まるで『ジョーズ』のジャングル版? イドリス・エルバがモンスターライオンと戦う!『ビースト』監督インタビュー
『ジュラシック・ワールド』、『ジョーズ』でモンスターパニックの名作を解き放ってきたユニバーサル・スタジオが、アフリカの広大なサバンナを舞台に描く、手に汗握るサバイバ ル・アクション 、『BEAST(原題』が邦題『ビースト』として、2022年9月9日に日本公開することが決定!
医師ネイト・ダニエルズは、ふたりの娘たちを連れ、最近亡くなった妻と初めて出会った南アフリカへの長期旅行を計画。現地では狩猟禁止保護区を管理する旧友の生物学者マーティンと再会を果たす。しかし、密猟者の悪の手から生き残り、今やすべての人間への憎悪に満ちたモンスターライオンの出現によって、互いに生死と愛する者の命を賭けた死闘が始まるのだった…。
主演のダニエルズ役には、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』、『ザ・スーサイド・スクワッド 極 悪党、集結』など、話題の超大作で人気のイギリス人俳優イドリス・エルバ。監督には『エベレスト3D』 『2ガンズ』『ハード・ラッシュ』 など、人間の極限状態を臨場感とともに描く手法に定評のある、 バルタザール・コルマウクルが抜擢されています。
今回は、バルタザール・コルマウクル監督のインタビューをいちはやくご紹介します!
――まずは『ジョーズ』のジャングル版といった面白い設定について教えてください!
この作品に呼ばれて企画を聞いた時、南アフリカで撮影するというアイディアが大好きだった。ライオンの大ファンで、子供の時ライオンの写真を集めていた。母に「ライオンの映画を作るんだ」と言った時に写真を持ってきてくれたんだ。僕はそのことを忘れていたけど、「繋がりがあるぞ」と感じたんだ。
『ジョーズ』との大きな違いは、僕らはこの作品を「巨大なライオン」とか何かそういったものとして製作していない。これはリアルなライオンなんだ。確かに大きいけど、大き過ぎるものじゃない。そして、それはある意味、人間によって作り出されたんだ。密猟者と、それに対する怒りによってね。僕はその点をとても気に入っている。そこには、もし僕たちが自然を守らなかったら、いかに自然が我々を攻撃してくるかについてのストーリーなんだ。それは津波だったり、怒ったライオンだったりするんだよ。一度、自然をあるレベルまで乱したら、それは僕たちみんなに襲いかかってくる。それを乱した人だけじゃなく、それを守ろうとした人のところにも襲ってくる。それが僕が気に入っている、この映画の深いメッセージだよ。
また、観客にアフリカのジャングルのディープでエキゾチックな体験を、これまでとは違った手法で観せることで人々を楽しませたい。『愛と哀しみの果て』のようなものではなく、もっと極端な見方というか、ある部分にフォーカスしたやり方でね。
――監督として『エベレスト3D』で広く知られています。この映画も自然の脅威について描れているということですね。
そうだね、自然の脅威は人間によって作り出されていると言うよ。その土地を奪って、彼らのプライドを攻撃することによってね。我々はリアルな危険を作り出している。もちろん、それはとても複雑なことだ。だが、僕らの映画は、そういう意味での政治的な作品ではないけど、そういった意識やメッセージを世界に投げかけているんだ。それに僕は、日本人のような島国の出身だ。そこでは、常に自然なしには僕らは存在しないということを思い出させてくれる。僕らは自然なしには生き残れない。自然との付き合い方、自然と共存する方法を見つけることなしに、生き残ることは出来ない。そのことを我々自身が自覚し、またそれに敬意を払うことの両方が必要なんだ。
そうだよ、僕は自然愛好家だ。そういって良いね(笑)。自然は大きな部分を占めるんだ。僕は馬を持っていて、馬の繁殖をやっている。僕はアイスランドの高地、火山の周りに自分の馬に乗って旅行もする。僕はそういったことを敬服するし、尊敬しているんだ。
――私たちはみんな自然の一部ですものね。イドリス・エルバが主人公を演じています。もちろん、彼は素晴らしい役者で、大スターですが、この映画に、どのようにして、イドリスをキャストすることになったのですか?
