「切歯扼腕」とはどんな感情をあらわす四字熟語？その意味の由来は？

2021/06/04 22:06 FUNDO

切歯扼腕は、歯を食いしばり腕を掴むという語句からなる感情をあらわす四字熟語です。
では、この切歯扼腕はどのような感情をあらわすのでしょうか。
直接的では無いので、いまいちその点が見えてこない言葉になっていますよね。

そこでここでは、「切歯扼腕」がどのような感情を指すのかご紹介します。
また、その由来となった逸話も解説します。

「切歯扼腕」とは

切歯扼腕は、「せっしやくわん」と読みます。
まずはこの言葉があらわす感情について見ていきましょう。

「切歯扼腕」があらわす感情

切歯扼腕は、甚だしく怒り、非常に悔しく思うことの例えです。
つまり、怒りや悔しさを強くあらわした言葉となっています。

しかし、切歯扼腕という字面を見る限り「怒り」も「悔しさ」も見当たりませんよね。
では、具合的に切歯扼腕はどのような行動をあらしているのででしょか？

「切歯扼腕」でおこなわれている行動

切歯扼腕は、「切歯」と「扼腕」というこうどうをあらわす語句が組み合わさっています。
「切歯」は歯ぎしりや歯を食いしばることを、「扼腕」が自分の腕や手首を反対の手で握りしめることをあらわした言葉です。

「切歯扼腕」の使われ方

切歯扼腕は、歯ぎしりして腕を掴むほど怒ったり悔しがったりすることをあらわす四字熟語という事になります。

例えば、血の滲むような努力をしたにも関わらず結果が出ないときなどに用いられます。
また、自信のある分野でライバルに追い抜かれてしまったときなどにも使います。

怒り狂うほど悔しいことをあらした言葉が切歯扼腕です。

「切歯扼腕」の由来

では、切歯扼腕はどこから来た言葉なのでしょうか？
ここからは切歯扼腕の由来となった話について見てみましょう。

切歯扼腕は「史記」に由来する言葉

切歯扼腕は、「史記」の「張儀伝」にある言葉から来ています。
この「張儀伝」には、「是故天下之游談士莫不日夜搤腕瞋目切齒以言從之便以說人主」という言葉があります。

これは魏の哀王に対して張儀が「秦に対抗するには合従でなく秦と連衡（れんこう）すべきだ」と説いた際の言葉です。
合従とは、最も西国にあり強国だった「秦」に対して、「魏・韓・趙・斉・楚・燕」の6国が同盟を組み秦に対抗しようという考えです。
それに対して、張儀の考えである「連衡」とは、魏が秦と同盟を組むことで、秦の攻撃目標を他国に向けさせようというものでした。

この案を提案した際、張儀は「合従案の支持者たちは大言壮語のものばかりだが、しかし、世の中の遊説をうまくするものは、怒りに怒り自分たちの案がいかにいいかを説く。こんな激しい言葉を何度も聞いていれば、主君である哀王も合従案がいい案だとおもうことだろう」と、感情論で説かれた合従案に対して批判的な言葉を口にし、魏を去っていきました。

つまり、結果として張儀の連衡の提案はうまくいかなかったわけです。
そして、張儀による合従策を支持者による発言のあり様を描写した一節から「切歯扼腕」という言葉が生まれたとされます。

本来は「目をむき出す」もあった

史記では、合従策の支持者がいかに合従策がいいかを言い立てていたかを「搤腕瞋目切齒」という表現しています。
これは、「腕を握りしめ、目をいからせむきだすように見開き、歯を食いしばる」ことをあらわしています。
つまり、もともと切歯扼腕には「目をいからせむきだすように見開く」という動作も含まれていたという事になりますね。

しかし、四字熟語として伝えられている現在では、この「瞋目」の部分は省略されています。

「切歯扼腕」の類義語

ここからは切歯扼腕の類義語を見ていきましょう。
同じように我慢できないほどの怒りや悔しさをあらわした言葉は多々あります。

地団太を踏む

「地団太を踏む」は、地面を踏み鳴らして怒りや悔しさに身悶えすることの例えです。
地団太という言葉自体に、足で地面を何度も踏みつけるという意味が含まれています。

どうにも感情を抑えることができないという点では「腸が煮えくり返る」という表現も似ています。
共に、切歯扼腕と似た状況を指す言葉です。

痛恨の極み

「痛恨の極み」は、これ以上ないほど残念であることの例えです。
怒りというよりも悔しさがより勝った表現となっています。
特に重要な局面でミスをしてしまった際などに使用される言葉です。

まとめ

切歯扼腕は、歯を食いしばるほど怒り悔しむことの例えです。
歯ぎしりをして腕や手首を掴む行動をあらわしています。
我慢できないほど怒りや悔しさを滲ませるような状況で使用する言葉となります。

類義語は「地団太を踏む」や「痛恨の極み」などです。