2021年8月6日、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシのFCバルセロナ電撃退団というニュースが世界中で報じられました。現在34歳のメッシは2021年6月30日をもってバルセロナとの契約が満了を迎え、現在も無所属の状態が続いていました。一時期はバルセロナと5年契約で合意するのではないかという報道もありましたが、退団という結果になってしまいました。
そもそもなぜメッシはなぜ退団したのか
メッシが所属するFCバルセロナは、スペインのリーグ「ラ・リーガ」のクラブです。ラ・リーガにはサラリーキャップという制度があり、これは簡単に言うとクラブ全体の収入から選手年俸や移籍金などに使用できる額の限度をリーグ側が決めるというルールです。
実はバルセロナはこのサラリーキャップを大幅に削られました。昨季455億円だったのに対し、今季は210億円にまで削減されたといわれています。つまり、選手やコーチの年俸を下げたり、選手を売ったりして245億円ものコストカットをしなければならない状況になっているのです。
このサラリーキャップをオーバーしたままだと、新規選手の登録ができません。なので今季バルセロナが0円移籍で獲得したセルヒオ・アグエロやメンフィス・デパイなどの選手もこのまま行けば選手登録ができず、試合に出られないことになってしまいます。
メッシは元々バルセロナの選手ですが、先述のとおり、6月30日で契約を満了して無所属になっています。そのためバルセロナには“新規選手”として加入することになるので、サラリーキャップ違反のままではメッシも試合に出られません。クラブ側もメッシも契約には同意していて、メッシは年俸50%カットの条件を飲んだとされていますが、それでもサラリーキャップを削減しきれず、今回の退団となってしまいました。
移籍先最有力はパリ・サンジェルマン
ではメッシの移籍先はどこになるのでしょうか。バルセロナとの蜜月関係を考えると、メッシがスペイン国内クラブを移籍先に選ぶとは考えにくいです。ではスペイン以外でメッシの年俸を支払えるクラブはどこでしょうか。
最有力候補と思われるのがフランスの金満クラブ「パリ・サンジェルマン」(PSG)です。今や世界有数のメガクラブとなりコロナ禍でも積極的な補強を見せています。この夏もミランのGKジャンルイジ・ドンナルンマ、インテルからはモロッコ代表DFアクラフ・ハキミ、レアル・マドリードからDFセルヒオ・ラモスを獲得しています。
フランス代表FWキリア・ムバッペが所属し、バルセロナでもプレーしたブラジル代表FWネイマールも在籍。また、アルゼンチン代表MFアンヘル・ディ・マリア、MFレアンドロ・パレデスなど有力選手やメッシと親交がある選手も多く在籍しています。
本気でチャンピオンズリーグ優勝を目指しているPSGとしても、ラストピースとしてメッシを獲得するというのは十分にあり得ると思います。
恩師がいるプレミアリーグの可能性も
もうひとつ有力候補があるとすれば、イングランドプレミアリーグの「マンチェスターシティ」ではないかと思われます。かつてバルセロナでプレーし、監督も務めたジョゼップ・グアルディオラ監督が指揮するクラブで、バルセロナ時代にメッシの飛躍させたグアルディオラ監督と再びタッグを組むという可能性はあります。
また、マンチェスターシティはセルヒオ・アグエロが退団し新たなFWを獲得しようとしています。ストライカーの確保のためにメッシ獲得に動くことはかなり現実的ではないかと思われます。
バルセロナ残留の可能性もある
メッシがバルセロナでプレーを続ける可能性も0にはなっていません。
メッシとバルセロナの蜜月関係は続いており、今回もバルセロナはメッシと個人間では契約に合意していたことを強調しています。
あくまで問題はラリーガのサラリーキャップで、規制の中で収められればメッシと契約ができる状況にあるということです。メッシのさらなる年俸カットなのか、他の高年俸選手の放出なのかはわかりませんが、条件をクリアできれば一転してバルセロナに残留する可能性も十分にあるでしょう。
メッシは現在未所属選手なので、多額の移籍金がかかりません。0円移籍である以上、本人の意思と契約の条件が合致すればどこのクラブでもプレーする可能性はあります。イニエスタがいるヴィッセル神戸に…ユヴェントスでロナウドとチームメイトに…そんな可能性も0%ではありません。
ユースに加入してから21年、トップチームに昇格してから17年。35のタイトルと、公式戦778試合に出場し672ゴール305アシストを記録したマシアの英雄はこの夏どんな決断をするのでしょうか。
(Written by 大井川鉄朗)