電波圏外エリアでLPWAを活用したIoT通信インフラを構築するフォレストシー
株式会社フォレストシーは「日本の隅々までIoT通信圏外をゼロへ」をスローガンに、LPWAを活用したIoT通信インフラを構築しています。同社はこの事業を「里山通信」として展開。中山間地域の獣害対策や安全な労働・生活環境の実現、防災・防犯や一次産業支援などに役立つ製品・サービスを開発・提供中です。今回はそんな同社の取り組みにフォーカスしてみましょう。
北アルプス登山道にIoT通信インフラを
同社の直近の大きな取り組みといえば、北アルプスの携帯電波圏外エリアにおけるIoT通信インフラの構築に向けた実証試験です。これは、民間企業主体で行う登山者の安全・安心の確保に向けた取り組みで、北陸電力株式会社、国立大学法人富山大学、五十嶋商事有限会社との4者共同の実験となります。第1段階として、2021年6月28日と7月5日に北陸電力の有峰ダムにLPWAを活用した通信インフラ機器の親機・中継機を設置。7月16日~18日には山小屋3箇所(太郎平小屋、薬師沢小屋、薬師岳山荘)に中継機を増設しました。
そして、フォレストシーが開発した、スマートフォンの専用アプリと無線接続してテキスト・位置情報・SOS信号を送受信できる端末「ジオチャット®️」で検証エリアの主要登山道にて位置情報を中継機・親機経由でクラウドにアップロードすることを試み、ほぼ不感地帯なく通信できたといいます。
8月上旬に予定している第2段階では、さらに3箇所の山小屋(スゴ乗越小屋、高天原山荘、雲ノ平山荘)に中継機を増設し通信テストを実施。第3段階では、現在インフラを構築している富山県側から県境を越えて長野県側に位置する山小屋とも連携して、より広域なIoT通信インフラの構築を提案していく見込みです。
「GEO-WAVE」を軸とした製品・サービス
フォレストシーの「山里通信」の核となるのは、「GEO-WAVE(ジオウェイブ)」という独自開発の無線規格。これは、LPWA通信規格の中でも920MHz/250mWと高出力で、山間部の険しい地形でも回り込みや反射といった電波特性を活かしてワンホップで遠距離通信を実現します。また、中継機能にも対応し、携帯圏外でも手軽に通信エリアを広げることができるため、双方向通信によって利用者のコミュニケーションや機器の遠隔制御などを可能にするようです。
同社は、2021年1月に「GEO-WAVE」を用いて愛媛県久万高原町の下水用マンホール内に設置した水位センサーのデータを町内全域に構築したLPWA通信網の中継機を経由してクラウドシステムへアップロード。従来、マンホール内の調査は人が直接行うか専用の通信機能付きマンホールを使用するのが一般的で、既設のマンホールでのLPWA通信による水位データの取得は全国で初めてのことだったようです。
同社は他にも、LPWA無線対応カメラ「GeoCam(ジオカム)」を開発。「GEO-WAVE」を活用し、中継機・親機を経由して携帯電話の通信圏外から撮影・送信した画像をクラウドシステムにアップロードすることに成功しています。
(文・Higuchi)
ウェブサイト: https://techable.jp/
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