「ふわふわした羽根と鋭い爪のギャップが魅力」 スランプ中の絵描きと化け雀の女の子が出会うマンガがやさしい世界だった
うだつの上がらない絵描きの江垣さんの家の窓にぶつかってケガをした雀が、人に化けて恩返しをしようと奮闘するというストーリーがハートフルな梵辛さん(@sokusekimaou)のマンガ『チュンの恩返し』(webアクション)。単行本第1巻が2022年7月21日に刊行となり、雀のおチュンはもちろんのこと、さまざまな化け鳥が登場していてそれぞれに魅力的なのですが、ここでは第4話『雀とお散歩』を紹介します。
人に化ける雀の女の子と出会う漫画(7/7) pic.twitter.com/ww1JvShJkT— 梵辛@7月21日チュンの恩返し1巻、8月12日くちべた食堂2巻発売! (@sokusekimaou) June 4, 2022
「ん〜〜〜、ん?」と絶賛スランプ中の江垣さんのことをチュンピヨと心配そうに見ている雀。「おチュンか。初めて無事に来たな」と力なく笑う様子にふわっと人に化けて、「こもりきりは良くないです。少し外に…、出ませんか」と誘います。
近所の公園に来て、「気持ち良いでしょう。この辺でよく友達と遊ぶんです」というおチュン。木々からは鳥が泣く声が聞こえてきます。
「鳥はいいなぁ。自由そのもの」という江垣さんに、「そおですかねぇ」と苦笑気味のおチュン。「空が飛べても敵は多いし、地面も気が休まらない。暑いのもダメだし寒いのもダメだし、天気が荒れたら動けません!」と力説されて、「それはそうか」と納得した江垣さん。「そういう意味じゃ、人間のが自由かなぁ」としゃがみこみます。
「あんたさ、『人に好かれる絵』って…どんなだと思う」と唐突に聞かれて「へっ」となったおチュン。しばし考えて「さぁ…」「だよな」となります。ですが「ただ」と続けて、「鳥でも猫でもハムスターでも…何でもいいですが、動物は別に…、『人に好かれる計算』はしてないですよね。ただ素直に力いっぱい生きてる。…そんな姿に憧れ癒やされてるんだと思います」と話して……。
「私はあなたが、そんなふうに描いた絵ならきっと好き!」と笑ったおチュン。そのままバサバサと羽ばたきを残して飛び去って……。
おチュンを探してキョロキョロしますが、空で戯れる鳥たちの姿を見て何かを思いついた様子の江垣さん。スマホを取り出して、折りたたみ椅子と鉛筆、そしてイーゼルを通販で注文。まずは木々を描き込んで……。自由な姿を見せる雀。その生き生きとした姿を描いていきます。
本日発売のコミックス『チュンの恩返し』1巻を紹介する漫画を描きました!初めての人もぜひぜひよろしくお願いしますhttps://t.co/0SEQCiB7r5 pic.twitter.com/M9a7rjVW7c— 梵辛@7月21日チュンの恩返し1巻、8月12日くちべた食堂2巻発売! (@sokusekimaou) July 21, 2022
「人生の半分くらいをセキセイインコと過ごしていたこともあり、小鳥に対して強い思い入れがありました」という梵辛さん。『チュンの恩返し』では、「世間的にもっともポピュラーな小鳥の雀を主人公にしました。ここから主人公同士の存在に相互作用を出したかったので、人間側の主人公は鳥の絵描きさんにしました」と話します。
鳥を飼うことについては、「鳥は犬などと比べると一般的にしつけが難しく、何を考えているのかわかりにくい動物だと言われています。その無軌道な自由奔放さと、しかし一度人間を好きになると、べったり甘えてくる愛情深さのギャップが魅力的だと思います」と語り、「ふわふわした羽根と鋭い爪のギャップも良いです」とその魅力を力説します。
おチュンのほか、幼馴染のクワイヤちゃん、文鳥ママの文代さんや姉貴分のポポさん、鳥の学校のカーミア先生など、個性豊かな化け鳥が活躍するこのマンガ。梵辛さんによると、「主人公のおチュンをかわいがってもらえている声をよく耳にします。ただ、主人公として動かすためにクセの少ないキャラにしてあるので、尖った魅力という意味ではサブキャラクターのカーミア先生に対してのコメントを一番多く見かけます。自分でも気に入っています」とのこと。
「一番最初に試作版の『チュンの恩返し』を描いてTwitterに投稿してから、連載版に向けて試行錯誤しながら他の商業連載を複数やっているうちに、今回の単行本発売までになんと4年ほどの月日が経ってしまいまして、本当に発売する日が来たことについてまだ実感が薄い気持ちです」と現在の心境を明かす梵辛さん。「犬や猫と比べると鳥の可愛さは一般的に若干認知度が低いように感じています。それゆえにいったん擬人化というアクションを挟むことで、入口がとっつきやすいようにしているのですが、読み進めるうちにだんだん鳥の姿の方が可愛く見えてくるというコメントを頂くことが多く、とても嬉しく思っています」と話してくれました。
「1巻のラストの雰囲気が“最終回っぽい”とだいぶ言われてしまっているのですが、これはとりあえず1巻だけ手に取ってくださった人にもある程度まとまったお話を見せたかったためというのがあります。これからキャラクターをたくさん増やして、動物の社会と人間の社会の関わりを描いていけるといいなと思っております」と『チュンの恩返し』の今後の展開に意欲を見せる梵辛さんですが、2022年8月12日には『くちべた食堂』(ビームコミックス)の第2巻の刊行も控えています。
2022年8月21日には『ツイキャス』で第2巻刊行記念のオンラインイベント『喋処くちなし』が開催予定。アーカイブ視聴が2022年9月4日まで可能で、サイン入り単行本付き配信チケット(2500円)は2022年7月31日までの予約受付なので、ファンならばチェック必須。
また、『チュンの恩返し』『くちべた食堂』の連動フェアも予定されており、「ぜひぜひ楽しんでいただけると嬉しいです!」とのことなので、詳細の発表が待たれます。
『くちべた食堂』2巻発売記念「喋処くちなし」(ツイキャス)
https://twitcasting.tv/lateral_osaka/shopcart/170437 [リンク]
※画像はTwitterより
https://twitter.com/sokusekimaou [リンク]
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。
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