【インタビュー】Suspended 4th、走攻守揃った1stフルアルバムに死角なし「生のライブではなにかが起こる」

【インタビュー】Suspended 4th、走攻守揃った1stフルアルバムに死角なし「生のライブではなにかが起こる」

Suspended 4thが7月20日、PIZZA OF DEATH RECORDSより自身初のフルアルバム『TRAVEL THE GALAXY』をリリースした。録り下ろしの新曲や配信シングルはもちろん、以前からライブで披露されていた楽曲の初音源化や過去作品の再録バージョンに加え、ディープ・パープル代表曲のインストカバーなど、収録された全14曲はまさしく集大成と呼べる仕上がりだ。さらにDISC 2の『Parallel The Galaxy』にはアルバム収録曲のインスト音源が曲順を逆に収録され、4人の高い演奏力をじっくりと堪能できる。
◆Suspended 4th 動画 / 画像
メンバー個々の技量の高さと、彼らが持つ旋律の豊かさのバランスが絶妙に調和した作品が『TRAVEL THE GALAXY』だ。言い換えれば、スリリングな即興ジャムセッションが放つ膨大なエネルギーも、身体が思わず反応してしまうキャッチーさもポピュラリティも混在しているという意味で、まるで死角なし。事実、先ごろ出演した<SATANIC CARNIVAL 2022>や<京都大作戦2022>のステージの爆発力は圧巻だった。Suspended 4thの現在モードは確実に外側へ向いて、客席を引きずり込むパワーに溢れている。
BARKSではメンバー全員に『TRAVEL THE GALAXY』に封じ込められたサウンド&プレイの聴きどころについて、じっくりと話を聞いた。メンバー曰く「え、その音に気付きました?」「こういう話って楽しいです」と漏らしたインタビューは音の詳細に迫るものだが、そこから浮かび上がったのは、Kazuki Washiyama (G, Vo)、Seiya Sawada (G)、Hiromu Fukuda (B)、Dennis Lwabu (Dr)の人間的キャラクターでもあった。ぜひとも音源を聴きながら、彼らの飽くなきこだわりに触れてほしい。
   ◆   ◆   ◆
■各々が一番カッコいいと思うフレーズを弾いてる
■ただそれだけのこと。それこそがサスフォー
──1stフルアルバム『Travel The Galaxy』の制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?
Washiyama:テーマみたいなものは特になくて。今の自分たちがやれることをアルバムに収録しようと思っていました。
──では、アルバムのキーになった1曲はありましたか?
Washiyama:アルバム収録曲を決めて並べてみたときに、“もうひと押ししたい”と個人的に思ったので、PIZZA OF DEATHスタッフに「少し時間をください」とお願いして。そこから出来た曲が1曲目に収録した「トラベル・ザ・ギャラクシー」だったんです。今の自分たちを象徴するような曲で、アルバム制作の最後にそういう曲が作れてよかったと思います。
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▲Kazuki Washiyama (G, Vo)

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▲Seiya Sawada (G)

──出揃った曲に満足して“今回はこれでいい”と思わなかったことが、いい結果を生みましたね。アルバム『Travel The Galaxy』にはSuspended 4thの特色が色濃く出ていると思うんです。というのも、テクニカルなバンドにありがちな変拍子や凝った展開、長いソロなどを前面に押し出すのではなくて、キャッチーな楽曲にハイレベルなプレイを随所に盛り込んでいるから、カッコいい瞬間の連続になっています。
Washiyama:本当はすごく長いソロもやりたいし、変拍子もやりたいんですよ。でも、それだと聴いてくれている人が疲れてしまうし、今のシーンに合ってない。そういうこともあって抑制している感じです。まぁ、今後はそういうことを急にやり出すフェイズがあるかもしれないですし。
Sawada:今でもライブではソロを伸ばしたりしているので。本来8小節のギターソロが、その場のノリで64小節になったり。
──ノリで64小節!
Washiyama:元々インプロヴィゼーションが好きなバンドですからね。ライブのときにジャムができる余地を持たせた曲が『Travel The Galaxy』には入っています。
──その辺りは’70年代のハードロックバンドに通じるものがありますね。それに『Travel The Galaxy』は音楽的な幅広さを見せていることも印象的です。
Sawada:僕らはいろいろなことをやりたいバンドだし、収録曲はバラエティに富んでいながら、どれも気に入っているんですよ。
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▲Hiromu Fukuda (B)

