覚醒剤、金塊などヤバいモノを運ぶ“運び屋”! プロが使うその手法とは?
どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。
皆さんは、クリント・イーストウッド監督・主演の『運び屋』という映画をご存知でしょうか? 園芸家として有名だった主人公アール・ストーン(クリント・イーストウッド)は高齢になって仕事自体が立ち行かなくなり、麻薬関連の運び屋を引き受けてしまいます。麻薬取締局の取締官に追われつつも、離れ離れになった家族との関係を取り戻そうとするストーリーです。
彼が手を染めてしまった“運び屋”という仕事、運ぶブツは様々。麻薬だけでなく、コピー品やワシントン条約違反の動物、金塊、銃器など金になるものすべてです。
そこで今回は、元運び屋ビジネスに加担していたF氏(45歳)に、どのようなブツをどのように運ぶのかをインタビューしてみました。
その手口は、思っていたよりも巧妙かつ大胆、そして複雑だということがわかってきました。
まずは麻薬を運ぶ手口とは?
丸野(以下、丸)「いきなりですが、麻薬の運び方について教えていただきたいんですが……」
F氏「いろいろとありますよ。一般的なのは、やはり《瀬取り》ですね。この方法は、国境付近の海上で外国船から日本の船へ荷を積み替えるというものです。さらに船を2重底にして強力な磁石に忍ばせた違法薬物を運ぶプロもいます」
丸「海上保安庁は何をやっているんですか?」
F氏「まぁ、一度静岡の港で約1トンの覚醒剤が押収されたぐらいですから、仕事はきっちりやっているでしょう。これは国内で1年間に押収される違法薬物の3/2にあたる量なので相当なものです」
丸「ほほう。相当の量ですね」
F氏「瀬取りの他には、よくある手口では輸入された精密機械部品や工作機器の中、靴のソールの中、サーフボードの中、輸入家具の中、ゴルフクラブ、輸入食品の箱の中に薬物を隠したりします」
丸「ずいぶん大胆ですね」
税関に睨まれると作戦失敗
丸「その荷物はどうやって運ばれるのですか?」
F氏「大口の違法薬物であれば、船やコンテナ、飛行機内の貨物に紛れさせて運ばれます。その荷物を毎日チェックしているのが全国各地にある税関ですね。税関は、違法な密輸品を取り締まる機関なのですが、他にも関税を徴収したり、貿易が円滑に運ぶように取り組みを行ったりしています」
丸「なるほど」
F氏「ですから、もし密輸入に成功してしまえば、世間に大量のクスリが出回るわけです。このクスリは暴力団の資金源になったりするので、トカゲのしっぽ切りを行ってもありとあらゆる手段を使って密輸しようとするんですね。だから、《闇バイト》や《半グレ》が台頭になり、組織の防波堤代わりになっているようです。ヤクザが運ぶ、そういう時代ではなくなったんですね」
丸「税関はとにかく水際で日本の安全を守るということですね」
国内での麻薬の運び方
F氏「海外から無事密輸することも大変ですが、国内に入ったブツを運ぶのにも苦労します。ですから、弱小の運送業者などとのパイプも作らないといけない。中企業の内通者が請け負っている場合もありますよ」
丸「おお、そんなパイプが」
F氏「北朝鮮などの海外から関東の港や関西の港に入ってきた覚醒剤を、全国各地に運ぶ場合には必ず新幹線で最寄りの小さな駅で降りて在来線に乗り換えたり、深夜バスに乗り込んだりします」
丸「なぜですか?」
F氏「これは、全国の主要駅には必ずマトリ(麻薬取締官)がいて、めぼしい男女に声をかけてくるためです。怪しい動きをしている人間には容赦なく声をかけます」
金塊を海外から運び込む手口
丸「関税逃れで、金塊を持ち込む手口も教えてもらえますか?」
F氏「瀬取りも当然ありますが、面白い手口もあります。私の知人は香港から金塊を運んでいたんですが、腹にゲル状の透明な肉襦袢を着てその中に金塊を2本ほど忍ばせて飛行機に乗るなどしていましたね。でも、いったん税関に目を付けられると大変です。一度目をつけられて税関の執拗な取り調べを受け、足を洗ったそうです」
丸「そんな手口が……バレないものなんですね」
F氏「ただのデブッチョというか太って見えるらしいですよ、単純に……。まぁ、数ヵ月のうちに何度も香港に渡って、とんぼ返りで帰国しているわけですからね。パスポートのデータは税関に完全に把握されているわけですから……」
丸「怖くなって当たり前ですね」
財務省の資料によると、令和元年の1年で押収された違法薬物の量は約1.5トン。押収された薬物は覚醒剤が77%、コカインで10%、大麻で10%の順になります。
なぜ国内で覚醒剤が製造されないのかといえば、覚醒剤の精製過程で強烈な悪臭が発生するので、すぐに警察に嗅ぎつけられてしまうとのこと。日本で販売されている覚醒剤は密輸品がほとんどだといいます。
どんどんと巧妙になる密輸の手口。コロナ禍で密輸がしづらくなったといえど、市民の安全を守る税関や警察にはぜひ頑張ってほしいものです。
(C)写真AC ※写真はイメージです
(執筆者: 丸野裕行)
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