地域貢献をゲーム感覚で! イベント参加や特産品購入でポイントがたまる「アクトコイン」

地域貢献をゲーム感覚で! イベント参加や特産品購入でポイントをためて地域とつながる「actcoin (アクトコイン)」

観光地として捉えるのではなく、地域の持続性を高めるイベントやボランティア活動に興味を持ち、実際に参加したり、中には主体者となって取り組んでいる人も増えています。でも活動による効果が見えづらく、周囲の理解を得ながら継続していくのが難しいという声もあります。そこで、社会貢献活動を独自のコインで可視化する「actcoin(アクトコイン)」のサービスを活用し、地域活動を「見える化」する新しい取り組みを紹介します。

地域貢献活動を「見える化」。結果がわかるので継続しやすくなる

(画像提供/ソーシャルアクションカンパニー)

(画像提供/ソーシャルアクションカンパニー)

都市部と地方を行き来する多拠点生活者だけでなく、イベントなどを通じて好きな地域に通う人が増えています。このように、地域に住む人や観光で訪れるだけの人ではない地域外の人で、その地域に関わる人々を、「関係人口」といいます。

「関係人口」は、地域の担い手としての活躍や将来的な移住者の増加につながる存在として期待されていますが、取り組みのなかで見えてきた課題も。いちばんの課題は、「関係人口」の統計手法が確立されていないことです。社会の動向を調査研究し、問題解決に取り組んでいるNTTデータ経営研究所のマネージャー古謝玄太さんにたずねました。

「『関係人口』には、地域のイベントの参加者に加えて、特産物を定期的に購入するようなライトなファンも含まれますが、正確な数や行動を把握できていません。そのため地域サイドは、イベントやPR活動でターゲット設定が難しい面があるのです。さらに、『関係人口』が担う地域の持続性に関わる活動は、社会貢献の意味もあるのですが、参加することがどのような成果につながっているのか個人にはわかりにくい。持続的な関係人口創出には、統計的な把握と地域貢献度の可視化が重要と考えました」(古謝さん)

そこで、課題解決の切り札として注目したのが、2019年2月にサービスを開始していたアクトコインでした。

(画像提供/ソーシャルアクションカンパニー)

(画像提供/ソーシャルアクションカンパニー)

アクトコインの企画・設計に携わるソーシャルアクションカンパニーCOO薄井大地さんは、アクトコインのサービスを、「社会貢献が循環する仕組み」といいます。

「アクトコインは、日常のなかの個人の社会貢献活動に対してオンライン上の独自コインを付与します。一人一人のソーシャルアクション履歴がダッシュボードに残り、貯まったコインが『見える化』されます。コインによって自分の活動が価値をもつものになり、自分にも『ちょっと嬉しいもの』になる。『やっても自分にいいことなんてない』『一部の物好きな人がやるもの』という社会貢献活動のネガティブな面を変えるものになればと開発しました」(薄井さん)

NPOなどが主催するイベントやボランティア活動に参加することでコインが貯まる。活動履歴が一目でわかるようになっている(画像提供/ソーシャルアクションカンパニー)

NPOなどが主催するイベントやボランティア活動に参加することでコインが貯まる。活動履歴が一目でわかるようになっている(画像提供/ソーシャルアクションカンパニー)

アクトコインサービス開始から2年後の2021年3月より、NTTデータ経営研究所とソーシャルアクションカンパニーが協働でプロジェクトを開始。プロジェクトは、内閣府の「令和3年度関係人口創出・拡大のための中間支援モデル構築に関する調査・分析業務」として採択され、「関係人口可視化」に取り組む「あなたと地域のつながりプロジェクト」がはじまりました。コンセプトは、「見える化で支える持続可能な地域づくり」。2021年10月17日にキックオフイベントが開催されました。

「地域にとっては、自らの地域への関心層、愛着層を分析することができ、個人にとっては、さらに地域とつながりたいという意欲が喚起されます。関係人口関連施策の構築のための羅針盤としてアクトコインを活用していきたいと考えています」(古謝さん)

アクトコインからイベント参加。コインは次の社会貢献活動に使える

アクトコインの使い方は、アプリをダウンロードしたあと、特設サイトから地域のイベント・取り組みに参加することでコインを獲得。アクションごとの獲得コインが提示されます。日常生活のなかでできるアクションとして、地域情報の発信や地域産品の購入など日々の地域とつながる行動も登録できます。どのプロジェクトの参加者がその後の「発信」「購入」をしているかなどの分析が可能で、アクティブなユーザーには、地域発の商品の特典を予定しています。

2030億枚のアクトコインがオンライン上ある設定で、そのコインを社会貢献活動でイベントパートナーから参加者に配っていきます。2030億枚のアクトコインを配り終わったとき未来が変わるという想定で企画されています。アクトコインの登録者数は、2021年10月時点で1万2500ユーザーを突破。2000万~3000万コインが流通中です。

「アクトコインはお金に交換することはできません。直接自分のために換金はできないけど、コインを貯めることでソーシャルグッドな商品がもらえたり、無料でイベントに参加できたりする特典が少しずつ生まれてきています。いずれは、ボランティア保険に入れるようにしたいです。社会貢献活動をすると、いいことがあると実感できれば持続しやすいでしょう」(薄井さん)