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▲Dennis Lwabu (Dr)

──では、収録曲から各々の思い入れの深い曲を敢えてピックアップするなら?
Sawada:僕は「ANYONE」ですね。オールドロックな感じでストレートに始まるけど、Bメロで急にメジャースケールになって雰囲気が変わりつつ、強いサビがあるという流れがいい。それに歌詞にもやる気を感じるんですよ、“こいつらやる気だな”というのが猿にも伝わるんじゃないかな。楽曲としての成り立ちが「ANYONE」はすごくいい。
Washiyama:歌詞は今回、わかりやすく“俺たちやります”というものが多くて、特に「ANYONE」はそれをストレートに出しましたね。この曲はたしか、デモ自体が2年前くらいにあったから、作ったのは結構前で。2021年1月にデジタルシングルをリリースすることになって「もういい」と「ANYONE」を作ったんです。結果、デジタルシングルは「もういい」のほうを採用したんですけど、「ANYONE」は温めていたぶん、2年前のデモから展開の作り方とかを変えたりして。今のアルバムに入れるならこうだろうという感覚で作り直したことで、さらに良くなった曲ですね。
Fukuda:敢えて僕が1曲挙げるとしたら「Shaky」。僕は速い曲がとにかく好きなんですけど、特にこの曲は凄いことになっていて、自分でもライブで弾けるのかどうか(笑)。BPM125の16ビートだけど、体感はBPM250の8ビートという感じ。それくらい速い。演奏面でもイチオシです。今のリスナーが求めるスピード感はこういうものだと思うんですよ。だから、自分が好きな曲であると同時に、若い子に刺さる曲じゃないかなと思います。
Washiyama:「Shaky」も結構前に作ったデモから引っ張ってきた曲で、ぶっちゃけ僕はこれを「ライブでやりたいか?」と聞かれたら、あまりやりたくない。
Fukuda:しんどいから(笑)?
Washiyama:うん(笑)。速いし歌のキーが高い。Suspended 4thのジンクス的なものがあって。楽曲に対する意見やイメージが、僕と他の3人で“1対3”に割れることがあるんですよ。ところが、その“1対3”になる曲は、だいたいお客さんからの熱い支持を得ることが多い。「すごくカッコいい」とか「この歌詞はすごく刺さる」と言ってもらえるんです。なので、「Shaky」も“1対3”になったらライブでやるか、みたいに考えてたんだけど、そうなりそうだね。でも、「Shaky」はできるだけやりたくないんだよなー、まぁやりますけど(笑)。
Sawada:そうだね、もうこの曲でミュージックビデオも撮ってしまったので、背水の陣です(一同笑)。




