国内外から約200組の独創的なアートブックを制作する出版社、ギャラリー、アーティストらが集結し、作り手たちが本の魅力を伝える。TOKYO ART BOOK FAIR 2022開催
10月27日(木)から10月30日(日)の4日間にわたり、東京都現代美術館にて第12回TOKYO ART BOOK FAIR(以下、TABF)が開催。
今年は、国内外から約200組の独創的なアートブックを制作する出版社、ギャラリー、アーティストらが集結し、作り手たちが本の魅力を伝える。
また今年で6回目を迎える、ひとつの国や地域に焦点を当て出版文化を紹介する企画「Guest Country」にて特集するのはフランス。
同国の豊かな出版文化を多角的に紐解く展示のほか、ボッテガ・ヴェネタ、資生堂による特別展、昨今アートブックシーンで注目を集めるリソグラフ作品をご紹介するプログラムを企画している。
そのほか、ゲストを招いてのトークショーやワークショップ、作家によるサイン会などのさまざまなコンテンツを通して、進化を続けるアートブックのいまを体験いただける場の創出を目指す。
GUEST COUNTRY vol.6 FRANCE
毎回、ひとつの国や地域に焦点を当て出版文化を紹介する企画「Guest Country」では、これまでに スイス、ブラジル、アジア(中国、韓国、台湾、シンガポール)、アメリカ、オランダを特集した。第6回を迎える今年の「Guest Country」では、フランスをフィーチャー。世界の中でも 独立系の書店や出版社の数が多く、文化的にも重要とされてきたフランスは、歴史的にも、そして今でも本が身近にある貴重なものとして存在している。多様性があり、それぞれに個性が光る独自の 出版文化の魅力を7つの展示、トークイベント、ワークショップなどを通して紐解く。
Exhibition: Yvon Lambert : 60 years with Art
優れた慧眼を持つことで知られるイヴォン・ランベール(1936年生まれ)は、1967年よりギャラリーを構え、現代においてもフランスの現代美術界を牽引し続けている。著名なアートコレクターでもあるランベールは、2000年にアヴィニョンにてプライベートコレクションを一般公開し、2012年 にそのすべてのコレクションをフランス政府に寄贈した。1974年のピカソ以来、最も重要な美術品の寄贈と言われている。2014年、20世紀と21世紀初頭を代表するアーティストたちの展覧会を50年間にわたり開催し続けたギャラリーを閉廊。その後、彼が愛するパリ3区にブックストア、展示スペース、出版社を併設したより親密なスペースをオープンした。ランベールは、キャリア初期からアート出版の重要性を理解し、1970年代にローレンス・ウィナー やソル・ルウィットによるアーティストブックを制作したほか、ルイス・ブルジョワ、河原温、クリ スチャン・ボルタンスキー、ジュゼッペ・ペノーネを始めとするアーティストとの密なコラボレーションを通して限定版「bibliophilie」をリリースしている。現在の出版プログラムは、主に詩集、写真集、プリントなどで構成されている。TABFでは、イヴォン・ランベールのこれまでと現在の活 動を通して、フランスのアートブックシーンの歴史とその進化を紹介。
Exhibition: “Bouquinistes”
TABFの会場には、ブキニストを模したユニークな什器に専門性の高いセレクションの書籍が並び、 フランスのアートブックの多様性と個性を体現。ブキニストとは、古本やポスター、絵葉書を販売する屋台のことで、セーヌ川沿いに軒を連ねる風景は、パリの風物詩のひとつ。アート、イラスト&コミック、写真、ストリート、ヴィンテージブックなど様々なジャンルにおける目利きのスペシャリストたちが、現地で話題のフランスのアートブック、ZINEやポスターなどをセレクトし、フェアのためだけのスペシャルな書店“ブキニスト”をキュレーションする。