「あなたと地域のつながりプロジェクト」では、19イベントを掲載しています(2021年11月現在)。現在は、「関係人口」創出に積極的に取り組んでいる3地域(千葉県南房総地域、新潟県長岡市川口・山古志地域、福井県高浜地域)を対象に実証中です。

(画像提供/高浜町)

(画像提供/高浜町)

「地域は、イベントの費用対効果がわかることで、大勢にPRするのではなく、アクションしたい人と個別のつながりを密につくることができます。アクトコインを地域貢献活動のインフラにできれば」と古謝さん。現在、掲載しているイベントには、約70名がアクトコインを登録しています。イベント後も継続的に登録してもらえるかが今後の課題です。

フードロス酒場やトゥクトゥクで巡るマルシェでコインがもらえる!

「あなたと地域のつながりプロジェクト」の実証地域のうち、千葉県南房総地域のアクトコイン活用の状況を、南房総市公認プロモーターであり、移住支援や地域課題事業に取り組んでいるヤマナハウスの永森昌志さんに聞きました。

農村漁村に都会の人を送り込むプロジェクト「ちょこっと先の暮らし方研究所」という農林水産省の事業をNTTデータ経営研究所と連携し、南房総地域全体のコーディネートをしてきた永森さん。南房総地域の具体的なイベント開催者の紹介をするなどNTTデータ経営研究所と南房総地域との橋渡しをしています。

もともと、「関係人口」について、南房総地域の抱える課題はどのようなものがあったのでしょうか。

「2拠点生活者は増えていますが、どういうふうに地域に貢献しているかつながりは個々にお任せの状態です。必ずしも住民票異動をともなわない『関係人口』については、数値化しづらかった。自由でいい面もありますが、行政にとっては可視化したほうが効果的な施策を打てます。2021年8月に古謝さんから依頼を受け、SDGsをテーマにしている南房総地域と相性がいいと思いました。電話で密に連絡を取り合いながら、8月下旬にはイベントページを作成しました」

地球に優しい電動の三輪EVトゥクトゥクに乗って地域の農家を巡る。直接こだわりの農産物を買ったり農業体験ができる(画像提供/永森昌志)

地球に優しい電動の三輪EVトゥクトゥクに乗って地域の農家を巡る。直接こだわりの農産物を買ったり農業体験ができる(画像提供/永森昌志)

(画像提供/永森昌志)

(画像提供/永森昌志)

10月に開催されたサーキットマルシェでの参加者の様子。トゥクトゥクは三人乗り。窓がないので開放感たっぷり(画像提供/永森昌志)

10月に開催されたサーキットマルシェでの参加者の様子。トゥクトゥクは三人乗り。窓がないので開放感たっぷり(画像提供/永森昌志)

SDGsをメインテーマに活動している南房総市観光協会が9月に主催したイベント。参加者はアート創作を楽しみながら「海洋プラスチックごみ問題」を学んだ(画像提供/南房総市観光協会)

SDGsをメインテーマに活動している南房総市観光協会が9月に主催したイベント。参加者はアート創作を楽しみながら「海洋プラスチックごみ問題」を学んだ(画像提供/南房総市観光協会)

規格外で廃棄されている農産品や水産品、捕獲したイノシシをおいしく提供。フードロスとなる食材を救いながら南房総の恵みが楽しめる。ヤマナハウスで新たに始まる自給自足スキル講座「ヤマナアカデミー」ではアウトドアや野草の講座を予定している(画像提供/永森昌志)

規格外で廃棄されている農産品や水産品、捕獲したイノシシをおいしく提供。フードロスとなる食材を救いながら南房総の恵みが楽しめる。ヤマナハウスで新たに始まる自給自足スキル講座「ヤマナアカデミー」ではアウトドアや野草の講座を予定している(画像提供/永森昌志)

アクトコインを活用した1回目のイベント「サーキットマルシェ@南房総~EVトゥクトゥクで農家を巡る、新しい様式のマルシェ」が10月30日に開催されました。農産物を買ったり、収穫体験したりするイベントで、参加すると4000コインを獲得できます。

11月20日には、ヤマナハウスによる「ヤマナフードロス酒場episode-1~地域・生命と幸せにつながる未来の居酒屋」が開催されました。次回は来年3月12日予定です。

「もっと都会でアクトコインの知名度が上がるとアクトコイン経由の参加者が増えると思います。何がもらえるかではなく、関係自体が価値なんです。アクトコインが入り口になって、地域をお試しでき、その後に続く地域貢献活動の道筋をつくれたらいいですね」(永森さん)

あなたと地域とのつながりを可視化することで見えてくる、新たな地域との関わり方。「地域の知合いに連絡をとった」などこんなものまで!?」と思うような日常の小さなアクションでもコインがもらえます。まずは、現在のあなたの社会や地域への貢献活動を可視化してみてはいかがでしょう。

●取材協力
株式会社NTTデータ経営研究所
・ソーシャルアクションカンパニー株式会社
・ヤマナハウス
・あなたと地域のつながりプロジェクト
・アクトコイン

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