第105回 『アイス・コング』

『アイス・コング』
2006年・アメリカ・95分
監督/パトリック・ドナヒュー
脚本/ショーン・ドナヒュー
出演/ヘザー・デヴァン、ニック・オレフィス、ジェーソン・デヴァンほか
原題『the Abominable…』

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 5月14日(金)に公開予定の『ゴジラVSコング』が新型コロナのせいで延びた! すでにアメリカほか各国で大ヒットを記録しているが、大迷惑にもネット上で重要なネタバレが流れているようだ。筆者と怪獣仲間達は劇場鑑賞まで懸命に耳を塞いできたが、何人かはググってしまいメチャメチャ後悔している。コッチも「言うなよ、言うなよ」と必死の防戦だ(笑)。早く公開してくれないと、心ない奴にポロッと言われてしまいそうで怖い!

 さて、そんな鑑賞前の心構えを全く必要とせず、むしろこれからDVDを観ようという方々(いないと思うが)に「待った」をかけ、時間の無駄遣いを防いであげたい作品が今回の『アイス・コング』(筆者は楽しんで観たけどね)。監督はパトリック・ドナヒューで脚本はショーン・ドナヒュー。よくある兄弟・夫婦・親子などによる家内制手工業パターンだろうが、出演者までヘザー・デヴァンにジェーソン・デヴァン。誰一人ウキペに出ていないので彼らの関係は詳細不明だが、気にせず内容に行ってみよう。

 北極海で操業中のアラスカ漁船が、流氷の中に閉じ込められた推定身長18メートルという巨大猿人の死骸を発見する。現地にいた友人から知らせを受けたベテラン動物カメラマンのジミーは、マスコミが騒ぎ出す前に撮影計画を立てる。そんなジミーにはアリーという娘がいて、親の影響か動物好きが乗じて動物保護協会で活動している。ある日アリーとメンバー達は、霊長類資料センターで秘密裏に行われているサルを使った生体実験の現場に踏み込む。これに慌てたスタッフ達は証拠隠滅を謀り、実験室内に用意していた焼却炉へと資料や実験動物のサルを投げ込む(ひどい!)。

 その夜、センターに動物を売り捌いていた密猟者ジャコが仲間とバーで飲んでいると、偶然いたジミーが氷漬け猿人(アイス・コング)の話を友人としている。盗み聞きして一攫千金を思いついたジャコは、ジミーを誘拐して協力させようとする。だが生きているコングもいるだろうと、いつの間にか捕獲する話に飛躍していて、それに反対するジミーはジャコのアジトで揉み合いになり高所から足を踏み外し転落死する。ジャコは自分を追ってきたアリーを気絶させ、船に乗せ出航する。

 アリーを加えた6人はアイス・コングを探して雪山を歩くが、ロケ地ではなくドライアイスか何かで霧を流した背景写真の前で役者が演技している。ここでいきなり1メートルほどの岩石がビュンと飛んで来て一人に命中(即死)。慌ててアリーは足を滑らせ崖から落ちそうになりザイルに宙吊り。するとコングらしき白い毛の生えた巨大な手がザイルを掴んで助ける。

 映画開始50分、雪山写真をバックに(セットくらい作ろうよ)ようやく姿を現すシロクマのように真っ白なアイス・コング。さっきから「一緒にテントで過ごさないか?」とアリーを口説いていた死亡フラグ男が、やっぱりコングに殺される。ジャコはコングを麻酔弾で眠らせ、巨大な檻に入れ売値300万ドルで交渉成立したサンフランシスコ動物園まで輸送する。ちなみに船も甲板も写真で、霧に加えて「チュンチュン」と鳥のさえずりを流しているのが涙ぐましい。

 だがコングは檻を壊して船から脱出し、泳いでサンフランシスコ市に上陸する。超高層ビルのテッペンによじ登ったコングに、アリーがヘリコプターからダイブして飛び移る(いやムリでしょ)。それを掌でキャッチしたコングは「故郷に帰りたいな」(アリー訳)とビルから降りて港へ向かう。

 大混乱のサンフランシスコ市中で、人を掴んでいると司令部から通信を受けているにも関わらず米軍のF16がコング目掛けて爆撃! だがミサイルは殆どハズれ、林は火災になるわ民間人の車は炎上するわと被害を大きくしているのはF16の馬鹿パイロットだ。メンバーを2人殺されたジャコも「俺をナメるなヌイグルミ野郎!」(それを言っちゃあ)と無反動砲で攻撃。こちらは素人なのに命中しまくり、大きなダメージを与えられ力尽きたコングはアリーと共にゴールデン・ゲート・ブリッジから海へ落下する。アリーは水上警察艇に救助されるがコングはそのまま行方不明となって完。

 この作品の原題『the Abominable…』は、ヒマラヤの雪男イエティが世界的に有名になった1950年代に英語圏で呼ばれていた「アボミナブル・スノーマン(忌まわしき雪男)」が由来であろう。南洋のキング・コングに対して、寒冷地の雪男を巨大化させたわけだ。このコラムを読んでも作品を観たくなったアナタ、通常の感覚を持つ一般映画ファンが観て「金返せ」だの「時間を返せ」だの罵声を浴びせるのとは逆に、「イイの見つけた!」と喜んでいる筆者の仲間だ!

(文/天野ミチヒロ)

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