高齢者に教えて!「“施設入所名義貸し”を詐欺で訴えます」と脅す詐欺手口が横行中

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

最近、反社会勢力(暴力団、半グレ)のメンバーがよく使う《名義貸し》という犯罪行為のタイプに変化がありました。ターゲットを、気軽に《名義貸し》のことを考えている高齢者に絞ったのです。

しかも、その舞台は“老人ホーム”や“高齢者施設”などの高齢化社会の今になくてはならない場所。オレオレ詐欺などと同様、劇団型犯罪(犯人が警官や役所職員、大企業の重役・社員、弁護士、医師、会計士、会社の上司、同僚、ヤクザなど、様々な役柄を演じてターゲットから金品を奪い取るもの)がほとんどを占める特殊犯罪です。詐欺において、法律や情報にうとい高齢者は標的になりやすいわけです。

今回は、最近頻発している《施設入所名義貸し》の詐欺行為について、過去にオレオレ詐欺を働いていたT氏(29歳)に話を聞きました。はたして《施設入所名義貸し詐欺》の手口とは?

「施設入所の権利がありますよ」という詐欺の入口

丸野(以下、丸)「この詐欺手口が最近急増しているようなんですが?」

T氏「詐欺集団はいつも頭を巡らせて、アイデアをひねり出してますからね。やってみてうまくいかなきゃ、次。またダメなら次。その繰り返しでハマったのが、《施設入所名義貸し詐欺》なんですよ」

丸「なるほど、悪い連中ですね。さらに新手の詐欺を常に考え続けているわけですか……。で、これはどのような手口になるんですか?」

T氏「突然、名簿(高齢被害者などを網羅した名簿が存在する)にある高齢者宅に福祉事業を行っている有名企業──例えば『P』なんかを名乗って電話。そこで“高齢者施設に入所できる権利がありますよ”と伝えます。70代から80代でも持ち家で、自分は元気だと思っているわけですから、そんな誘いにはノーというわけです」

丸「はい」

T氏「すると詐欺師は“では別の方に入居していただきます、次の人に権利を譲ってください”と伝えます。高齢者は、興味がないわけですから“どうぞ、どうぞ、勝手にやってください”と返答。すると、後日に別の有名企業を名乗る男から、“あなた、高齢者施設の名義貸しをしましたね、これは犯罪ですよ”と詰め寄ってきます。慌てふためく高齢者に、“犯罪にしないためには1千万円から数百万円が必要です。どれくらいなら用意ができますか?”と畳みかけ、高齢者は指示されるまま、譲歩してもらった数百万円を送金してしまいます

金融庁などの職員、警察、弁護士などを騙る電話にも注意

丸「ひどい話ですね」

T氏「これは、小遣い銭を欲しがっている高齢者へ口座買取りを持ちかける手口から派生したものです。口座買取りに数万円を支払ってそれはちゃっかり悪用。後日に金融庁を名乗る男が“口座名義売買”は違法、あなたが販売した口座を悪用して詐欺を行った相手は警察が逮捕しました。あなたも逮捕に値します。被害者と和解をしたいのであれば〇百万円支払ってください”といって示談金をだまし取るという手口です。犯罪収益移転防止法で、口座売買をした双方も処罰される可能性があるんですよね」

丸「この被害、数件で数千万円単位に膨れあがっているそうですね」

T氏「2021年夏には、高齢女性宅に大手ハウスメーカーの社員を名乗った男から“謝礼を支払うから、老人ホームの名義を貸してほしい”と電話があり、10万円ほどの謝礼が支払われました。すると、そのメーカーの他の社員や国税庁職員を騙る男から“名義貸しは違法行為、納税修正のお金が必要です”という電話がかかってきて、4ヵ月間のあいだに数十回にわたり、指定場所に現金約1億5千万円弱を宅配便で送って、詐取されたそうですよ」

丸「1億円超の被害とは、かなり高額ですね」

T氏「高齢者は肩書きなどに弱いし、口座名義貸しなどの犯罪に対する知識がない。これは当たり前のことです。ですから、よくわからないときには家族や警察に確認をするべきです

さらに派生する手口

丸「《施設入所名義貸し》もいろいろな切り口があるわけですね」

T氏「北海道釧路では、市内に住んでいる高齢女性のもとに、大手老人ホーム会社社員を名乗った男から“あなたの住むエリアに新しい老人ホームが建設されます。釧路在住者が対象なので、入居しませんか?”と電話があったそうです」

丸「それで?」

T氏「その後にまた同じ男から電話があり、“あなたからの申請を受け付けました、入居手続きを進めます”と言われ、パニックに……。そこに、入居手続き担当者を名乗る他の男から“ムリに入居させられたのなら、入会金1千万円を払い戻しいたしますので、あなたの銀行口座を教えてください!”という電話があったそうです。パニックになったところに追加電話で囲い込むのがヤツらの常とう手段ですよ」

特殊詐欺に狙われ続ける高齢者。不審な電話があった場合、絶対に家族に連絡を取るか、警察に相談してほしいと思います! 筆者は《Stop 特殊詐欺!》を応援しています。

(C)写真AC
※写真はイメージです

(執筆者: 丸野裕行)

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