無料入場実現! 『Re:animation』仕掛け人・杉本真之さんに聞く中野開催の理由と新サービス
2013年4月13日に東京・中野北口駅前広場で開催される超都市型音楽イベント『Re:animation5』。今回はクラウドファンディングサービス『CAMPFIRE』で支援者を募集し、326人から約190万円もの運営資金を獲得。これにより、入場無料のイベントになりました。アニメと音楽をつなげる場として成長しつつある『リアニ』の仕掛け人である杉本真之さんに、4回にわたって新宿・歌舞伎町で行われていたものが中野に移った経緯や、自身が立ち上げた新サービス『Cloud Fan Club』(https://www.cloudfanclub.com/)について、お話を聞きました。
――2010年12月から『リアニ』を4回続けるにあたって、毎回1000名以上の動員を記録するまでになりました。運営をする上での大変な部分も沢山あったのではないかと思うのですが。
杉本真之さん(以下・杉本):もちろん野外で音を鳴らすということでクレームがあるのですが、周囲が心配することはやはり事件・事故なんですね。そこは細心の注意を払って、スタッフが50人という尋常ではない数を配置して、1人で10人くらいのお客さんが見られるようにしました。ボランティアでやってくれるスタッフにはほんとうに感謝していますし、こちらのルールに応えてくれるお客さんにも感謝ですね。
――自治体の皆さんも、お客さんのマナーのよさには驚いているそうですね。
杉本:お客さんへの信頼を、関係者の方々も持ってくれるようになりましたね。警察などとのやり取りで、無茶な注文がついたこともあるのですけれど、1回目の開催で役所や自治体の信頼感が上がったのが大きかったです。
――開催していく中で、継続が危ぶまれるようなトラブルがあったのでしょうか?
杉本:おかげさまで大きなトラブルは起きていないのですが、一番危なかったのは2011年の7月に開催した時に、消防から「熱中症患者が3人出たら中止」といわれた時ですね。幸い何も起きなかったので、周囲からの信頼が高まることになりました。
――『リアニ5』を歌舞伎町から中野に移す理由を教えて下さい。
杉本:歌舞伎町の再開発でシネシティ前広場が閉鎖になるということで、都内に1000人オーバーのキャパシティの広場を管理している、いろいろなところに企画書を送って開催を打診しました。その中でも一番よく話を聞いてくれたのが中野区の都市観光の部署だったんですね。担当の方はイベントのことを知らなかったのですが、歌舞伎町での4回の開催の実績を見て頂けました。新宿の場合は周囲がビルに囲まれていましたが、中野では歩道で遮るものがなく、すぐそばに住宅地があるので、「こういったイベントをしますよ」というポスティングやあいさつを事前にするようにしています。
――自治体や近隣住民の理解を得るのはとても大変だと思うのですが、どのような交渉をされているのでしょう?
杉本:どこに行っても基本的に事例がないため、「どうしよう」という話になって流れてしまうこともあります。だから、まずはどのような条件があるのか聞いていくところですね。それでその条件に逸脱しないこと。一回やって理解してもらってから、こちらからも「こういうことがやりたい」と相談していく。役所や自治体に味方になってもらうこと。やりっぱなしにしないということが大切だと思っています。でも、今回どこの行政もこのようなイベントはやりたがっていると感じました。例えばジャズフェスや沖縄のエイサー祭りがありますが、その一つとして『リアニ』のようなDJイベントもありますよ、ということですね。
――今回、『CAMPFIRE』で支援者を募集するにあたって、無料開催にこだわられていたようですが。
杉本:これは『CAMPFIRE』を使うにあたって、一番やりたかったことだったんです。というのも、自治体に企画を出す際に必ず出てくるのが「非営利」であるということなのですね。区の会場を使う際には区の後援が必要になりますし。有料イベントだから営利だというわけでは必ずしもないのですけれども、やはり近隣の住民の方々の印象は違っています。開催中の金銭的授受をなるべくなくしてもらいたい、というのが外側からの要望なんです。そうなると、企業のスポンサーをお願いするにしても大々的に宣伝ができず、会場での商売もできないというジレンマがあります。そこでまた、『リアニ』は参加者のものだということで、参加者がスポンサーなんだ、ということを打ち出したかった。『CAMPFIRE』を見た時に「これならできる」と直感しました。
――結果的に約190万円もの出資者が集まりました。
杉本:中にはイベントには来れないけれど応援したいという地方の方がスポンサーになってくれたりもしてもらっています。出資してくれている326人の方々がいなければ開催することができなかったので、イベントを作っているんだと“どや顔”をしてもらいたいですね。逆に、お金がないという人がスタッフをしたい、となって仲間がどんどん増えていきたい。そういった垣根のない状態を目指すには無料イベントでないとなかなか広がらないと考えています。
――杉本さんをはじめとするスタッフの皆さんがイベントを続けていくモチベーションはどこにあるのでしょう?
