『ハケンアニメ!』実写映画初挑戦の高野麻里佳インタビュー「役柄への共感」「好きを貫くための、それぞれの“正義”がある物語」

access_time create folderガジェ通 映画

直木賞&本屋大賞受賞作家 辻村深月の大人気小説を映画化。世界中が注目する日本のアニメ業界を舞台に、最も成功したアニメの称号=「ハケン(覇権)」を手にすべく奮闘する者たちの姿を描いた、“胸熱”お仕事ムービー『ハケンアニメ!』が5月20日(金)より全国公開中です。

一世一代の大チャンスを掴んだ新人アニメ監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女のライバルとなる天才ワガママ監督・王子千晴を中村倫也、瞳を振り回すつかみどころのない超クセ者プロデューサー・行城理を柄本佑、王子の才能に人生を懸ける作品命のプロデューサー・有科香屋子に尾野真千子と、実力派俳優陣集結の本作。監督は、『水曜日が消えた』(20)の吉野耕平。さらに劇中アニメの制作には、『攻殻機動隊』シリーズなどで知られるProduction I.Gをはじめ、日本を代表するアニメプロダクションやトップクリエイター陣が参加し、老舗アニメ制作会社・東映アニメーションが監修を手がけています。

本作で、人気声優・群野葵を演じているのが、本作で実写映画初挑戦となる高野麻里佳さん。自身も人気声優として数々の作品で活躍しながら、瞳監督と衝突しながらもアニメ作品を盛り上げる葵を見事に演じています。高野さんにお芝居に挑戦してのお気持ちや、『ハケンアニメ!』への想いを語っていただきました。

「葵ちゃんの強くてプロフェッショナルな所が好き」環境への共感も

――本作で実写映画初挑戦となりました。オファーを受けて、迷わずに映画の世界に飛び込めましたか?

声優業界でお仕事をさせていただいている私としては、顔出しでの実写映画出演というのは恐縮だな…という想いがまずありました。でも、そのちょっと不安な気持ちよりも「群野葵ちゃんというキャラクターを表現したい」という気持ちが強くなっていって。声優という役どころで無かったらもっと悩んで、もしかしたら挑戦出来ていなかったかもしれません。群野葵ちゃんという役に出会えたことに感謝です。

――ご家族やお友達など、周りの反響も大きかったのではないでしょうか。

たくさん反響をいただきました。映画への出演が解禁されるまでは家族にも内緒にしていたので、家族にはすごく勘ぐられていたんですよ(笑)。東映まで車で送ってもらう事が多かったので、「東映まで何しに行くの?」って。「いや〜、色々仕事はあるんだよ!」って誤魔化していました(笑)。ついに発表になった時には、すごく納得していました。ファンの皆さんも「ついに映画まで出るのか!」と驚いてくださったので、ぜひ映画館で楽しんでいただけたらありがたいです。

――台本を読んだ時、どの様な感想を持ちましたか?

アニメ業界の裏側ってなかなかスポットライトが当たらなかった部分でもあると思います。私も知らなかったことがあって、台本を読みながらすごく勉強になりました。群野葵ちゃんというキャラクターを掘り下げて考えていく時に、近年話題に上がることも増えてきた“アイドル声優”と呼ばれる方々がどういうお仕事をしているのか、という事も描かれていたので、身が引き締まる想いでもありました。

――葵さんに共感出来る部分も多かったですか?

すごく共感出来るキャラクターでした。葵ちゃんが「アイドル声優」と揶揄されていることへの悔しさだったり、でもそれを口にしないプロフェッショナルな強い所がすごく好きです。

――葵さんの劇中のセリフは号泣でした。

泣けますよね…! それを極めてやる!と思っても、なかなか口にすることも難しいのに、貫いている所がカッコ良くて大好きです。

――観る方によっても共感出来るキャラクターが違ったり、ささる言葉も違う所も魅力的ですよね。

みんなが「良い作品を作りたい」という気持ちでぶつかってしまうので、こっちの気持ちも分かるけど、あっちの気持ちも分かるんだよな…という展開の連続でした。好きを貫くには、どこが一番良い落とし所なのか?という事を全力でぶつけていて。それぞれの正義があるお話だなと感じました。

――映画の最初の頃の群野葵さんは、瞳監督との衝突もあり、なかなかもどかしいシーンが多かったと思います。

「監督の演出と上手く噛み合わない」という部分を表現したかったので、そこを意識しました。ただ、葵ちゃんは演技をすることが苦手なタイプでは無いと思うんです。葵ちゃんも好きでこの業界に入って、表現したいことがあった結果、監督とぶつかってしまった子だと思うので。「セリフを読むのが下手」とか「演技が苦手」というのではなく、瞳監督と噛み合わずに悩んでしまっているのだと。なので、瞳監督が指示することの真逆をやろうと思っていました。

――とあるシーンをきっかけに、グッと「群野葵の演じるトワコ(劇中キャラクター)」が輝いていきますよね。

瞳監督と葵ちゃんがお互いに歩み寄れた所が一番の成長だと思いました。(葵が)声優として劇的に力を上げた、というわけではなくて、監督と声優、お互いの立場への理解度が深まってのシーンだと思うので、私もすごく好きなシーンです。

▲劇中アニメ『サウンドバック 奏の石』

声優として「ドキドキしたシーン」とは?

