将棋好きなら一度は行きたい!将棋の街・山形県天童市への旅
こんにちは! 編集者の藤田華子です。将棋ファンになってちょうど5年。普段はインターネット番組で将棋を観たり、将棋にまつわる文章を読み書きしたりしています。
今回は、将棋の街として知られる山形県・天童市へ。将棋の駒、生産量全国1位を誇る街です。それでは、行ってきます!
東京駅
「天童市将棋資料館」で将棋の歴史に触れる
JR東京駅から山形新幹線「つばさ」に揺られ、約3時間でJR天童駅へ。乗り換えがないので、のんびりとアプリで将棋を指したり、対局の中継を観たりしながら向かいます。
天童駅に着いてまずは隣接の「天童市将棋資料館」に。将棋の歴史や天童市と将棋の関わりを学んで、旅の幕開けです。
もともと将棋は、古代インドで遊ばれた「チャトランガ」というゲームがルーツ。それが西に渡りチェスに、東に渡り将棋になりました。日本に伝わったのは、11世紀(平安時代)といわれています。
では、なぜ天童で将棋駒産業が盛んなのでしょうか? 話は江戸時代末期。将棋駒づくりは、財政が厳しかった天童織田藩の下級藩士の手内職にはじまります。当時、武士の内職は歓迎されないものでしたが、重臣・吉田大八は「将棋は兵法戦術にも通じ、武士の面目を傷つけるものではない」という理由で積極的に奨励したそうです。
学芸員の瀬野純子さんはたくさんのアイデアをお持ちで、街中で将棋のモニュメントがどこにあるかが記された「KOMAP(コマップ)」や、駒を軸にした天童市のプロジェクト「コマノミクス」などの名付け親。
次の構想を尋ねると、「渋沢栄一と福澤諭吉は、将棋を指していたらしいんですよ。新旧1万円札対決です! ぜひ企画にしたいですね」と聞かせてくれました。
※編集部注:天童市将棋資料館の館内は撮影禁止です。特別に許可をいただいて撮影をしています
売店でかわいいアイテムをお土産としてゲット。
天童市将棋資料館のすぐ横には「天童将棋交流室」があり、駒音が聞こえました。そして駅前のポストにも駒!
ほほえみの宿 滝の湯
合計23回もタイトル戦の会場になったお宿
天童市将棋資料館から15分ほど歩き、天童温泉街に到着。今夜は「ほほえみの宿 滝の湯」に宿泊します。1984年(昭和59年)から合計23回も将棋のタイトル戦(十段戦/竜王戦)の会場になっている立派なお宿です。
ロビーや大浴場の入り口に大きな将棋盤が設置されるなど、館内のあちらこちらに将棋にまつわるものが置いてあります。
ここでは、お風呂上がりに将棋を指すおじいちゃんとお孫さんの姿を見かけてほっこり。
自分で温泉卵をつくるサービスのお釜も駒形でした。
そして、今回は特別に対局会場の「竜王の間」を見学(※)させていただきました。
※編集部注:宿泊者は見学可能。ただし、お部屋が空いている場合に限りますので、詳しくは宿までお問い合わせください
案内をしてくださった女将の星野陽子さんのお話から見えてきたのは、何回もタイトル戦の会場となり、多くの勝負を観てきたからこその棋士への敬意。いかに快適に対局に集中してもらえるかを、繊細な視点で盛り込んでいます。
たとえば、入り口すぐの丸窓。
対局の朝、先に着席した棋士は集中と闘志を研ぎ澄ませて相手を待ち、部屋には緊張感が満ちます。そこに登場する対局者。この丸窓は、相手が入室したことをシルエットと気配で知らせて、落ち着いた雰囲気で対局を始められるようにという気遣いからつくられました。
次は、この畳。よく見ると、縦が長いことに気付きませんか?
