山形【肉旅】自家飼育のジンギスカン、地鶏そば、馬肉寿司を堪能
山形で「肉」といえば米沢牛が有名ですが、それだけじゃないんです。鶏肉、馬肉、そして羊肉も絶品のスポットがあるんですよ。日本各地のローカルフードを愛するライター、白央篤司が今回は「肉」をテーマに、山形を旅します。
東京駅
みちのく肉の旅へ出発
山形新幹線がJR東京駅を出発して上野、大宮、宇都宮と過ぎ、JR福島駅を越えたあたりから、山々がグッと近くなります。長い長いトンネルを抜けるたび、「奥羽山脈がいま自分の上にあるんだよな……」と感じ、ちょっとふしぎな気持ちに。私は小学校時代を山形の隣、宮城で過ごしました。「奥羽山脈は東北の背骨」なんて、社会の先生が言ってたなあ。その背骨の下を列車が行く。
日月庵(ひげつあん)
蕎麦店で山形地鶏の滋味(じみ)を感じよう
東京駅出発から約3時間、JR山形駅に到着! 東京駅ではバタバタして新幹線を撮れなかったので、ここで撮影しました。ブルーがあざやかで、カッコいいぞ。そして山形駅の発車メロディ、花笠音頭なんですね。
最初に目指したのは山形駅西口から徒歩5分ほど、「日月庵(ひげつあん)」です。「山形地鶏を使った蕎麦が評判らしいですよ」と編集さんが教えてくれて、気になっていたので。
入ってカウンターに座り、しばし品書きとにらめっこ。「一押し!」と力強く書かれているのは……やっぱり山形地鶏だな。ようし、まずは単品でいってみよう。
香ばしく焼かれた山形地鶏のモモ肉とムネ肉。歯ごたえ、しっかり!
「山形地鶏のおいしさは、歯ごたえの良さですねえ。噛めば噛むほどにおいしさが出てくるんです」と女将の山口亜紀さん。鶏の脂を吸ったネギがまた立派で、辛みも香りも際立ちます。ああ……ビールが飲みたくなるッ。
「山形地鶏そば」も続けてオーダー。蕎麦は二八蕎麦で、朴実な味わいというのか、蕎麦の風味がダイレクトに感じられました。蕎麦つゆは鶏に負けないうま味を持ちつつ、くどさとは無縁のすっきりした仕上がり。
山形は日本各地にある蕎麦どころのひとつで、山形市内だけでも蕎麦店が数多くあると聞きます。日月庵さんは創業16年になるとのこと。
「上喜元」や「楯野川」など山形の銘酒も揃っていました。昼からつまんで飲んで、なんて楽しみ方もいいだろうな。
食後は腹ごなしをかねて、日月庵から徒歩2分ほどの「霞城公園」へ。ここはかつて山形城があったところ。広大な園内に、一部その名残があります。
園内にある「山形市郷土館(旧済生館本館)」、前々から来てみたかったんですよ! 1878年(明治11年)に建てられたかつての山形県立病院で、国指定重要文化財。館内は無料で見学できます。明治モダンというのか、そのユニークなデザインとともに、文明開化の残り香を堪能しました。
クラシックな建物が好きなら、霞城公園から徒歩15分ほどの山形県郷土館「文翔館」もおすすめ。こちらも国指定重要文化財で、かつての県庁舎と県会議事堂。1916年(大正5年)に建てられ、現在は県の郷土館になっており、またも無料で館内が見学できます。先の山形市郷土館といい、太っ腹だなあ……山形!
