Base Ball Bearの若さ漲る傑作『C』にパッケージされた熱情と疾走感

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今週は今年結成20周年、メジャーデビュー15周年を迎えたバンド、Base Ball Bearから彼らの名盤を取り上げる。10月27日にニューアルバム『DIARY KEY』をした彼ら。ご存知の方も多いことだろうが、4人編成でデビューしつつも2016年に3ピースバンドへと移行しており、この間、バンドスタイルの根幹も変わっているので、“さて、どのアルバムを選んだものだろう?”と悩んだだが、ここは素直にメジャー1stアルバムである『C』とさせてもらった。結論から言えば、名盤と呼ぶに相応しい作品であって、ナイスチョイスであったように思う。
 (okmusic UP's)
剥き出しのサウンドとアンサンブル

 

各地で急に気温が下がって、軒並み今シーズン一番の冷え込みとなった10月下旬。東京は12月下旬並の寒さで、同じ日の札幌よりも気温が低くなったとか。そんな時期に『C』を聴くというのは、自分でセレクトしたこととはいえ、とても不思議な体験であったことをまず記しておきたい。場違い…と言うと、あんまりいい意味に受け取られないかもしれないけれども、誤解を恐れずに言えば、居心地が悪いというか、座りが悪いというか、何かそんな感じに近かった。例えるなら、かまくらの中でおでん食べるような感じというかーーいや、寒い中で温かい食べ物はジャストフィットだから、状況は似てるが多分それは間違い。全員が礼服のパーティーにひとりアロハシャツで出席するような感じというか、自分以外が全員高校の同級生同士の宴会に出ている感じというか…どうもぴったり来る喩えが思い浮かばないが、何かそんな感じだった気がする。寒い時期に合わないということはひと言で言えば夏っぽいというふうに聞こえるかもしれないが、それはレゲエやハワイアンに寄っているということではない。そういうことではなく、これはまごうことなきロックである。小細工なし!と言い切ってしまうと若干語弊があるかもしれないが、わりとストレートなロックであることは間違いない。バンドが発する熱量と、それを押し出す圧力が半端ない。これも正しい表現かどうか分からないが、熱々なものを無理矢理に身体にねじ込まれるようなそんな印象なのだ。“それなら肌寒い季節に合ってるじゃねぇか!?”とのツッコミが聞こえてきそうだが、率先して例えた自分からして、もはやどう例えたらいいのか訳が分からなくなってきたので、早速、具体的に楽曲を見ていこう。

 

オープニングはM1「CRAZY FOR YOUの季節」。この『C』に収録されているのはとなっていて、本作に先駆けて“Introducing Album”としてリリースされた『バンドBについて』でもオープニングを飾ったナンバーの別バージョンである。だが、それこそパンクがレゲエになったような大きな変化は感じられず、というか、この楽曲の特徴のひとつと言える疾走感はあえて変えてないようだ。とにかくグイグイくる。ギターは細かい単音弾きで様々なフレーズを聴かせてくれているし、ベースも結構激しく動いている。ドラムはAメロではハイハットを細かく刻みつつ、サビ前ではタムを多用するなど、こちらもなかなか忙しい。各々はなかなか手数が多いのだが、パッと聴いた感じは全員が全員、前のめりにガンガンと進んでいく感じで、そこがかなり特徴的だと思う。何か難しいことをやっているという印象はほぼなくて(実際には決してそんなことはなく、前述の通り、各々いろいろとやっているのだが、)、とにかく各メンバーが音をかき鳴らしている印象の方が強い。みんな、音を出したくて仕方がなくて出しているーーそんな感じだ。

 

その疾走感は続くM2「GIRL FRIEND」でも衰えない。厳密に言えば、M1よりは若干BPMは下がってはいるようだが、落ち着いたところはまったくない。イントロ~Aメロではエレキ、ベース、ドラムのユニゾンで一丸となったバンドサウンドが楽曲を引っ張りつつ、Bメロ以降はパンク的なリズムも聴こえてくる。歌は転調もするが、演奏にはあまりギミックは感じられず、いい意味で剥き出しのサウンドとアンサンブルである。テクニカルではないけれど、だからこその良さが確実にある。
1stアルバムらしいアルバム