映像に畳のヘリが映り込まないようにと、なんと特注で、通常の畳よりも1.5倍の長さでつくったそう。
ほかにも、盤面を写すカメラが天井に埋め込みできる仕様になっていたり、対局者が眩しくないよう照明器具をレール移動させることができるようになっていたり。
「竜王の間」を見学させていただいたあとは、いよいよ夕食の時間です。
なんて豪華なお食事! あけび味噌や、だだちゃ豆豆腐、滝の湯名物のうなぎむき蕎麦蒸しなど珍しい品々に、メインは山形牛のスキヤキ! どれも真心を込めてつくられたことが伝わってくる、あたたかなお味です。
こちらのお宿は環境にも配慮していて、地産地消を心がけ地元・山形の食材や自家農園の無農薬野菜をふんだんに使用するなど、人と自然に優しい宿を目指しているそう。天童駅から見える里山の美しい景観を想いながらいただくと、おいしさもひとしおです。
楽しみにしていたお風呂は、大きな浴室と露天風呂からなる「紅の湯(女性用)」。私、温泉ソムリエの資格を持っているほどの温泉好きなのですが、ここはかなり好みです! 日頃、気づかないうちに溜まったこわばりや緊張がほぐれるような優しいお湯。熱すぎない湯加減なので、長くゆっくりお湯を満喫できます。
1日中雨降りでしたが、天童での素敵な出会いを思い出しながら幸せな気持ちでおやすみなさい。
栄春堂
職人技を間近で見ながら、書き駒体験
昨日とはうって変わって、快晴になりました。
チェックアウトしたら、まずは宿から歩いて5分ほど、将棋駒とこけしのお店「栄春堂」に。
ここは天童温泉街で一番古い将棋駒の実演販売所。お店に入ると、職人さんが駒づくりをしていました!
駒職人は後継者不足が問題になっています。天童市は後継者不足を解消するため、積極的に育成の機会を提供しているそうです。
机の手前が剥げ、中央の色が変わっているのは、そこで駒を回しながら彫るから。代々、ここで駒がつくられてきたことが分かります。
出来上がった駒がこちら。なんともいえない、凛とした美しさを放っています。
将棋の魅力のひとつに、日本の伝統に触れられることも挙げられます。こちらでは、飾り駒の「書き駒体験」ができるというのでチャレンジしました。書く言葉はなんでもOK。
七夕の短冊と同じ言葉を記してみました。職人技を拝見したばかりで、お恥ずかしい(笑)。
ちなみにこちらの「左馬(ひだりうま)」は、福を招くめでたい駒として天童のあちこちで登場します。馬の字が逆に書かれていますが、ウマの逆は「マウ(舞う)」であり、舞いはお祝いの席で催されることから縁起がよいなど、いくつか由来があるそうです。
天童市内散策
街中に詰将棋!? 歩くだけで楽しい天童散策
栄春堂から次の目的地「Ice cafe’ 弘水 -KOSUI-」までは、徒歩6分ほど。歩く道すがら、駒のモニュメントを探します。
さっそく駒の模様が施されたマンホールの蓋を発見。
歩道に詰将棋! 市内には、19箇所の詰将棋が書かれたスポットがあるそう。私には難しくて、写真だけ撮りました(笑)。
電柱にも。
駒形の市内案内マップ。
日常に将棋が溶け込んでいるなんて、本当にワクワクする街です。
Ice cafe’ 弘水 -KOSUI-
老舗製氷店のかき氷とアイス
「Ice cafe’ 弘水 -KOSUI-」に到着しました。1908年(明治41年)創業、製氷店として創業100年以上を誇る「赤塚製氷」によるアイス専門店です。最初はプレハブ小屋で始めたかき氷屋さんが好評で、2016年にカフェとしてオープンしたそう。
「完熟苺クリーム」のかき氷と、対局でも食べられた「天童将棋愛す(てんどうこまあいす)」をいただきます。
かき氷はふわふわの氷の上に、これでもかとシロップとクリームが乗っています。山形県は果物の宝庫。県内の果物や野菜を使った自家製シロップと、ミルクがたまらない!
棋士が対局中に食べる「将棋めし」としても注目されたモナカの「天童将棋愛す(てんどうこまあいす)」は、なかには小豆のアイスが入っています。「棋士がこれを食べて何を思ったか……」なんて想像する間もなく、一瞬で食べ終えました(笑)。
天童駅
駒のお見送りも。また来るからね
そろそろ帰京の時間です。15 分ほど歩いて天童駅に。山形新幹線のホームには、見送りをしてくれるように駒のイラストが。
あらためて、脈々と続く将棋の伝統を支える方々の想いに触れられた貴重な旅でした。伝統を守りながら、未来へ向けてーーそんな視点で、将棋の街への旅を楽しんでみてはいかがでしょう。
JR東京駅
掲載情報は2021年12月1日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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