Dennis:僕の思い入れのある曲は「ストラトキャスター・シーサイド ’22」。“’22”という年号をつけた既存曲のリアレンジバージョンですが、昔の曲も最新の形で再録してリリースできるSuspended 4thの強味が表れた曲というか。ボジョレーヌーボーみたいな感覚というか。その年毎に味わいが変わりつつも定期的に示すことができるという発想ですよね。振り返って’●年の「ストラトキャスター・シーサイド」は豊作だったみたいな。つまり、原曲となる「ストラトキャスター・シーサイド」には昔の曲なのにクリエイティビティがあるんですよ。
Washiyama:うちのメンバーはみんなシンプルに楽器好きで、「ストラトキャスター・シーサイド ’22」は、それをまさに体現しているんです。どういうことかというと、普通のバンドだったら曲を良くするために自分のやりたいフレーズを削いで、全員ができるだけ歌に寄せるアレンジを施すと思うんです。でも、Suspended 4thは全くそういうことがない。ボーカルの僕にとっては邪魔してくる感じだけど、彼らは邪魔しているとは思っていないから。自分が思う一番カッコいいと思うフレーズを弾いて、叩いている。ただそれだけのことで、それこそがSuspended 4thなんだなって。そういう中でも「ストラトキャスター・シーサイド ’22」は、“自分のプレイを聴いてほしい”というメンバーそれぞれの意気込みを強く感じさせる曲ですよね。
──メンバー同士が信頼し合ったうえで火花を散らすような感覚はSuspended 4thの大きな魅力です。“’22”はどんなアレンジにしようと?
Dennis:今回は全然変えたよね。そもそも出だしがベースソロではなかったし。
Fukuda:ソロといえばソロだったけど、以前は“♪デケデケ デケデケ”だけ。
Dennis:ベースソロ始まりは、YouTube企画『YouTube Music Sessions』で「ストラトキャスター・シーサイド」を演奏したときからのアレンジで、そこから定番化したんじゃない?
Washiyama:そうだね。
◆インタビュー【2】へ
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■フィジカルとロジカルを兼ね備えているのは
■Kazukiがジャズの手法を持っているから
──もうひとつ言えば、「ストラトキャスター・シーサイド ’22」の音源ではベースをダビングして2本鳴らしていませんか?
Fukuda:えっ!? 気づきました?
Washiyama:そこに気付いてくれると嬉しいな。しかも、クリックなしで弾いたソロに「もう1本ダビングしてくれ」とオーダーしたんですよ。Suspended 4thはレコーディングとかミックスのエンジニアを僕が担当しているので、よくムチャぶりするんですけど、そのときのHiromuはちょっと嫌そうだった(笑)。
Fukuda:ははは。ノンクリックでソロを弾いた後に、Kazukiから「全く同じように弾ける?」と言われたんです。「無理です」と答えたんだけど、「じゃあ、いこうか!」と録ることになり。途中まではわりと完璧に弾けているけど、後半から崩れてグチャグチャになっていくんですよね。
──でも、その感じがいいんです。
Fukuda:そうなんですよ。その生々しさがいいし、グチャグチャが飽和したところで“♪デケデケ デケデケ”と入ってくるのがカッコいい。
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▲Kazuki Washiyama (G, Vo)

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▲Seiya Sawada (G)

Washiyama:その場で思いついたことだけど、すごくいい感じに仕上がってよかった。僕の中で特に印象的な曲は「BIGHEAD (Rev.2)」。既存曲ですけど、エンジニアリング的にも、ギターサウンド的にも挑戦できたかなと思う。ギターはエフェクターとか全部かけ録りして、3回弾いたバッキングを3本全部鳴らしているという。だから、バッキングは3回とも一発録り、ドラムとベースもほぼ一発録り。そこにSeiyaにアディショナルしてもらうというか、「なにかアイディアがあったら入れてください」みたいな録り方でした。
Sawada:で、ギターで“ふりかけ”をのせたみたいな感じ(笑)。
Washiyama:でも、そのふりかけが相当いい仕事をしている。
──同感です。皆さんが挙げてくださった曲以外にも注目曲は多いんですよ。たとえば、ロマンチックなインストナンバーの「Venetzia」やDennisさん作詞作曲でボーカルも務める「Tell Them」などはアルバムのいいアクセントになっています。
Washiyama:まず「Venetzia」は3年くらい前に作ったから、これも結構昔からある曲ですね。テーマメロディーのイメージがイタリアのヴェネチアっぽかったので、「Venetzia」というタイトルにしました。この曲は完全に僕の趣味です。
──風景が思い浮かぶような曲ですよね。
Dennis:そう、Kazukiはこういう曲を好むイメージがありますね。僕はジャンゴ・ラインハルトがめちゃくちゃ好きなので、「Venetzia」みたいな曲も大好きです。
Fukuda:僕はこういう系統の曲も好きだけど、自分が一番やりたい音楽かと言えばそうではないので、いい機会をもらって便乗したという感じかも。
Sawada:僕もそうかな。「Venetzia」のような路線も好きですけど、自分のボキャブラリーの中にはないので、こういう曲を作れるKazukiをリスペクトします。Kazukiはジャズの学校に通っていたことがあるんですよ。Suspended 4thがフィジカルな部分とロジカルな部分を兼ね備えているのは、彼がそういう一面を持っているからで。




