「羽生善治 vs 川上量生」対談
今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
「羽生善治 vs 川上量生」対談
「「羽生善治三冠と川上量生ドワンゴ会長のスペシャル対談」を観た。」 2013年03月15日 『将棋観戦記』
http://shogiwatch.blog63.fc2.com/blog-entry-1921.html
なかなかこの対談面白かった。めずらしく動画を食い入るように見入ってしまった。見終わってやたら疲れた。これはあれだな、短距離走で走ってる間は疲労の自覚がないけど、走り終わった後にどっと疲れが襲ってくるような。
この後岡田斗司夫との対談でkawangoが疲れてた理由がわかった(苦笑)。はたで見てるだけでこんなに疲れるんだから。
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羽生善治ってこんな明るくしゃべる人だったのか。ってかなんかkawangoにしろひろゆきにしろ、岡田斗司夫にしろ、みんな声が高くね?(笑)。羽生善治って1990年前後に新進気鋭の棋士として騒がれた頃、同僚が「最近将棋界ですごい人が出てきてね~」とか話しているのを聞いただけで、あまり知らないんだよな。最初みんなが盛んに「ハブ名人」とか言ってるから、沖縄のハブ取りの名人かとマジで思った。あれから20年経ってるのか。
棋士なんだから、もっと気難しく偏屈な話し方するのかと思ってたら、なんかチョー軽い。考えてみたらコンピュータ将棋の研究の歴史って、ちょど羽生善治の人生と被ってるのかな。森田将棋とか出始めた頃だよね。
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つーか対談の中身を書きたかったのだが、脳の疲れが残ってるな。kawangoが悶えてて面白かった。なんかなまじ自分が興味ある分野だから、対談という形式そっちのけで本気で、一生懸命考えてたというか。
まあせっかくの面白い相手(羽生善治)との対話のチャンスだからと、脳みそ全開で、その分会話の方に気が回らなかったというか。kawangoのめり込み過ぎw。でもそうなるよな、だって羽生善治の話、ホント面白かったもん。
後から分析するといい手だけど、人間だったらその場では絶対、生理的に思いつきそうにない手、云々というのが興味深かった。人間が持っているアルゴリズムでは導き出せない手ってのが果たしてあるのか。しらみつぶしに検索して初めて見つかる手。
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まあでもそれは科学とかも同じかもしれない。量子の振る舞いとかって、自然という人間の外部にあるものを一生懸命モデル化しようとして初めて「思いつく」モデルであって、そういうものが外部に存在しないなら、人間の内部からだけでは絶対に生み出せないような。
でも基本的に将棋はすべて人間の頭の中だけで完結できるはずなのにね。でもこれも数学だって不完全性定理とか、全部ロジックだけでできているはずの数学さえ、人間の常識を超えるからな。やっぱ人間が「思考」だと自覚している範囲が、実際よりもかなり狭いのだろう。
その意味では最初の方のkawangoの、人間の思考のうち理屈が付けられたものだけが、論理的思考と呼ばれ、理屈が付けられなかったものは直感とされる(言い回しははっきり覚えてないけど)ってのにつながるな。
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将棋の話だと、羽生善治に言わせると、見た瞬間に「この手とその先は考えなくていい」という思考を磨くことで、人間は組み合わせ計算量の爆発から逃れている。一方コンピュータは力任せにとにかく深く深く先読みして計算量を増やす方向に発達して来ているというのが、興味深い。というか出てきた話はすべて興味深いのだが。
あとはコンピュータに棋風はあるのか?と。kawangoが羽生善治こそ棋風がないと言われているが、とナイスつっこみ。これは圧縮のレベルだと思うのだよね。基本的にデータの特徴がなくなるまで圧縮するのが優れた圧縮アルゴリズム。圧縮後のデータに「こういう傾向がある」と読み取れるなら、まだその分が圧縮できるわけで、極限まで圧縮されたデータというのは限りなくホワイトノイズに近づくはず。
ということで十分発達したコンピュータ将棋は棋風がない、ちょっとやそっとではその偏りが読み取れないと思われる。んで人間でそれに一番近いのが羽生善治ということなのだろう。
