厳しいヤクザの上納金!元極道に聞く「上納金制度」はどう決まるのか?
どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。
元受刑者の方とよくお話をする機会があるのわけですが、暴力団の制度には素人には理解できない“謎”がつきまといます。難解な仕組みですね。
そのひとつが《上納金制度》。親分が配下の組員から格付に応じて、会費や交際費などの名目で強制的に金を徴収。この金により組織運営し、その力を維持しているわけです。この徴収金を、警察などの取締り機関が《上納金》と名付けました。
今回は、ヤクザならではのシビアな金の話─《上納金》について、元極道組織に在籍していたS氏(57歳)に金額の決め方や納める方法などを聞いてみました。
ヤクザ社会では《会費》《交際費》と呼んで徴収する
丸野(以下、丸)「この《上納金》なのですが、どのような組織でも行っているんでしょうか?」
S氏「ヤクザの世界では、《上納金》という言い方はあまりせずに、《会費》や《交際費》なんて呼んでるね。オレも、あまり大きくない枝の枝に当たる小さな組織に所属していたけど、《上納金》は集められとったよ。どこでもやってるんちゃうかな。一般組員や舎弟、組織の幹部とか、その人間の格付に見合った月額を決めて、毎月組長の家やら事務所に集まる《寄り合い》(※定例会)のときに上納するのが暗黙の了解やね。まぁこれがしんどいんやけども、仕方がない。飯食わせてもらっている人に尽くすのが子の役目やから」
丸「《寄り合い》ですか……。すごい言い方ですね。主婦みたいな言い方じゃないですか」
S氏「そや。それに、組員たちから《上納金》を受け取れる立場にある親分自身も、自分の組が所属している広域暴力団の上層組織に上納金を納めんといかん。傘下の者は、すべてや」
上納金額はピンキリである
丸「どの組織も階級別で金額が決まっているわけですか」
S氏「具体的な金額というのは本当に様々で、一概には言えんな。組織の中で、外部に漏らすのはご法度。だから、他組織の人間はその実態をまったく知らない。誰がいくら稼いでいる、とふれ回るようなもんやから。でも、広域暴力団の上層部の幹部連中になれば、毎月数百万円上納している人間もいるよ」
丸「それはすごい金額ですね」
S氏「そう、莫大な金額になるから、やり手の広域暴力団幹部になれば、月に億単位以上になるとも言うね。さらに、会費名目の上納金だけやなくて、《義理かけ》で集められた、組織をバックにつけて組員が得た金や特別徴収金も、《カスリ》で、数10%を親分に納める。それが決まりやわ」
代紋を振りかざすための返礼
丸「上層部は二重取り、三重取りと身ぐるみをはがしていくわけですね」
S氏「仕方ない。この金は“組織の名前で得た金”やから、返礼金みたいなものやね。代紋を振りかざして儲けた金やからインセンティブ(対価)なわけ」
丸「でも、かなり大きい金額ですよ」
S氏「稼ぎの数10%をかすめ取られる厳しい上納金の制度に対し、“人のふんどしで相撲を取っているのに会費を納めないというのはおかしい。組員自らちゃんと納めさせてください”と感謝しなければいかない。そう教えられたし、それは当然のことやと思う。納めない場合は、容赦なく厳しい対応で臨むのが、組織全体の掟を保つことに繋がるわけやね」
上納金を滞納すると厳しい制裁が待っている
丸「上納金を納めないとどうなるんですか?」
S氏「ヤクザ社会は権力も金も全部が組長の元に集まるというシステムになっていて、大幹部ともなると、自分自身で犯罪を犯してムリな金儲けをすることもなく、配下の組員が懸命に稼ぐ金を上納金として納めさせ、活動費用や組織運営の費用に充てるなどする。上納金で豪勢な自宅を構えたり、高級車を買ったり、贅沢な生活を送るために資金として無限に使うわけ。まぁうらやましいんけど、昔は命がけで体を張ったわけやから、そこは評価して尊敬しないと……」
丸「しかし一方では、その組の構成員は、稼いだ金の多くを上納金としてヤクザ組織に没収されるために、組長や兄貴分に上納金、そして自分たちの生活資金を獲得するために、賭博や覚醒剤、半グレのケツ持ちをしたり、非合法なビジネスに加担して資金を得ようと犯罪に手を染めるということになるわけですね」
S氏「ちなみに、上納金自体を何度か滞納するということになってしまうと、除名処分や私刑、破門などの恐ろしい制裁を受けることになるわね」
最後にS氏は上納金制度について、このような見解を示しました。
「正直、組長や兄貴分に不平不満を言って、上納金制度に苦言を呈すような組員は、ヤクザを辞めた方がいいと思う。漢としてシノギをしているのに、文句を言うのはお門違い。そんな連中を組員として迎え入れてしまったことを恥と感じる幹部もいると思う。まぁ、そこで底が知れるということで……」
彼らはそこまでして漢としてのメンツを大切にしている、ヤクザの奥深さを思い知った取材でした。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)
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