――そんな瞳監督役の吉岡里帆さんとの共演はいかがでしたか?

もう、オーラがすごすぎて!(笑)普段私は映画やドラマを観る側なので、間近でお芝居を見ることができて、カットがかかる度に感動していました。吉岡さんは声優に対してリスペクトを持ってくださっていて、そんな皆さんと作品をご一緒出来て本当に光栄でした。吉岡さんに私のCDを送らせていただいたのですが、SNSにもアップしてくださって…。本当にお気持ちが優しい方なんだなって。

――アツいバトルが繰り広がれる作品ですが、現場はとても楽しい雰囲気だったのですね。

すごく楽しかったです。劇中アニメ『サウンドバック 奏の石』の上映会のシーンで、子供たちと一緒に声を出すシーンを撮る時に、監督さんが「スタート!」とカチンコを鳴らしたら、子供たちも「スタート!」と復唱してしまって。それがばっちりカメラに入ってしまい、すごく可愛いプチ・ハプニングがありました(笑)。

――先ほど「私でも知らないことがあった」というアニメ業界の裏側についてですが、特に驚いた部分はありますか?

本当なのかな?と驚いたのは、製作委員会がコの字になって「このアニメはどうするのか」と会議をするシーンです。誇張しているシーンなのか、コの字にまではならなくてもああやって会議をするのがリアルなのか。たくさんの人の時間とお金がかかっているのがアニメ作品なので、ドキドキするシーンでした。

――本作のエンディング曲である、ジェニーハイの「エクレール」にも群野葵として参加されていますね。

エンディング曲ということもあって、劇中で色々悩んで成長して吹っ切れた葵ちゃんの歌声を楽しんでいただけたら嬉しいです。レコーディングでは、川谷絵音さんに直接ディレクションいただきました。これまで経験した中でも一番緻密なレコーディングというか、歌を録るよりも音楽を一緒に作らせていただいた感覚でした。

劇中で刺さったセリフ「知っていただかなければ始まらない」

――最も成功したアニメの称号=「ハケン(覇権)」というのものがテーマであり、タイトルにもなっていますが、高野さんは“ハケン”というものを意識することもありますか?

私はすごく気にするタイプなんです。どの作品が一番良かったか、というのは受け取る方次第だと思うので、視聴率に一喜一憂するということは無いのですが、作品に携わる一人として「作品を盛り上げたい」という気持ちは強いです。葵ちゃんの様に、少しでも作品を広めるインフルエンサーになれたらと思っています。劇中で行城さんが言っていた様に「知っていただかなければ始まらない。そうしないと楽しんでもらう事も出来ない」というのが私にもすごく刺さっていて。少しでも作品をたくさんの人に広めて、その結果ハケンになれたとしたら、皆でやったね!って喜べるというか。

声優というお仕事はアフレコをして終わり、と思われると思うのですが、その後に作品を最後まで作り上げてくれるスタッフさんがいるので。最後まで見届けてこそ、私もその作品のスタッフの一人だと思っています。だからこそ、皆さんの反応はすごく気になってチェックしてしまいます。

――ありがとうございます。アニメ作品って本当にたくさんの人の想いで作られているのですね。

この作品はアニメ業界で自分の好きを貫いていく人々を描いた物語で、私は葵ちゃんの一番苦しい時間を演じているのかもしれません。ただそれも、業界の中の真実の一つなので、エンターテイメント作品として楽しんで、そしてアニメ業界を知れる作品として、最後までご覧いただきたいです。

――最後に、劇中で瞳監督はエクレアを楽しみに日々頑張っていますが、高野さんにとっての現場の楽しみ、これがあったらテンションが上がる!というものはありますか?

プロテインドリンクです!ココア味のものが好きで、現場に入る前によく飲んでいて、疲れた時に、あの甘さがたまらないんです(笑)。タンパク質もとれますしね!

――今日は素敵なお話を本当にありがとうございました!

【動画】映画『ハケンアニメ!』本予告
https://www.youtube.com/watch?v=M1IE0RmI6WI

(C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

撮影:SAKI.L

  1. HOME
  2. ガジェ通
  3. 『ハケンアニメ!』実写映画初挑戦の高野麻里佳インタビュー「役柄への共感」「好きを貫くための、それぞれの“正義”がある物語」
access_time create folderガジェ通 映画

藤本エリ

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。