映画『ツーアウトフルベース』はリアルなヒーロー像 板垣瑞生インタビュー「阿部顕嵐が思うカッコいいを出してくれるところに惚れた」
『ミッドナイトスワン』の内田英治氏によるオリジナル脚本に、デビュー作『レディ・トゥ・レディ』で注目を浴びた気鋭の新人監督・藤澤浩和氏がメガホンを取った映画『ツーアウトフルベース』(3月25日より全国公開中)に出演する板垣瑞生さんの撮り下ろしインタビューをお届けします。
甲子園出場という破れた夢を引きずり、堕落したジャンクな日々を送る元高校球児のイチとハチ。ドラッグと高級アメ車に手を伸ばしたことからハプニングが大勃発! 最強ヤクザと最恐の不良、さらにはポンコツ刑事にまで追いかけられる人生サイアクの1日を疾走するハメに……。クエンティン・タランティーノやガイ・リッチーを彷彿とさせる時代&時制シャッフルを駆使したハイテンポ&ハイテンションのセカンドチャンス劇です!
阿部顕嵐さん演じる主人公・イチの野球部時代の相棒で、お調子者ですが情に厚いハチを板垣瑞生さんが演じます。
板垣さんに本作の撮影エピソードや、相方の「イチ」を演じた阿部顕嵐さんの印象などお話を伺いました。
――最近毎クール何かしらの作品にご出演されていて、引く手あまたの板垣さんですが、今作はオファーでの出演だったのですか?
板垣:いえ、オーディションを受けました。そのときには、すでに「イチ」役に顕嵐が決まっていて、オーディションで一緒にお芝居をしました。監督はその場の2人の感じなどもご覧になっていたと思います。
――主演の方がいらっしゃって一緒にというのは、珍しい形のオーディションですよね。
板垣:すごく珍しいと思います。僕は初めての経験でした。
――オーディションでは、最初から阿部顕嵐さんと息が合ったりしたのでしょうか?
板垣:その時はお芝居をすることしか考えていなかったので息が合っていたかどうかはわかりませんが、僕は最初から顕嵐のことが好きでしたね。なぜか最初に会ったときに、「あ、この人とは何も考えなくても友達になれるな」と思ったので、不安は一切ありませんでした。
――今作の脚本を読んだ印象を教えてください。
板垣:すごく面白かったです。絶対やりたいなと思って、読んだ瞬間から「こういうことしたいな」とか、「こういうこと出来るんじゃないかな」と考えが溢れて止まらなかったので、きっとこれは現場でもアイデアが出てくるし、みんながくれるものがいっぱいあるなと思っていました。監督がそういう“ナマモノ”を求めてくださっている部分もすごく伝わってきたので、これは現場で楽しむだけだ、とワクワクしていました。
ハチのことは、バカだな~と思いますし、とりあえず行ってみたら出来るんじゃない?みたいなところは、自分にもあって似ている気がします。ハチがイチのことを好きで、ふたりは友達なんだろうなというのもすごく感じました。
――キャスト陣からアイデアがたくさん出た現場だったそうですね。
板垣:アイデアだらけでした。多すぎてしまうほど。最初にオニヘイに因縁をつけられるときに、オニヘイの組員たちに襲われて僕が殴られるんですけど、「おいお前、ブラック・ジャックか、ワレ!?」って言われるんです。本当はブラック・ジャックの一言は台本にはなかったんですが、そういうことが多くて。それも別にアドリブをしているわけじゃなくて、そういうお芝居になった、っていうだけなんですよね。
最初の「テッテレー!」のところは、ギターのレスポールから手を出すんですけど、最初のお芝居では、隣にあった人形が可愛すぎてその人形でずっと喋るというお芝居もやっていました。
――そのパターンも観たかったです!
板垣:そのシーンはお芝居が途中で変わってしまったのですが、そういうことを挙げたらキリがないです。シーンごとに、みんなのアイデアに乗っかっていった感じなので、もう細かな記憶がありません(笑)。なので、全シーンそうやって出来ていると思って観ていただきたいです。でもそれは、監督が「これは入れよう」「これは抜こう」みたいなところをきちんと計算してくださっていたからですし、僕たちがアイデアをぶつけやすいように組を作ってくださっていた部分もあります。
あと、監督が良い意味でとても無茶苦茶なアイデアを出してくださることもあったので、こっちも「それも有りならこれも有りだよな」と、監督がこの映画はここまでやってもいいという幅を広げてくださったので役者陣もアイデアが出しやすかったんだと思います。
――藤澤監督とご一緒したことで、自分の演技の幅も広がったと感じますか?
板垣:たくさんありますね! ヒロポンから逃げるところも、「じゃあ、クラウチングスタートで逃げて」という演出があったり、監督が作品やキャラクターの振り幅を広げてくださったところが多々ありました。なので、現場ではアイデアを出したという実感も少なかったです。そうなってしまった、という感じです。
――この作品でしか見られない、板垣さんの表情を挙げるとしたらどんなところですか?
板垣:“夏休みの高校生の悪巧み”みたいな顔をしながら、ずっとお芝居をしていました(笑)。それは僕の新しい表情かもしれません。
――最近、少しずつちょっとクズというか、ダメ男みたいな役が増えていますよね?
板垣:前からちょこちょこありましたけど、最近増えてきましたね(笑)。今回のハチも、いわゆるキラキラしたドラマに出てくるような役ではないですよね。
――こういった役はやはり演じていて楽しいですか?