Washiyama:たとえば「Betty」は、ゆったりした6/8拍子で始まって、いきなりサンバノリのサビに変わるじゃないですか。それも、ジャズではよくある手法というか。3拍子から16ノリにスイングするメトリックモジュレーションはよく使われるんです。そういうジャズの様式をポップスに入れてみたのが「Betty」ですね。
──「Betty」の頭の展開は本当に驚きました。ジャズの手法を巧みに採り入れることも、それを違和感なく演奏できることも。
Washiyama:メンバー全員に対して、めちゃめちゃ有り難いと思っているんですよ。「Betty」で言えば、ウォーキングベースを弾いてもらってるんですけど、全部の音を僕が指定したフレーズで。
Fukuda:そもそも僕の中にウォーキングベースの引き出しがないから、全く馴染みのない運指だったんですよ。だから、もう歯を食いしばりながら弾いたウォーキングベースです、これは。
Dennis:それでも、苦労して弾いてるように聴こえないところがいいよね。
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▲Hiromu Fukuda (B)

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▲Dennis Lwabu (Dr)

──Dennisさん作詞作曲でボーカルを取られた「Tell Them」も、実にスマートなナンバーです。
Dennis:僕の曲を1曲入れてくださるという流れになったんですけど、アルバム収録曲のトータルバランス的にバラードという感じではないなと思って。ミドルテンポの箸休め的な感じになったらいいなというところから曲作りをスタートしました。スケール感の大きさも意識しましたね。スタジアムバンドの曲でうわっ!ってなる感じがあるじゃないですか。売れてる売れてないにかかわらず。その感じを出したかったんです。
──そう思ったときに、いわゆるスタジアムロック的なシンガロングではなく、ゴスペルの壮大さを持ってくるというところがセンスいいですね。
Dennis:ありがとうございます。
──それに、サビのゴスペルコーラスの後ろで鳴っているコード進行が絶妙です。
Washiyama:いわゆる3度抜きですよね。3度の音を抜きつつ途中でギターがマイナーの音にいったり。アディショナルしているコードトーンも、その上でいろいろやっている。でも、Dennisは全部感覚でやっているんだよね?
Dennis:そう。僕自身はなにが起きているのか、理論は全然わかってない(笑)。
Washiyama:彼が面白いのは音楽理論のことはなにも知らないけど、こういう曲がつくれるところなんです。
──Washiyamaさん自身、Dennisさんが歌うことに対してはどのような考えを? 抵抗とかはないんですよね。
Washiyama:むしろDennisが歌うところを見せたくて、僕が提案したんですよ。Dennisの歌はかなりソウルフルですよね。Suspended 4thにはそういう匂いも薄くあって、ソウルとかR&Bとかが好きな人も聴いてくれている。そこにDennisの歌があれば、よりソウルやR&Bに濃い人たちがSuspended 4thをディープに支持してくれるんじゃないかなと思ったんです。
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■ベースラインはどの曲も難しいけど
■「Shaky」はSuspended 4th史上一番
──では続いて、『Travel The Galaxy』のプレイ面についてお聞きしたいのですが、これも個々にポイントを挙げていただけますか?
Sawada:僕が一番印象的だったのはディープ・パープルのカバー「Burn」ですね。この曲のリードはKazukiが弾いているんですよ。僕はギターソロのバックで凄く速いブリッジミュートの刻みをやっているんです。
──あのブリッジミュート、素晴らしいですね。
Sawada:はい(笑)、すごく気に入っています。PIZZA OF DEATHに所属している僕らはパンクも好きなので、そういう感じも出したくて。で、今回入れるなら「Burn」の間奏だなと。いかにカッコいいブリッジミュートができるかという部分では、気持ちがギターキッズに戻りました。
──このパンク感がいいと思います。ただ最初は、「Burn」でリードを弾いているのがSawadaさんで、バッキングがWashiyamaさんだと思ったんですよ。
Sawada:たしかにKazukiはボーカル&ギターなので、僕がリードギターだと思い込んでいる人も多いと思うんですけど、テクニカルだったりエモーショナルなリードギターは基本的にKazukiが弾いています。僕はテクニカルなプレイには興味がなくて、シンプルであればあるほどいい。一番良い状態はギターを弾いていないときで、両手を上げてイェーッ!てやっているときが、ギタリストが一番カッコいい瞬間だと思っているタイプです。今回はKazukiがめちゃめちゃギターソロを弾いているし、なんなら「Tell Them」はDennisがギターを弾いています。