そんなこんなで市内をたっぷり散歩して、気がつけばもう夕食どき。肉旅の夜は馬肉をいただきますよ。「馬かもん 山形店」を訪ねました。
名物の馬肉料理がいろいろあるのですが、今回は馬肉のおまかせ寿司をオーダー。握り6カンに細巻きが1本ついてきます。この日はモモ、霜降り、ヒレ、ハラミ、ロース、霜降りのあぶりの6種類。しっかり厚めに切られて、それぞれ食べごたえがありましたよ。
細巻きはモモ肉。上から見ると少量っぽいけど、しっかり中に詰まってました。馬肉って脂ッ気はまったく強くないのにうま味が濃くて、それでいて全体にスッキリしている。寿司めしとも相性いいものですね。生肉を味わう楽しさ、久々に満喫しました。
やっぱりここは山形の日本酒を合わせたく、米沢市の酒「裏・雅山流 香華」を。華やかな香りで後口はさっぱり、キレがよくて、きれいな仕上がり。
品書きには気になるものがたくさん。馬肉の焼肉に馬肉の餃子、馬肉の串揚げや馬モツの煮込みなど、馬肉メニューの豊富さに驚きましたよ。また来てあれこれ食べたい……。
さあ、今夜はここまで。山形駅近くのホテルで寝ます。明日もいっぱい食べるぞ。
山形駅
自家飼育100%の絶品ジンギスカンをいただく
肉旅の2日目、山形駅から奥羽本線に乗ってJR村山駅を目指しました。県内でも評判が高いというレストラン「ひつじや」に向かいます。ジンギスカンが名物のお店で、提供される羊は、すべて自家飼育されているのだそう。
ひつじや
まず駅から山々のパノラマを楽しんで
山形駅から普通列車で約40分、村山駅に着きました。ああ、山が近いなあ。駅舎2階から周囲の山々がよーく見えるんですよ、雄大そのもので、「山形」に来たんだなとあらためて感じます。そして村山駅、バリアフリーが整っていたのも印象的。
さあ、「ひつじや」さんを目指しましょう。
駅からはタクシーでざっくり15分かかりました。3月の半ばぐらいに訪ねましたが、雪がまだまだ残っていましたね。
店内の雰囲気がね、素敵だったんですよ……。ヨーロッパのロッジってこんな感じなんでしょうかね。なんと、このログハウス自体がご店主の手づくりとか。
さあ来ました! 平日限定の「ジンギスカンランチセット/ごはん、味噌汁つき」(税込3,300円)。肉と野菜が別々に供され、まず鉄板を熱して羊の脂をなじませ、自分で焼いていくスタイルです。
「野菜をしいて、その上に肉をのせ、蒸し焼きにするのがおすすめですが、肉を直接焼いていただいても。お好みでどうぞ」と店員さん。
だんだんと食欲をそそる香りが立ちのぼって、たまりません。ああ、焦らされるなあ。ちなみにソーセージも羊肉で自家製のもの、野菜は地元で収穫されたものを中心に使われているそうです。
ほどよく焼けたところで食べてみれば、はい……語彙を失いました。おいしかったんだ、とっても。羊の脂って、なんとも甘みが濃いものなんですね。独特の香りは確かにあるけど、嫌な感じがまったくない。食べる側の興奮を誘うような香りとうま味。うーん、わざわざ訪ねる人が多いというのも、心から納得!
焼いたジンギスカンと、羊肉のうま味をまとった焼き野菜でやるビール。ああ、天国気分。そしてビール用のコップ、いいでしょう? なんだかタイムスリップして、北欧の山賊になったかのような。
特別に、冷蔵庫で寝かせている羊肉を見せていただきました。種付けから出産、飼育、そして調理までを行っている「ひつじや」さん。店に来る途中、飼われている羊たちを目にします。命をいただくということが、とても身近なお店でした。羊肉はジンギスカンのほか、骨はスープにしてカレーのベースにしたり、端肉はソーセージになったりと、あますところなく使われます。
ごちそうさまでした。しっかりと、いただきました。
山形駅
おみやげは肉弁当を買って旅のフィナーレ
旅もそろそろ終わり、奥羽本線で再び山形駅へ。そうそう、「ひつじや」さんへ行かれる際は、村山駅で帰りの列車の時間をしっかりチェックしておいてくださいね。本数が少ないので。
肉旅なので、おみやげも肉がいいな……と探していたら、Twitter経由で山形に住むフォロワーさんがおすすめしてくれました。それが、「九十九鶏弁当 鶏肉の巻き物入り」(税込918円)です。県民の間でかなり人気のものらしいですよ。
鶏の照り焼きと鶏そぼろがみっちり。ごはんは山形産ササニシキで、煮物などの副菜も充実。帰宅してゆっくりいただきましたが、おいしかったなあ……。山形駅に隣接するS-PAL山形2階、「清川屋」さんで購入しました。早めに売り切れることも多いそう。
肉を軸に山形を旅して、いろいろな魅力に触れることができました。山形で肉といえばなんといっても米沢牛が有名ですが、いやはや鶏肉も馬肉も羊肉もすばらしいものですね。もちろん野菜と米もうまかったなあ……。 今度は酒田の方もめぐってみたいぞ。港町として有名で、また独特の食文化が栄えてるらしいですね。山形、また必ず来ます!
東京駅
掲載情報は2021年5月11日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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