板垣:楽しいです。どっちも楽しいんですけど、無性にこういう作品をやりたくなるというのは、役者の性なのかなと思ったりします。
でも今回の作品は、僕としてはリアルなヒーロー像の感覚なんですよね。スーパーマンは現実にはいないことになっていますが、そういうヒーローではなくて、自分の中のヒーローだったらいいよね、っていう役だと僕は思っています。
――では、阿部顕嵐さんの印象や、イチに似ている、共通する部分があれば教えてください。
板垣:似ているというか、「イチだな~」と思いますし、たぶんこれからも何かの拍子に、イチって呼んでしまうかもしれません。それくらい、僕にとってはイチって感じです。共通点ではなくて、顕嵐=イチという感じですね。
――現場で印象深かったことは?
板垣:本当にくだらないことなんですけど、2人でサウナに行ったり、温泉に行ったり、買い物に行ったり……。
――とても仲が良いですね!
板垣:本当に仲が良くて、ずっと一緒にいました(笑)。現場でもずっと一緒にいるんですよ。逆にずっと一緒に居すぎて、記憶に残っているエピソードが特にないんです。今はそんなに連絡を取り合ったりはしていませんが、友達ですね。連絡するかどうかを超越した存在かなと思います。別に会わなくても友達ですし、会えばお互いの趣味の話をしますし。これは基本変わらないことなのではないかなと思います。
――共通の趣味があったんですね。
板垣:そうです、サウナと焚き火、あと森が好きとか(笑)。僕がパーソナルに好きなもの全部を顕嵐も好きみたいな感じで、最高なんですよ。
――共演されて、阿部顕嵐さんの魅力は改めてどんなところだと思いますか?
板垣:阿部ちゃんは……。
――阿部ちゃんと呼んでいたんですか?
板垣:今初めて呼びました(笑)。阿部の魅力はキリがないですけど、等身大エンターテイナーかなと思います。それを僕はすごくカッコいいなと思っていて。顕嵐は顕嵐ですが、それがすごくカッコいいんです。カッコいいことも言いますし、本人は“カッコいいことをやっている”という自覚があると、僕は思っています。そこが一緒にお仕事をしていて、気持ちがいいところです。顕嵐が思うカッコいいを出してくれるから、すごく仕事もしやすいし、一緒に話していて楽しい。それが魅力なのではないでしょうか。
顕嵐のファンの方たちはいろんなところが好きだと思いますけど、顕嵐の思うカッコいいを顕嵐がやってくれているから好きな人っていると思うんですよね。なんか僕もそこに惚れてしまったなという感じです。
――その周りをカッコいいと納得させる感じというのは、すごいですね。
板垣:すごい才能ですよね。
――作品を楽しんでくださる方にメッセージをお願いします。
板垣:本当に人生は一(イチ)か八(バチ)かの連続だと思います。それだけ、みんな一か八かを背負って生きているので、もし今、一か八か迷っていたらこの作品を観ていただいて、自分の一か八かを選択していただけるとうれしいです。たぶん観た方には伝わると思うのですが、その一か八かって実はどっちでも良くて。そこに良いも悪いもない、自分がその後どう思うかの話であって、もはやどうでもいい二択だと僕は思っているんです。それは選んだ選択を後悔しないかどうかってことなのではないかなと自分は思うので、そういう選択に迷っていたら、こんなに笑える選択もあるんだ、自分の人生の今の選択って、もしかしたらこんなに笑えることなのかな、とか、そう思ってもらえるきっかけになったらすごく嬉しいです。本当にヤバい映画なのでぜひ観てください! よろしくお願いします!
――ありがとうございました!
[撮影:曽我美芽]
・阿部顕嵐×板垣瑞生 映画「ツーアウトフルベース」本予告(主題歌:7ORDER)
https://youtu.be/cG_ORGC9Ai4[YouTube]
作品概要
映画『ツーアウトフルベース』2022年3月25日(金)全国公開
<物語>
堕落した日々を送る、元高校球児のイチとハチ。
ひょんなことからヤクザと半グレ、さらには警察にまで追いかけられる人生最悪の 1 日がはじまった――。
かつてはプロ入りが期待されるほどの高校球児だった「イチ」と「ハチ」。甲子園出場が決まり、明るい未来が待っているはずだったが、部内で起こった不祥事により出場が取り消されてしまい、そこからふたりの転落人生がはじまった…。
10 年後、薬物に溺れ堕落した生活を送っていたふたりは、ひょんなことから町のヤクザに因縁をつけられ、ヤクザと不良グループによる血みどろの抗争に巻き込まれていく。まさに絶体絶命な状況に追い込まれるふたり。思い出すのは 10 年前の甲子園が決まったあの日のマウンド。二死満塁。ふたりはこの状況を打開できるのか?そして止まってしまっている人生の歯車をもう一度動かすことができるのか…。
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阿部顕嵐 板垣瑞生
工藤 遥 諸星翔希 渡部龍平 趙珉和 宮崎秋人 成松修 佐野和真
新羅慎二 カトウシンスケ 後藤剛範 / 渋川清彦
企画プロデュース:新羅慎二 脚本:内田英治 監督・脚本:藤澤浩和 音楽:吉岡聖治 主題歌:7ORDER「レスポール」(日本コロムビア)
エグゼグティブプロデューサー:加藤和夫 プロデューサー:菅谷英智 中島裕作 キャスティングディレクター:杉山麻衣 宣伝プロデューサー:丸山杏子
撮影:伊藤麻樹 照明:井上真吾 美術・装飾:松塚隆史 編集:小美野昌史 録音:内藤和冬 助監督:米倉祐依 アシスタントプロデューサー:藤田航平
制作担当:原田博志 ヘアメイク:清水美穂 スタイリスト:神恵美 CG:若松みゆき
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製作:日本コロムビア KSR 東映ビデオ 制作プロダクション:RIKI プロジェクト 配給:東映ビデオ
(C)2022「ツーアウトフルベース」製作委員会
公式サイト:twooutfullbase.com[リンク]
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