口ずつ椀に盛られたそばを持ったスタッフがスタンバイ。「はい、じゃんじゃん。はい、どんどん」と掛け声でもり立てながら、そばを放り込んできます。
温かいつゆと一緒に入ったそば。たくさん食べるには、なるべくつゆを飲まずにそばだけをすするのがコツだそう。途中で薬味を投入し、なめこおろしそばやとろろそばに味変するとまたモリモリと食べられます。
そう言いながらも次第に飲み込むのが苦しくなり、女性の平均30~40杯を超えたところでストップ(男性の平均は50~60杯だそう)。無理せず、薬味と一緒に美味しくいただき、記録は51杯。15杯でかけそば1杯分らしいので、それでも3杯ちょっとは食べた計算に。
ホテル紫苑
盛岡の奥座敷、つなぎ温泉の宿へ
お腹も十分過ぎるほど満たされたところで、今宵の宿があるつなぎ温泉へ向かいます。予約した「ホテル紫苑」は雫石川にあるダム湖・御所湖のほとりにあるお宿。盛岡駅西口15時発の送迎バス(中学生以上は片道200円・事前予約制)が便利で、25分ほどで到着します。
127室の客室はすべて湖向きで、晴れた日は岩手山も見えます。この日は大雨の影響でやや濁り気味だったのですが、それでも風のない時間帯は湖面が鏡のようになり、空や周囲の山々を美しく映していました。
宿で開催される「盛岡さんさ踊り」のイベントは夜8時すぎから。それまで温泉に浸かったり、食事をしたり、思い思いに過ごします。
ホテル紫苑の大浴場は男女とも2か所ずつあり、温泉ソムリエとしても長年活動している私としては、「南部曲り家の湯」が気に入りました。なぜなら自家源泉のアルカリ性単純温泉がこちらの浴槽だけかけ流しで注がれているから。湯の硫黄の香りもしっかりと残っています。
夕食はハーフバイキング形式で、カツオのたたき、蒸しホヤ酢、ズワイガニ、握り寿司と海の幸が豊富。食事時間はあらかじめ指定することができます。
ホテル紫苑
いよいよ、盛岡さんさ踊りのイベントへ
ホテル紫苑のロビーで20時15分から始まる「つなぎでつなぐ 盛岡さんさ踊り」。2022年4月下旬~10月下旬は毎日、冬季は毎週金・土曜日に開催され、近隣の宿泊施設を利用している宿泊者も無料で観覧(※)できます。
※編集部注:詳しくは、つなぎ温泉観光協会までお問い合せください
高らかに響く笛の音とテンポよく打ち鳴らされる太鼓の音、そして激しくもしなやかな踊り手たちの舞。「サッコラ チョイワヤッセ」という合いの手が心地よいリズムを生み出しています。この「サッコラ」は漢字で「幸呼来」と書き、「幸せは呼べばやってくるよ」という意味だそう。
さんさ踊りを見たあとは、もう一度温泉に浸かってから寝ました。
小岩井農場
小岩井農場で歴史と牧場グルメを堪能
2日目は宮沢賢治ゆかりのスポットとしても人気が高い「小岩井農場まきば園」へ。つなぎ温泉からは直通で行ける路線バスがないため、タクシーで向かいます(約20分)。
小岩井農場でぜひとも訪れたいのが、入場口から歩いて5分ほどの上丸牛舎です。1891(明治24)年に創業した小岩井農場。ここには明治から昭和初期に建てられた牛舎やレンガサイロなどが残されていて、創業当時に思いを馳せることができます。
上丸牛舎に4つある牛舎は、古いもので1908(明治41)年に建てられたものも。いずれも現役で使用されていて、牛の年齢や状態により分かれて飼育されています。
入場口エリアに戻ってランチにしましょう。園内には5か所の食事処があり、小岩井ファームキッチンでは農場産の素材を使った軽食やソフトクリームがいただけます。
農場産の小麦を使ったピッツァは耳までもっちもち。トッピングのチーズも自家製で、日替わりの「シェフの気まぐれ季節のピッツァ」は農場産の野菜もたっぷり。専門店を訪れたかと思うほどの味わいです。
小岩井農場ではそのほか非公開の森林エリアを巡る「ファームトラクターライド」などのガイドツアーもおすすめで、空きがあれば当日申し込みも可能。盛岡駅行き路線バスは本数が限られているので、あらかじめ帰りの時間をチェックし、それまでのんびりと過ごしましょう。
不来方じゃじゃめん
夕食はシメまで楽しい盛岡じゃじゃ麺