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CADソフト、むかしの日本製のCADソフトは一生懸命アルゴリズムをチューニングしてちまちま高速化していた。一方アメリカ製のAutoCADというソフトは、日本製に比べるとソフトの処理はあまり速くなかったが、計算を高速化する外付けのハードが出た。AutoCADはシェアが世界一なのでハードメーカーはAutoCAD用のハードは作ってくれるけど、日本製のCADソフト向けには誰も作ってくれなかったので、結果的に日本製のCADは負けてしまった。
というkawangoの話。そういえば当時CADを使っている同僚がそんな話しをしてたような。専用ハードを買ってもらえると速くなるんですけどね~と。どういうハードなのか結局聞きそびれたが。浮動小数点演算のコプロセッサみたいなものだったのだろうか。いまではウソみたいな話だけど、むかしのCPUって浮動小数点演算ができなかったんだよね。80386とか80486とかの頃か。
で、まあなまじソフトを工夫するよりもハードの発達の方が影響が大きいんじゃないのという話で、羽生善治とkawangoで意見が一致していた。確かにね~。むかしポリゴンとかの隠面処理をいかに効率良くやるかみたいなアルゴリズムを勉強したことがあるけど、結局は3D処理がここまで発達したのはGPUというハードによる力任せの処理だし。なんか「この計算は省略できる」とか、地道に計算量を省くアルゴリズムを調べてたのが馬鹿みたいというか…ぐぬぬ。
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そう考えると前述の羽生善治の「如何に先を読まないか」を考えるのが人間の特徴という話も、結局は意識してないだけで膨大な計算をしてる(意識しないほど瞬時に)ってことなのだろうか。まあ、この辺はまだまだよくわからんのぅ。羽生善治もコンピュータと人間の特徴は正反対の方向に向かってるようだけど、実は無限の彼方では同じ所で出会うのか?みたいな疑問をなげかけている。
プラス無限大とマイナス無限大は数直線で表すと正反対の方向だけど、円周上の点にプロットすれば同じ場所なんだよね。円周の0時の方向にプラスゼロとマイナスゼロがあり、右回りにはプラスの値が増えていく。左回りにはマイナスの値が増えていく。6時の方向はプラス無限大とマイナス無限大が同居している。「tan θ」を計算すれば、有限のθ(0度~180度)に、プラスマイナス0からプラスマイナス無限大までのすべての数値を対応付けることができる。
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kawangoが参加する対談はすべて生対談になる不思議。最初ブログのタイトルを「羽生善治 vs 川上量生対談」って書いて、見なおしたらあれ「生対談」になってるなと、危うく「生」を削除しようと思いましたよ、私は。どこの「きのこる先生」ですか。司会者に「株式会社オダンゴ会長」とか紹介されるし。
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追記
コメントでは対話の自分の手番で発言に詰まるかどうかで勝ち負け判定されていて羽生さん優先になっていた。まあ勝ち負けなんて意味ない対談とは思うけど・・・(続く)。
http://twitter.com/kawango38/status/313036955984211968
(続き)羽生X川上対談のハイライトは最初(当然専門ではない)コンピュータ工学的な発言を自分からするのに慎重だった羽生さんが巡回セールス問題を持ち出した瞬間だったと思う。あの時、羽生さんはこの相手のレベルなら大丈夫と見切ったのでしょう。まさに詰んだ。
http://twitter.com/kawango38/status/313039134979665920
笑った。なんか被害妄想っぽい気がしないでもないけど(笑)、こういう捉え方もまたアリかな。面白い。敵陣の王の喉元に王手!と(笑)。秒読みするとおもしろいかも。10秒…20秒…25秒、6、7、8…www
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年03月22日時点のものです。
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