映画『100日間生きたワニ』上田慎一郎監督&ふくだみゆき監督に聞く「原作の語らない魅力のようなものを、できるだけ映画にも反映できたら」
昨年、社会現象を巻き起こした4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」(著:きくちゆうき)が、タイトルを改め『100日間生きたワニ』としてアニメーション映画化。現在公開中です。
ワニと過ごした愛おしい100日間と、それでも続いていく明日を生きる仲間たち。主人公ワニ役を神木隆之介さん、ワニの親友のネズミ役を中村倫也さん、モグラ役を木村昴さん、センパイ役に新木優子さん、イヌ役にファーストサマーウイカさん、そして映画オリジナルキャラクター・カエル役に山田裕貴さんと豪華キャスト陣が集結しています。
本作の監督を務めたのは、上田慎一郎監督とふくだみゆき監督。ご家族でもあり、10年以上一緒に作品を作ってきたお二人に、本作へのこだわりやアフレコで工夫した点などお話を伺いました!
――本作楽しく拝見させていただきました。原作となる「100日後に死ぬワニ」は4コマだからこその余白があり、それをアニメーション化することは難しかったのではないかと思います。
上田監督:1話完結の四コマ漫画をどう再構成して一つの物語にするかというところで、最初に、脚本面でたくさん試行錯誤、トライアンドエラーをしました。そのままやると、ぶつ切りの短い物語が連続するダイジェスト感があるものになってしまうので、それをどうやって一本芯を通して流れる物語にするかっていうところに時間をかけました。
ふくだ監督:普通のアニメよりも間(ま)を長めにとった会話だったり、セリフとかモノローグで説明しすぎないということを意識して、原作の語らない魅力のようなものをできるだけ映画にも反映できたらな、と思いました。
――アフレコがアニメーションぽく無いというか、「自然な会話を近くで聞いている様な感じ」というか、私はそう感じました。意識した部分はありますか?
上田:一番最初に僕が企画書を出したときは、実写化の企画だったんです。最終的に今の上田・ふくだの共同監督でアニメ映画という形になったんですけど、もともと僕は実写畑ですし、ふくだも実写とアニメ両方作っていて、アニメだけをずっと作ってきた人間ではないので、“THEアニメ”というものを目指しても仕方ないだろうという思いがあったんですね。
ふくだ:上にはたくさんいらっしゃるので。
上田:そう、上には上のアニメーターの方達がいっぱいいらっしゃるので。自分たちだからこそできるアニメを作ろうと、素朴な邦画のようなアニメを作ろうとなりました。それもキャストの方に伝えて、なので、「このタイミングで、このセリフをこういう風に、こういうトーンで出してください」と、バキっとアニメっぽくするのではなく、邦画のようなある種の生っぽさを持たせて演じて欲しいと伝えました。バランスはありますけどね。生っぽすぎてもっていうのはもちろんあるんですけど。
――その自然なやりとりが、あたたかみのあるアニメーションにすごく合っていました。あたたかみのあるキャラクターのテイストと、木々など自然のリアルな描写の融合も綺麗でした。
ふくだ:すごく線の少ないアニメなので、その中で口角をちょっと上げるとか、ちょっと下げるだけで顔の印象がだいぶ変わるんですよ。そういうところで表情とか間、心情を表現する、こことここのセリフの間で瞬きをさせることでちょっと感情を読み取ってもらう、というような。線の少ないアニメだからこそ細かい表情で人間味というか、キャラクターを表現できたらいいなと思ってやりました。すごく派手な動きがあったり、あんまり表情がコロコロ変わるタイプではないけれど、そういった描写で感じてもらいたい部分がありますね。
上田:この密度感をどうするかって最初に話しました。例えばキャラクターたちに影を入れるのか、入れないのか、とか。今回は入れてないんですけど。線の太さをどうするか、とか。
ふくだ:通常のアニメよりも結構太めの塩梅になっていて。
上田:背景とかも、一般的なアニメはアウトラインってないんですよね。
ふくだ:あってもすごく細いですね。
上田:今回は結構な太さで背景も書いてもらっていて、100ワニの世界観をキャラクター、背景のありかたをどうするのかということを最初にたくさん話し合いましたし、作っていく中で何度も微調整していったことではあります。劇中では桜のシーンや、雨が降るシーンがあるんですけど、やっぱり動くものがあると、“動いてない”ということが際立つということがあって。前半は桜が出てきますけど、後半はそれが雨に変わって、そういった動くものが欲しかったっていうのはあります。
――お二人が監督、脚本でここまでご一緒したことは初だと伺いました。共作で大変だったことや、改めて、お互いの作品作りをご覧になってすごいなと思った所があれば教えてください。
ふくだ:もともと10年一緒に映画を作っていたので、共同監督といって同列になったからといって、喧嘩するとかもなかったですし、同じだけの熱量で相談できる相手が近くにいるっていうことで、メリットしかなかったです。
上田:お互いの得意なこと不得意なことが違うので、そこを補い合うようにして作りましたね。 僕はやっぱり、(ふくだは)絵が上手いんだなと改めて思いましたね。
ふくだ:なるほど(笑)。
上田:最初はアニメを作っているプロの方々の絵を確認して、「こうゆう風に直してください」って戻してたんです。でも、途中からふくだも絵を書くようになって、僕が気づかないことにめちゃくちゃ気づくんですよ。「ここのカットのカエルは顔がちょっと他から離れすぎている」とか。一般的な感覚からすると分からないくらいの細かな違いが瞬時に分かる。やっぱりずっと絵を書いている人なんだな、絵が上手いんだな、絵に対する感度がすごく高い人なんだな、というのが一番大きく感じたところです。
ふくだ:(上田監督は)すごく細かいし、すごく熱量がある人だということをもともと知っていたけど、今回改めて思いました。上田は今までの人生でずっと人を巻き込んで生きてきた人なんですけど、「だからみんな巻き込まれていくんだな」っていうのをまざまざと見せつけられたというか。ちゃんと説明をして、ここがこうだからこうしたいというのを、すごくこだわりを持って伝えつつ、周りが「いやぁ、今からそれはちょっと・・・」となっても押せる強さ、監督としての芯があって、我を通せる。そこは見習わないといけないところと思いました。
――お二人がお互いの力を活かして出来上がった一本なのだなと、すごく感じました。今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!
(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会
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