杉本:正直にいうと、継続して開催していくには体力がいりますね。企画を立てて調整をして、成立してもグッズを用意したり大変ですが、自分自身は楽しんでやっています。基本的に手弁当でやっているので、来てくれる人が満足する顔が見られるのが一番ですね。
――昨年会社を立ち上げて作られた『Cloud Fan Club』という新しいサービスについても聞かせて下さい。
杉本:『リアニ』ではおかげさまで『CAMPFIRE』で出資が集まって開催することができていますが、基本的には単発プロジェクトのスタートアップを支援するサービス。今後も『リアニ』の無料開催をできれば続けていきたいという気持ちがあるので、継続して資金を集められるプラットフォームが欲しいということが『Cloud Fan Club』を立ち上げた大きな理由の一つです。
――ファンクラブはアイドルや声優など従来からあって、多くは事務所が運営していますね。
杉本:自分の世代だとラジオのファンクラブに入るのに郵便局で為替で送ったりしてましたからね。そのためだけに郵便口座を作ったり。ただ、それをするのは大変でしたよね。あと、運営側もシステムを作るのには時間的にも予算的にも少なくないリソースが必要です。それを簡単に立ち上げたり入会したりできるサービスです。
――『Cloud Fan Club』にはどのような機能があるのでしょうか?
杉本:名前の通り、ファンクラブを運営するために必要なことが完備されています。会員への設定が複数のレイヤーに分かれていて、有料会員や無料会員、金額を複数設定して、メーリングリストやメルマガ、活動報告を送ることができますし、自作のコンテンツの配信や通販機能もあります。今は、PayPalでの決済のみですが、これからカード決済とコンビニ決済が使えるようになります。特にコンビニは、この界隈にクレジットカードを持っていない人が多いので、より手軽に利用してもらえればと考えています。
――このサービスをどういう人に使って欲しいと考えていますか?
杉本:例えばDJやトラックメーカー、ボカロPなどや『pixiv』で発表している絵師やウェブマンガを描いている人ですね。今までだとそういう人たちが自分の作品を販売して活動資金を得られる場はコミティアやM3などの同人誌即売会などに限られていました。ただ、活動を続けるには時間もお金も必要なので、儲けようと考えていない人でも、活動の担保になるような場所にしたいですね。
DJならば、音源を集めたりする必要があるし、地方のイベントに出演依頼が来たとしても、お金の問題で断念せざるを得ない場合も中にはあります。それが、月々3万円を得ることができればバイトを3日休むことができるわけです。もしファンから20万円の会費が集まれば生活できるようにもなります。ほかにも『リアニ』のようなイベントも登録できるようにもなっていますので、いずれは上手く使っている人のノウハウを共有できるようにしたいですね。
――継続して創作活動をしていきたいという人にとっては、味方を見つける場になりそうですね。
杉本:最終的には、周囲の世話を焼いてくれる町の名物おばあちゃんのファンクラブができて、周りの人が「この人を応援したいから!」と会員になって、おばあちゃんも何かそのお礼をしてくれるから、その人の周りでお金が回っているというのが理想です(笑)。作っているものにお金を払うというより、その人が好きだから支援したい、ということが『Cloud Fan Club』でもっと広まるといいな、と思っています。
Re:animation | リアニメーション – Animation meets club music party and rave –
http://reanimation.jp/
Cloud Fan Club
https://www.cloudfanclub.com/[リンク]
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。
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