「ヴォイド オブ ニッポン 77」展 -戦後美術史のある風景と反復進行-


河原温 
制作年:1958 年 材質:インク・紙 サイズ:608×449mm Courtesy of NAGOYA GALLERY



三島喜美代《Comic Book 21–S》
制作年:2021年 サイズ:180×145×150mm Courtesy of MEM



赤瀬川原平「あいまいな海について」案内状
制作年:1963年 サイズ: 220×162mm 材質: 印刷物 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE


8月15日(月)より表参道のGYRE GALLERYにて、『ヴォイド オブ ニッポン 77』展が開催中。


フランスの哲学者ロラン・バルト(1915〜1980)は、「表徴」が溢れている中心のない空虚な日本に注目し、それを「意味の帝国」に対し「表徴の帝国」と表現した。天皇、都市、女形、すき焼き、礼儀作法、パチンコ、学生運動も表徴であって、意味から解放された日本文化の自由度を描写した。そして、「意味の帝国」に対し「表徴の帝国」は、西欧的な「意味」への脅迫的な執着からの解放という捉え方を提示した。日本文化は、記号群(シニフィアン)の連鎖が意味(シニフィエ)によって停止されることなく連鎖し展開していく。この「日本」の捉え方を別の角度によって反転すると「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残る」*2という自決する数ヶ月前に遺した三島由紀夫(1925〜 1970)の言葉が今の日本に反響する。ロラン・バルトと三島由紀夫の双方が捉えた日本の「空虚」を前提にして、現代活躍している次世代の日本の作家によって戦後美術家たちを逆照射(反復進行*1)し、意味から解き放たれた中心のない空虚な戦後美術史のある風景 を浮かび上がらせていく。
今年8月に太平洋戦争終結から77年が経過する。77年というのは明治維新から太平洋戦争終結までと同じ長さである。つまり、1868年から1945年までが77年間、そして1945年から2022年までが同じく77年間である。戦前と戦後の長さが同じになる。このような歴史的連続性を前提にして、「戦後美術史のある風景と反復進行」をテーマにした展覧会を企画した。
本展に出品される作品が、作品単体では完結されず時代を超えて反復から連鎖へ、そして転移していく様態を提示し、結果的に全ての出品作品は自ずと時代的連続性を表象することとなる。このことを本展では「反復進行」*1と呼んでいる。本展の構成趣旨は、「日本」の戦前や戦後の時代精神を担った作家と現代活躍している新たな世代を代表する作家へと連繫し、時間の連続性を浮かび上がらせ、さらに昭和、平成、令和を通してそれぞれの時代精神を対象化し、そしてわれわれが今後何処へ向かおうとしているのかを問いかけていくものである。


*1 反復進行 (独: Sequenz)とは、音楽用語の一つ。ある楽句を音高を変えながら反復させることをいう。ドイツ語「ゼクヴェンツ」(Sequenz)に由来して「ゼクエンツ」と も呼ばれる。
*2 1970(昭和45)年7月7日付の産経新聞夕刊に掲載された三島由起夫のエッセイ。




中西夏之《R・R・W-4ツの始まり-I》
制作年:2001年 サイズ:1901×2275mm 材質:油彩・キャンバス Courtesy of NAGOYA GALLERY



高松次郞《季刊藝術のための複合体》
制作年:1976年 サイズ35×390×270mm 材質:鉄・真鍮・布・針金 Courtesy of Yumiko Chiba Associates



大山エンリコイサム《FFIGURATI #89》
制作年:2013-14年 サイズ: 2110×5670mm 材質: アクリル性エアロゾル塗料・アクリル性マーカー・ラテックス塗料・墨・キャンバス Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art


ヴォイド オブ ニッポン 77 展 戦後美術史のある風景と反復進行
会期:2022年8月15日(月) – 9月25日(日) *休館日:8月22日(月)
会場:GYRE GALLERY 東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F 
Tel: 0570-05-6990 ナビダイヤル(11:00-18:00)

出品作家
河原温、三島喜美代、中西夏之 、高松次郞、 赤瀬川原平、三木富雄 、北村勲、北山善夫、青山悟、 金氏徹平、加茂昂、大山エンリコイサム、須賀悠介、MIKA TAMORI 、国民投票


主催:GYRE / スクールデレック芸術社会学研究所
企画:飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)

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