 

M3「祭りのあと」は4つ打ちダンスチューン。この時代のギターバンドにあまり詳しくない自分でも、2000年以降は4つ打ちを取り込みバンドが多くなっていった印象があるけれども、この楽曲もそこにカテゴライズされるものであろう。シンプルだが、自然と気持ちを前向きにさせるリズムが、グイグイと聴き手を引っ張っていく。ざらついたエレキギターの音も全体に切迫感を与えている印象である上、グラムロック的なダイナミズムも強めで、独特の高揚感のあるナンバーだ。

 

その高揚感はM4「ELECTRIC SUMMER」も変わらない。キラキラとしたギターサウンドと、清涼感のあるメロディーが全体を貫く、M3とはタイプの異なる楽曲ではあるものの、リズムの疾走感とサウンド総体の圧力のようなものはM4も強い。それでいてサビのコーラスワークが幻想的な上、2番では若干変拍子気味に展開するなど、ひと筋縄ではいかないアンサンブルも面白いところだ。

 

M5「スイミングガール」もまた4つ打ちのビートを基本にしながら、やはりドラムが食い気味に鳴らされる。キャッチーなフレーズを繰り返すギター、ベースもリズムに付かず離れず、我先に…と曲の最後を目指しているかのような、どこかデッドヒートのような演奏を見せる。しかし、冒頭から“グイグイ”だの“迫る”だの似たような言葉ばかり連ねていて、語彙の乏しさに我ながら閉口しているのだが、その辺は差っ引いていただくとして、そんなふうに感じる音像であることは是非ご理解いただきたいと思う。M1からM5まで息つく暇もないバンドサウンドが、まさに怒涛の如く鳴らされていることを強調しておきたい。

M6「YOU’RE MY SUNSHINEのすべて」はややマイナー調で、軽快なギターのストロークとメロディアスな歌は渋谷系にも似た感じ。どこかウエットな箇所もあって、ここでアルバムは少し落ち着くようでもあるが、そう思うのも束の間、演奏に込められた熱がまったく失われていないことにすぐに気づく。サビはやはり情熱的ではあって、圧力を感じる。

 

M7「GIRL OF ARMS」はディレイが深めにかかったギターとベースの単音弾きから始まるミドルチューンで、歌い方も含めてゆったりとしているので、ここで本格的に(?)テンポが落ち着くが、やはり、そうだからと言ってまったりとなるかというと、力強く叩きつけられるスネアドラムの音がそうさせてくれない。間奏のギターソロもそう。ブルースフィーリングがありながらも決して落ち着いた感じではなく、攻めたフレーズを聴かせている。

 

M8「DEATH と LOVE」は、ここまで本作を聴いてくると、“待ってました!”となるようなギターサウンドが爆裂。これまでにも増して本領発揮といった感じの音圧、音像だ。それでいて歌はメロディアスで、どこか憂いを秘めた感じであって、ここまでアルバムを聴いてくると、それもBase Ball Bearらしさであることを認識する。そのサビにも重なってくるギターが奏でる旋律がヴォーカル同様にキャッチーで、これもまた印象的。決して流麗な演奏ではないが、だからこそ、スリリングさが増しているようでもあって、そこもいい。

 

M9「STAND BY ME」はサビ頭だけあって、歌メロがキャッチーかつさわやかであるが、やはり疾走感は損なわれていない。ちょっとニューロマを彷彿させるドライなギターが、ソリッドなビートと相俟って楽曲をドライブさせていく。

 

M10「ラストダンス」は、このタイトル通り、さすがにファンキーでダンサブル。とはいえ、全体的な聴き応えはどこか幻想的でもあって、ここでもまた一筋縄ではいかないバンドの本質が垣間見える。

 

M11「SHE IS BACK」はシンプルなロックンロールと言ってもいいだろうか。タンバリンで疾走感を加速させているロックチューンである。とにかく歌がワイルド! ほとんど声が枯れているんじゃなかろうかと思うくらいにシャウトしているし、それに呼応してか、ギターもやたらノイジーだ。ラストは不思議なディレイで締め括られており、それも含めて、フィナーレに相応しい勢いではないだろうか。

 