Photography :Emilie Lauriola(sasori books主宰)
Illustration & Comic:Séverine Bascouert、Sammy Stein (アーティスト、雑誌『LAGON』主宰) Street:Thibault Choay(CLASSICオーナー) Vintage:Marco(ブキニスト) Mode:国際フランス出版事務局(BIEF)
Exhibition: Kidsʼ Reading Room
アート性の高いフランスと日本の絵本を自由に読むことができるKids’ Reading Roomは、TABF初となる子ども向けのコンテンツ。フランス最大級の絵本と児童書のフェア「セーヌ・サン・ドニ児童書見本市」による「Des livres à soi(自分のための本)」プロジェクトの一環として、子どもや大人を読書の喜びへと誘う、遊び心あふれる独創的なフランスの絵本が一堂に集まるほか、TABFに縁
のある日本人作家たちによる絵本も見ることができる。また、一部をアートブックやZINEを販売するTABFオリジナルの販売機「ART BOOK VENDING MACHINE」を用いて、絵本とのユニークな出会いを提供。会期中には、フランス人絵本作家のルーシー・フェリックス、アドリアン・パーランジュによる親子で参加可能なワークショップの開催も予定している。
協力:セーヌ・サン・ドニ児童書見本市、国際フランス出版事務局(BIEF)
Exhibition: 72 Saisons à la Villa Kujoyama / ヴィラ九条山 七十二候
フランスがアジアに保有する主要なアーティスト・イン・レジデンス施設として、工芸、デジタル・ アート、視覚芸術、パフォーミングアーツなどを含む幅広い分野のクリエーターを受け入れているヴィラ九条山は、今年、1992年の創立から30周年を迎える。ヴィラ九条山は、同施設に滞在したアーティストやクリエイターのプロジェクトを通し、日本の伝統及び現代文化に関わるアーティスト、職人をはじめとしたさまざまな機関との架け橋となり、強い絆を築き上げてきた。その実績から、ヴィラ九条山は、日本においてのみならず、フランスにおいても、日仏両国の交流と創作活動を先導する場として広く知られている。今や世界的に活躍する数多くのレジデントたちに、インスピレーションを与えるとともに、原点に立ち戻り、自らの仕事を見つめ直す機会をヴィラ九条山は提供してきた。 TABFでは、この30年の間にヴィラ九条山に滞在したレジデントたちの、アートブックセレクションとともに、230人近くもの寄稿者によって語られる開館から今までの軌跡を記した記念出版(ガリマール出版社)を紹介。さらに同施設で滞在したまたは滞在中のレジデントアーティストによる展示として、美術家バディ・ダルル(2021年度レジデント)の作品「Ordonator」と、編集者、版画家、美 術印刷の専門家セバスチャン=エステバン・デプラ(2021年度レジデント、現在ヴィラ九条山に滞 在中)の作品やコラボレーションプロジェクトをフィーチャーする。
ヴィラ九条山は、京都市に所在する、フランスのヨーロッパ・外務省の文化機関。アンスティチュ・フランセ日本の支部の一つとして活動し、主要メセナのベタンクールシュエーラー財団とアンスティチュ・フランセの支援を受けている。
アンスティチュ・フランセ日本は、在日フランス大使館直属の文化機関。2012年9月にフランス 大使館文化部と東京日仏学院、横浜日仏学院、関⻄日仏学館、九州日仏学館が統合して誕生。東京、 横浜、関⻄(京都/大阪)、九州(福岡)、そして2019年からは沖縄(那覇)の5支部(6都市)を 拠点に、フランス政府公式機関としてフランス語講座を開講し、フランス発の文化、思想、学問を発信している。
Exhibition: agnès b. loves art !