──ということは、「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」「Shaky」「KARMA」辺りのスリリングなソロがSawadaさんでしょうか?
Sawada:まさにそうです。尖っていたり、はみ出しているソロを良しとする美学が僕にはあるんです。僕の中にはストーリーがあるけど、それを決め打ちで演じないというか。その瞬間、ゾーンに入って弾くという感覚だから、1stテイクでOKということが多いんです。あとは、キャリキャリキャリッというようなギターサウンドとか、ワウでブシャーッといわせたりするようなオルタナティヴ感があるギターは、だいたい僕です。
Fukuda:僕は先ほど同様、プレイ面でも「Shaky」が真っ先に浮かびますね。Suspended 4thのベースラインはどの曲も難しいけど、この曲はSuspended 4th史上一番。しかも、すごくフィジカルが求められるんですよ。そういう意味でも難易度が高いです。
──相当速いうえに1音1音がクリアに聴こえることがポイントですが、ちなみに「Shaky」は指弾きですか?
Fukuda:そうなんです。実は、最初にデモを聴いたときはピック弾きしようと思ったんですよ、速過ぎるから。そうしたら、メンバーから「え、ピックなの?」「ピックなんか使っていいと思ってるの?」みたいな圧力が。結果、ピック弾きが許されず、めちゃめちゃ練習しました(笑)。
──先ほどおっしゃってたように、ベースプレイヤーにはコピーしてもらいたいですね。
Fukuda:ベースキッズに対する僕からの挑戦状みたいな、“弾けるもんなら弾いてみてよ”という気持ちがあります。コピーしてもらえれば、かなりスキルアップできると思うんですよ。僕自身、「Shaky」をめっちゃ練習したおかげで「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」のサビの終わりに出てくる速いフレーズとか、すごくラクに弾けるようになりましたから(笑)。
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──なるほど。ドラムプレイ的にはいかがですか?
Dennis:僕も、アルバム収録曲で一番なにかを成し遂げた感があるのは、「Shaky」なんです。ドラムって太極拳に近いと僕は思っていて。腕から指先まで、流れるような動きをどう伝えるかということを意識しているんです。だから、無闇に腕を振ったりせず、ピアノを弾いているような感覚で叩いているというか。各指をドラムセットの太鼓やシンバルに配置しているという感じです。ライブでできるだけ疲れないようにということを考えていたら、そこに行き着いたんですね。「Shaky」はそういう叩き方を最大限に活かせた曲といえます。
──手数の多いドラミングが特色になっていますが、ああいうアプローチはどうやって落とし込んでいるのでしょう?
Dennis:それはなんとなく、なんですよね。
Washiyama:「自分のドラムは歌」だとよく言っているよね。
Dennis:そうだね。楽曲のグルーヴ感に寄り添ってメロディーをつけている感じ。僕は細かい音符で埋めていくドラマーしか知らなかったんですよ。それこそ一番最初に影響を受けたドラマーがディープ・パープルのイアン・ペイス。彼といえばシングルストロークの速さですよね。あとは、ザ・フーのキース・ムーン、ジミ・ヘンドリックスのミッチ・ミッチェル。しばらく、それしか聴いてない時期があったくらい。僕は、もともとジャズ畑だったけどロックバンドに入ってしまったドラマーが好きなんです。