盛岡駅行きの路線バスで約30分。盛岡駅に着いたら駅前のホテルにチェックインし、少し時間をおいてから夕食に出かけました。
盛岡駅から徒歩10分、繁華街・大通エリアに盛岡じゃじゃ麺の専門店「不来方(こずかた)じゃじゃめん」はあります。
こちらの盛岡じゃじゃ麺、他店にはない特徴がこのチャーシュー。ジューシーで柔らかいチャーシューが4枚も入っています。
県産の小麦と大豆でつくる平麺はもちもちとした食感。現主人が先代より店を受け継ぐ際、茹で時間を少し短めにし、独特の弾力が生まれるようにしたのだそう。
そしてひき肉、シイタケ、純正ゴマなど30種ほどの具材の旨みが詰まった味噌が全体を優しくまとめます。「盛岡じゃじゃ麺は3回食べないと美味しさが分からない」と言われるそうですが、初めてですでにトリコです。
盛岡じゃじゃ麺のもうひとつのお楽しみが、シメのチータンタン。麺と具をひと口残し、そこに卵を割り入れてかき混ぜ、温めたそば湯と味噌を注いでもらいスープにします。これ、汗が止まらなくなりました。「ショウガなど内臓を温める素材が入っていますからね。風邪気味の時に食べるという常連さんもいますよ」とご主人。冬寒い盛岡にじゃじゃ麺がある理由が分かったような気がしました。
盛岡手づくり村
究極の1杯!? 自分でつくる盛岡冷麺
最終日3日目は「盛岡手づくり村」へ。盛岡駅からつなぎ温泉行きのバスで約30分。
南部鉄器や南部せんべいなど、盛岡の伝統工芸やお菓子の14の工房があり、職人の技を間近で見たり、手ほどきを受けながらものづくり体験ができたりします。
ここで楽しみにしていたのが、盛岡冷麺づくり体験ができる「冷麺づくり教室」。盛岡冷麺の有名店が手掛ける「ぴょんぴょん舎 冷麺工房」があり、つくった麺をその場で味わうことができるのです。所要時間は約20分。お昼前後の時間帯は事前予約がおすすめです。
さっそく麺づくりに挑戦。冷麺の粉には馬鈴薯(ばれいしょ)でんぷんが7割で小麦粉が3割、そこに少しの重曹が入っているそう。熱湯を加え混ぜます。
しっかり力を入れ、耳たぶ程度の柔らかさになるまでこねます。
生地を製麺機で押し出し、大きな鍋で茹でます。
茹で上がった麺をすぐに冷水で洗い締め、ぬめりを取ると、白っぽかった麺が半透明に。
麺の水気をよく切り、あとは盛り付け。特製牛チャーシューやゆで卵、キムチなどのトッピングをのせ、国産牛肉と牛骨と鶏ガラを煮込んだぴょんぴょん舎自慢のスープをかければ完成。
もうこれお店の味、いやお店以上かもしれない! そのぐらい弾ける麺の食感が抜群でした。「店でも同じ工程でつくりますが、1人前ずつこねることはないので、体験工房の冷麺はどこで食べるよりも美味しいはずです」とスタッフ。
店舗用のキムチやスープをつくる工場も併設していて、ガラス越しに見学できるようになっています。
盛岡手づくり村の敷地内には、江戸後期に建てられたものと言われる南部曲り家の展示も。ほかにも展示資料室や喫茶コーナー、おみやげ館(展示即売室)などがそろい、1日ゆったり過ごせます。
ぐるっと遊盛岡駅店
盛岡駅に戻り、岩手モノのお土産探し
盛岡駅行きのバスに乗り、駅に戻ったらお土産を買って帰りましょう。
盛岡駅2階の南口改札近くにある「ぐるっと遊盛岡駅店」は、駅構内にあるお店のなかでも岩手のものにこだわった土産店。盛岡三大麺や宮古湾の海の幸などのグルメや銘菓だけでなく、南部鉄器などの工芸品も充実しています。
買ったのは、先ほど冷麺づくり体験をした「ぴょんぴょん舎」の盛岡冷麺と、JR東日本おみやげグランプリで銀賞にも選ばれたことがある「早野商店」の宮古湾産牡蠣の佃煮。
お祭り、伝統工芸、そして独自の麺文化。さまざまな盛岡の文化に触れた3日間でした。なにせ東京から新幹線で2時間ですから、あの味がまた食べたい、あの工芸品が欲しいな、と思い出してまたちょくちょく足を運んでしまうかもしれません。
東京駅
掲載情報は2022年10月11日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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