…と、アルバム『C』よろしく、こちらも勢いに任せ、あまり文章を整えることなく、そのサウンド面を収録曲順に書き殴ってみた。とにもかくにも、スピーカーから飛び出さんばかりの熱量がどんどん襲ってくる、ロックバンドの1stアルバムらしいアルバムである。
熱量をアップさせている歌詞

 

そうしたサウンド面に加えて、歌詞も相当に情熱的だ。いや、情熱的に感じると言った方がぴったりくるだろう。というのも、『C』収録曲の歌詞はどれもはっきりとそこにある物語が分かるようなものではない。それもおそらく、ある程度意図的に書いているのではないかと想像するのだが、物語以前にその瞬間に放たれた感情の吐露を最優先させているかのような作風である。そんな気がする。以下にいくつか抜き出してみる。

 

《海みたいな彼女が笑った 一口齧った檸檬が成る街で/悪酔いしそうな情熱が 水飛沫あげて、ゆらり、波立った》《CRAZY FOR YOUの季節が ざわめく潮騒の様で/氷漬けの気持ちを溶かすから 海みたいに街中、光って》(M1「CRAZY FOR YOUの季節」)。

 

《思い出して/大空になる/街に消えゆく、/君の逢いたい》《潮風に乗り/駆け落ちていく/人波の中/溺れたとしても》《夏空を観音開きに封切って、零れた水色/オルゴールに詰めた 君が書いた詩に/俺が曲をつけてくように弾ける、降り始めた雨》(M4「ELECTRIC SUMMER」)。

 

《思い出に変わる 永遠に変わる 変わらないこともある/考えてみても、どこにもいない 君はもう》《君がいた夏が消えていくよ だから手を振り/君がいたことが笑えてくるよ そう、泣いた後に》《君がいた夏が…消えていくようだから/君がいた夏が…消えていくようだから 手を振り》(M8「DEATH と LOVE」)。

 

《「夏」が付く名前の少女と 永遠のしばしの別れ/終わりの始まりを始めよう 肌寒い風を合図に/見惚れてた あなたのすべてが揺らぐのを/物語に変わりゆく 君色の記憶》《君色の舞う街に/デスとラヴが渦巻き/踊り続けるふたり/拍手は聞こえない》(M10「ラストダンス」)。

 

《生きる 君が暮らす 海のようなこの都市で/笑え 淡い想いを ロマンチックで何が悪い》《黒い髪なびかせ 駆ける君はサマーガール/笑う君、ふたたび 夢の中で SHE IS BACK》《思い出はくたばらない/あの夏は帰らない/ダイヤモンドは砕けない/思い出は、NEVER DIE》(M11「SHE IS BACK」)。

 

《夏》が多いのは意図的ではあろうが、それ以外にも重複する言葉が多く、勢いに任せて…と言うと語弊があるかもしれないが、パッと聴きには変に推敲を重ねた感じがしないように思う。いや、実際には推敲に推敲を重ねた結果こうなったのかもしれないけれど、いずれにしても、打ち出したいものだけをとことん打ち出している印象がある。言葉もまた圧力が強いのだ。それが楽曲全体、ひいてはアルバム全体の熱量をアップさせているのは間違いない。結論を急げば、このようなBase Ball Bear『C』の特徴は(作者がそれを意図した意図しないに関わらず)“若さ”の発露と見ることができる。最初に聴いた時、個人的にどこか座りの悪さを感じたのは、気温うんぬんではなく、筆者の年齢にあったのだと思う。簡単に言えば、もうこの熱を受け止め切れない…ということなのだろう。何も作品を否定しているのではない。逆だ。これほどに“若さ”を見事にパッケージしたアルバムはあまり聴いたことがない。完全に脱帽なのだ。
TEXT:帆苅智之
アルバム『C』
2006年発表作品

 

<収録曲>

1.CRAZY FOR YOUの季節
2.GIRL FRIEND

3.祭りのあと

4.ELECTRIC SUMMER

5.スイミングガール

6.YOU’RE MY SUNSHINEのすべて

7.GIRL OF ARMS

8.DEATH と LOVE

9.STAND BY ME

10.ラストダンス

11.SHE IS BACK
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