──わかります。ではWashiyamaさん、歌に関して挙げるとすれば?
Washiyama:既存曲ですけど「INVERSION (Rev.2)」を歌いこなせるようになったことは自信につながりましたね。最後のフェイクはハイE♭まで上がるんですよ。“こんなハイトーンが出るんだ!?”と自分自身、そこまでいけるようになったことがわかって嬉しかった。あとは、「トラベル・ザ・ギャラクシー」のキーも結構高いんですけど、自分が歌いたい声域がだいぶ安定してきたことが、今回のアルバムで一番手応えを感じているところかもしれない。
──声域の広さに限らず、リズム感の良さも光っています。
Washiyama:それは最近常に意識しています。音程よりもグルーヴのほうが大事だなと思うようになったんですよ。ピッチが合っているけどリズムのない歌よりも、音程が多少甘くてもリズムにはまっている歌のほうが気持ちいいから。最近はグルーヴのあるボーカリストは少ないので、自分はそこを押し出していきたい。なので、メトロノームに対して自分の歌をどうするかというところは練習していますね。
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■音源を聴く以上のものがライブにある
■その時その場所でしか体感できない
──Suspended 4thはメンバー全員が高い技量を有していながら、今回は特にボーカルを軸にしたアルバムに仕上がっていることも大きな魅力です。さて、『Travel The Galaxy』は唯一無二といえるSuspended 4thの魅力を堪能できる一作になりました。アルバムのリリースに加えて、9月から始まる全国ツアーも楽しみです。
Sawada:僕らも楽しみにしています。さっき、「Betty」の展開が凄いという話が出ましたけど、ライブはもっとえげつない変わり方をしているんですよ。ですが、今回のツアーは音源再現の最低ラインを守ったライブにするつもりで。暴れ過ぎず、即興を楽しみにしている人の期待にも応えつつ、というバランスのいいショーをお届けできると思っています。
Fukuda:そういう意味では、今までのSuspended 4thのライブとはまた違った感じになると思います。アルバムの再現性というところでは、やっぱり鍵になるのは「Shaky」ですよ。
一同:今日のHiromuは「Shaky」の話しかしてない(笑)!
Fukuda:ははは。それくらいの曲なんですよ、「Shaky」は。それに今回のアルバムでは、今まで以上にベースアプローチの幅が広がったし、シンセサイザーとか新たな音も導入しているんです。足技とかやることも増えたので、ベースプレイヤーが僕らのライブを観ると、すごく楽しんでもらえると思う。
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Dennis:身体の姿勢とか所作を守ったドラムで、ツアーを切り抜けたいなと思っています。もちろん「Tell Them」も披露します。今までもライブで歌うことは何度か経験してますし、楽しみにしていてほしい。
Sawada:「Tell Them」はDennisがギター&ボーカル、ドラムはKazukiが叩きます。できたら、Hiromuと僕もパートを入れ替えたいねという話をしていて(笑)。「Tell Them」はそういうノリで披露できたら面白いですよね。
Washiyama:実は、僕はドラムのほうが好きで、「ドラムを叩いているときのほうがいい顔をしている」と言われるんですよ。Dennisはギターのほうが好きだから、ギターを弾いているときのほうがいい顔をしているという(笑)。
Dennis:生き生きしているよね、2人とも(笑)。
Washiyama:そうそう(笑)。前回のシングルツアーから僕ら、仕込みを結構やるようになったんです。今までのライブはジャムの要素が強かったので、楽曲を演奏するというより、その場で起こり得る事故みたいなものを楽しむみたいな感じだった。ところが最近は、ボトムラインがある状態というか、ある一定レベルは確立した状態でライブに臨みたいという意気込みが、みんなの中にあるんです。だから、かなりしっかりとゲネプロをしていて、ライブ中にジャムるタイミングがすごく少なくなってきている。
──よりライブの見せ方がシャープでソリッドになっているということでしょうか。
Washiyama:そうかもしれないですね。最近はジャムが少ないことで、逆にその瞬間にすごく楽しさを感じていて、アルバムツアーでも“ジャムでなにを残せるか”を楽しみにしています。『Travel The Galaxy』というカッコいいアルバムができたので、それを再現することに重きを置くんですけど、ライブに来てくれた人には、音源を聴く以上のものがライブにあることを提示したい。生のライブではなにかが起こる、それはその時その場所でしか体感できないもの。それを味わってほしいし、そこにハマッてほしいですね。
取材・文◎村上孝之