僕はこれまでも、実現しなかったいくつかの作品で、彼に会っていたんだ。僕の意見では、素晴らしい役者でスターである人はほんの少ししかいない。イドリスは、その両方を持った人のひとりなんだ。彼は本当の映画スターで、とても素晴らしい役者でもある。この物語の大きな要素の一つは、父親が自分の娘たちを自分の人生に連れ戻そうとすることなんだけど、彼は母親(彼の妻)と死別している。彼は娘たちをこのアフリカ旅行に連れていくんだけど、それはその母親の村を訪ねる旅だ。そして、ある意味、彼が直面するビースト(野獣)はメタファー(隠喩)なんだ。それは人生で克服する最も大変なことの一つを表している。トラウマの後や離婚した後、困難な時期を過ごした後に、子供たちを自分の人生に取り戻して、新しい道と新しい未来を作り出すのは、人間としての経験、または向き合う上で、最も困難なことの一つなんだ。
――『ジャングル・ブック』の中で、イドリスはトラのシアカーンを演じています。大きなネコ科つながりですね!
そのことは知っていたけど、それはそういった類のコネクションではなかった。僕は『ジャングル・ブック』のストーリーが子供の時から本当に好きだった。僕は本気で自分がモーグリだと思っていたから。僕が実写映画を見た時僕は40代になっていたんだけど感動して子供のように泣いたよ(笑)。
――この映画の撮影で、なにか印象的なエピソードや面白い出来事はありましたか?
大変なアドベンチャーだったよ。本当にチャレンジングだった。なぜなら、南アフリカは、およそアメリカの3分の2ぐらいの広さがある。ロケハンでは、ケープタウンにいて、それからその国の反対側にあるリンポポまで行ったこともある。
最終的に全てのコーナー(四角い国の全ての端)で撮影した。ケープタウンの北、ナミビアの近くや、モザンビークに近いリンポポ、それからケープタウンでね。僕らは旅をしていた。でも、それがどのぐらい長大な距離か認識していなかった。僕は、観客が出来るだけ(この映画を)体験出来るようにするために、この旅から出来るだけ多くのものを手に入れたかった。家の外で象に会ったよ。象は僕を攻撃しようとしたけど、素晴らしかったよ。なぜなら、僕は象に立ち向かわないといけなかったからね。いろんな動物たちがいて、僕の部屋の外では毎晩、野生動物の吠える声が響いていた。ジャングルの中だからね。だから、僕らは、この映画(の物語)が起こりそうな状況にいたんだ。役者たち、特に若い役者たちは怖がっていたよ。ライオンがいたり、トイレの中や至る所に何かがいるんだ。そんな状況で仕事をしていた。
――それはすごいですね。全てをロケで撮影したんですか?スタジオの中とか、グリーンバックはなかったんですね。
マーティンの家の中だけスタジオで撮影した。いくつかピックアップ(短いショットの撮影)はやったけど、映画の約90%は、ロケで撮影されているんだ。理由のひとつには、僕がリアルにやりたかったのと、そういったジャーニーを観客に届けたかったからなんだ。でも同時に、VFXのライオンを作る必要があった。映画の中で、現実的にライオンに人々を襲わせることは出来ないからね。現実の基準線となるものを観客に与え、ライオンをはっきり描くかないといけなかった。それを出来るだけリアルにしないとね。映画が公開された時に驚くと思うよ。そこで描かれているディテールや素晴らしい仕事についてね。きっと素晴らしいものになると思うよ。
――ロケーションで撮影中、役者たちはどのようにその状況(ライオンの襲撃)に反応することが出来るのでしょう?なにか人形のようなものを使ったりするのでしょうか?
(CGのライオンを動かす)アニメーターたちがいるし、現場で、馬鹿げた(ライオンの)コスチュームを人々に着せて、走り回せるんだ。彼らは大きな頭をつけている。ライオンの大きさを表すためにね。僕はライオン(のシーン)を1テイクで撮影したからとても複雑なんだよ。タイミングとか全てのことがマッチして、正しくなっていないといけないからね。そしてその後、ライオンや人形、誰もいない空の絵(合成用のプレート)を撮影する。とても興味に深いプロセスで、僕はそういったチャレンジが大好きだった。
――観客にとってのこの映画の最大の見どころは、どういったものになると思いますか?
まず第一に、(観客は)リアルな場所にいて、様々なところを探検する。僕は観客たちを、役者たちと一緒にその状況に没入させるんだ。ワンショットでやることによって、彼らを常に(役者と同じ)視点に置くんだ。それによって、自分が南アフリカのサファリにいて、ライオンに襲われるような経験をすることになる。だから、もしあなたが、そういった体験をしてみたいなら、得ることが出来る。それと、ストーリーのエモーショナルな部分もとても重要だ。多くの人たちが、家族の問題や、自分の家族の辛い時、それを乗り越えようとすることに共感出来るよ。ポジティブな感情もあるんだ。
――映画の公開が待ち遠しいです。今日はありがとうございました!
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