これらの作品は、人生の経験、感情の共感、または単純な繋がりというものを代弁してくれます。どうしてアートは人の心を捉え、帰属意識を高めるのでしょうか。私の目的は、この宝物を自分のものにすることではなく、受け入れて、大切にして、育てることです。
ー アニエスベー
⻑年にわたり、アニエスベーは膨大な数の現代アート作品を収集しており、そのコレクション数は現在5000点近くに及びます。極めて多様な人びと、グループ、カルチャーの中で、アニエスと親しい関係性、または偶然の出会いによって形成された彼女のコレクションは、他に類をみないもの。
TABFにてアーカイブを展示するアート紙『ポワンディロニー』は、1997年にアニエスベーと現代美術家クリスチャン・ボルタンスキー、現代美術キュレーターのハンス=ウリッヒ・オブリストの会話をきっかけに誕生した。毎号、ゲストアーティストが紙面を使って自由に作品を展開し、不定期に発行されている。このユニークなアートフリーペーパーは、世界中の美術館、ギャラリー、書店、学校、映画館、カフェそして、全世界のアニエスベーショップでおよそ10万部が、“拡散”というアイディアの下で無料配布されている。
Exhibition: Three Star Books, Paris are artworks
パリを拠点とするThree Star Booksは、第一線で活躍する現代作家のアートブックやエディションを数多く手がける出版社。2007年にクリストフ・ブータンとメラニー・スカルシグリアによって設立され、マデリーナ・クゥアータが制作における監修を行っている。「アーティストがすべて」という信念のもと作られたアートブックやエディションは、まさに本というプラットフォームを用いた現代アートといえるだろう。彼らにとって「本」の定義とは常に変化するものであり、「アーティストブック」という言葉も、最終的な成果物がその概念や物理的な制約にとらわれ過ぎないために、ゆるやかに解釈する。アーティストのビジョンにできる限り近づけるために、蓄積されたノウハウを活かしながら、あらゆる技術、可能性を探求した結果生まれた印刷物は、多くの人々を魅了する。TABFでは、ラファエル・ローゼンダールによるペインティングを大胆に用いて、空間そのものがアート作品となるようなインスタレーションを展開する。これまでのアーカイブの中から、今回はマウリツィオ・カテラン、サイモン・フジワラ、ライアン・ガンダー、ガブリエル・クリ、ジョナサン・モンク、ラファエル・ローゼンダール、田島美加、リクリット・ティラヴァーニャによる貴重な アートブックを展示。
Perrotin Store
ペロタンは、1990年にフランス人ギャラリストのエマニュエル・ペロタンがパリで開廊。2012年の香港を皮切りに、2013年ニューヨーク、2016年ソウル、2017年東京、2018年上海、2022年ドバイ、そしてソウルに2番目のギャラリースペースをオープンした。そして2020年には、パリ、ニューヨークに続く、3店舗目となるブックストアPerrotin Storeが東京に誕生した。TABFでは、版画、カタログ、限定コラボ商品などのアーティスト・グッズなどを数多く取り揃えるPerrotin Storeより、フランス人アーティストによるものを主にセレクトする。フェア会期中に、ペロタン東京で日本初個展を開催するリオン出身のアーティスト、リオネル・エステーヴのサイン入り書籍とポスターも展示販売する予定。
ZINEʼS MATEエリア
TABF 2022は、出展ブースが4つのエリアに分かれている。その中のひとつであるZINEʼS MATEエリアは、個人で活動を行うアーティスト、出版社を主な対象としている。 “ZINEʼS MATE” は、2009年に開催された第1回TOKYO ART BOOK FAIRのタイトルであり、当時の運営チームの組織名。 本エリアのディレクションは編集者である黑木晃、デザインはアートディレクター、グラフィックデ ザイナーの前田晃伸が担当。出展者選考においては、原点回帰の思いも込めて新規出展者を積極的に選出している。新たな才能とアイデアが集まるZINEʼS MATEエリアに注目。
TOKYO ART BOOK FAIR 2022
会期:2022年10月27日(木)17:00-20:00
2022年10月28日(金)- 30日(日)10:30-19:00
会場:東京都現代美術館
住所:〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1
公式サイト:https://tokyoartbookfair.com/
入場料:一般 1,000円(税込) *事前予約
チケット販売は10月半ばよりスタート予定。公式サイト、SNSにて詳細をご案内いたします。
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