■1stフルアルバム『TRAVEL THE GALAXY』

2022年7月20日リリース
【2枚組(インスト盤付 2disk)】¥3,850 (incl. tax)
【通常盤(1disk)】¥2,750 (incl. tax)
【インタビュー】Suspended 4th、走攻守揃った1stフルアルバムに死角なし「生のライブではなにかが起こる」
▼disk 1:TRAVEL THE GALAXY
01. トラベル・ザ・ギャラクシー
02. BIGHEAD (Rev.2)
03. ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン
04. Shaky
05. Venetzia
06. Betty
07. KARMA
08. HEY DUDE
09. Burn
10. ANYONE
11. オーバーフロウ (Rev.2)
12. ストラトキャスター・シーサイド ’22
13. Tell Them
14. INVERSION (Rev.2)
▼disk 2:Parallel The Galaxy ※2枚組のみ
1. INVERSION (Instrumental)
2.Tell Them (Instrumental)
3.ストラトキャスター・シーサイド ’22 (Instrumental)
4.オーバーフロウ (Instrumental)
5.ANYONE (Instrumental)
6.Burn (Instrumental)
7.HEY DUDE (Instrumental)
8.KARMA (Instrumental)
9.Betty (Instrumental)
10.Venetzia (Instrumental)
11.Shaky (Instrumental)
12.ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン (Instrumental)
13.BIGHEAD (Instrumental)
14.トラベル・ザ・ギャラクシー
※disk 2はCD限定で配信は致しません

■<Travel The Galaxy Release Party>

2022年8月14日(日) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
open17:00 / start18:00
GUEST:G-FREAK FACTORY
▼チケット
4,500yen(taxin) +1drink
一般発売:7.9(土)10:00

■<Travel The Galaxy Tour>

09月25日(日) 東京 Spotify O-Crest
open17:30 / start18:00
10月01日(土) 金沢 AZ
open17:30 / start18:00
10月02日(日) 長野 松本 ALECX
open17:30 / start18:00
10月10日(月・祝) 京都 磔磔
open17:30 / start18:00
10月15日(土) 愛知 名古屋 BOTTOM LINE
open17:00 / start18:00
10月23日(日) 東京 恵比寿 LIQUIDROOM
open17:00 / start18:00
10月29日(土) 大阪 BIGCAT
open17:00 / start18:00
▼チケット
4,400yen(tax in)
※スタンディング
※ドリンク代別途必要
※整理番号順入場
一般発売:8.13(土)10:00
【OFFICIAL HP 先行】
7.22(金)20:00〜7.28(木)23:59

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