やっぱり電子書籍は怖い、と思う
今回は安田理央さんのブログ『ダリブロ 安田理央Blog』からご寄稿いただきました。
やっぱり電子書籍は怖い、と思う
「JMangaサービス停止の波紋」 2013年03月19日 『EBook2.0 Magazine』
http://www.ebook2forum.com/members/2013/03/closing-of-jmanga-and-rights-of-the-users/
「日本のマンガ出版社が連携して海外展開を目指」したJ.Manga.comは3月14日、コンテンツの販売(3月13日)、閲覧(5月30日)の全てを停止。
残余のストア・クレジットはアマゾンのギフトカードで払い戻し。5月30日をもって購入済のコンテンツは失われるがダウンロードは許されない。印刷版すら手許に残らない。「誠に遺憾に存じます。」とお知らせは述べている。
海賊版はスキャンで広がり、ユーザーはファイルを失うことはないのに、きちんと払って「利用権」を入手したユーザーには何も残らない。ユーザーに厳しい制限を課しながら、自らは一片の通知で任意にサービスを中止できるという商法の正当性を論証することは常識的には不可能である。
こういうことがあるから、電子書籍はおっかなくて買えないというのも正直なところ。どうしても資料として保存しておきたいものは、紙で買ってスキャンするしかないのだろうか。
本は一回読めば、あとはもう不要になる。ゴミになる(出版社としては、古書店にも売って欲しくないだろう)。そんな考え方をしている人がこういったシステムを作っているのだろう。
これは海外向けのサイトの話ではあるが、国内でも少し前に楽天が「Kobo」発売に伴い、それまであった「Raboo」のサービスをあっさりと打ち切ったという前例がある。こんなことをする会社を信用するわけには行かないので、僕は「Kobo」に手を出すつもりはない。またいつ同じことをするかわからないからだ。
そして、こういう信用できないイメージを電子書籍サービス全般にも持ってしまう。今のところは、比較的安心できるのではないかという根拠のない印象でAmazonのKindleを愛用しているのだが、それでも全面的に信用しているわけではない。本当に保存しておきたい本は、たぶん紙で買う。
電子書籍はまだまだ可能性のある世界だと思うし、個人的には興味がある。自分でもAmazonのKindle ダイレクト・パブリッシングで何冊か電子書籍を販売している。文章を書く仕事をしている一人として、もっと電子書籍の市場はもっと広がって欲しいと切実に思う。
しかし、その邪魔をしているのは、こういうユーザーの信用を落とすような行為をする奴らだ。
電子書籍の敵は、身内にいるのだ。
執筆: この記事は安田理央さんのブログ『ダリブロ 安田理央Blog』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年04月05日時点のものです。
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