三井不動産グループのスタートアップはぶどう事業? 新たなライフスタイル「2拠点農業」とは
三井不動産グループの社内事業提案制度第一号案件として立ち上がった株式会社GREENCOLLAR。その事業は、季節が真逆となる北半球の日本と南半球のニュージーランドを行き来して、クラフトぶどうブランド「極旬」を通年生産するというユニークなもの。
4月8日にはプレス向け説明試食会が実施され、GREENCOLLAR代表取締役の鏑木裕介氏が登壇。同社の事業概要が説明された。
鏑木氏は、なぜ不動産デベロッパーがぶどうの事業を? という誰もが思う疑問に対して「三井ぶどう産とよく言われています」と切り出すと、「土地を活かして事業を行う点では、オフィスビルや商業ビルを手がけることと変わらず、国内農業問題の解決や新たなライフスタイル実現のため」と、事業を始めたきっかけについて語る。
アウトレット施設法人営業などを経て、2019年からGREENCOLLAR設立に向けて動き出し、2020年から同職に就いた鏑木氏。「現状国内で生産されるぶどうは、高品質であっても国内消費が9割以上。世界中へ大量に通年供給できるようにして、農業を取り巻く構造的課題を解決する」と事業をスタートさせた熱い想いを語った。
国内のぶどう生産は5月から8月ごろまでの繁忙期と9月から10月ごろまでの収穫期、そしてそれ以外の閑散期がはっきりしていることが特徴。そこで、収穫を迎えたあと日本のある北半球と真逆の季節である南半球で、再び生産を行う2拠点農業によって、通年のぶどう生産ができるという。
年2回の収穫を行うことで、生産量はもちろんのこと、関わる人員の経験や技術力も2倍蓄積される計算。現在はニュージーランドでも土地を購入して生産準備をしているとのことで、不動産とも重なる投資と回収のスキームを構築し、一定期間で継続的な事業安定化を目指すという。
農家の抱える問題解消に向けては、これまで背中を見せることで継承されてきた技術の見える化を行い、教育ツールやデータ取得などITを活用。2拠点農業へのツール提供も今後行なっていく予定だという。
ぶどうの生産を通じて、北半球と南半球を行き来する新しいライフスタイルを提唱し、それに惹かれた人は年に一度でも月に一度でも歓迎するとのこと。これまでの農業になかった新たな視点でのシナジーも期待していると語った。
GREENCOLLARのパートナー企業である葡萄専心株式会社代表取締役 樋口哲也氏も、ニュージーランドからオンライン出演。20年以上トップレベルの生食用ぶどうを生産している樋口氏は、2014年からニュージーランドで日本式の棚式生産を行なっている唯一の生産者だ。
日本では気候の問題で年間を通じての生産ができず、短い期間での収入で1年を暮らしていたが「このままでいいのかという気持ちが湧いて、思い切って会社として農家をやっていこう」と決意。冬場の収入を得るために、旬にこだわっていたところ「南半球でやればいいのでは?」という奥様の助言でイメージが湧いたという。そこからどの国がいいかを探求したところ、ニュージーランドがふさわしかったとのこと。
親しんだ日本を離れ、遠いニュージーランドでぶどうを生産する行動力にも驚かされるが、樋口氏のこだわりは「ぶどうがしてほしいことをしているだけ」というシンプルなもの。同じ品種であってもそれぞれ個性があるぶどうを丁寧に育てることの大切さが感じられた。
GREENCOLLARのクラフトぶどうブランド「極旬」は、北半球と南半球の両極で旬を極めるという想いがブランド名に込められている。日本を「表旬」、ニュージーランドを「裏旬」として、裏技や裏原宿のような秘密性を楽しめるようにというコンセプトも明らかに。これまでは産地+品種名が一般的であったが、今後は消費者が「極旬」ブランドのぶどうを買いたいと思えるようにしていくという。
プレス向け説明試食会では、ちょうど旬を迎えた「裏旬」のぶどう・バイオレットキングを使用したコラボメニューが提供された。会場にもなっていた「CAFE SANS NOM AKASAKA」店長の佐々木志朗氏からは、「毎月限定のチーズケーキを提供している中で、そのままで美味しいぶどうを生で使えば美味しいチーズケーキになる」と、鏑木氏と意気投合。
ひと粒を贅沢に使用したチーズケーキは、生地の中にもバイオレットキングが入っており、小麦粉などを使わず、グルテンフリーでいただける一品だ。ぶどうの酸味を活かして皮ごと食べられることも特徴で、酸味の効いたチーズケーキとアーモンドの食感、ぶどうの瑞々しさを堪能できる。フルーティな酸味でブラックでも飲みやすいニュージーランド産のコーヒーとの相性も抜群。
「極旬」は自社展開のオンラインストアや飲食店協業型のレベニューシェアによる販売経路作りを構築しており、「極旬」ブランドのファンを、お店とオンライン上でつないでいく持続可能なビジネスモデルを展開していくという。
三井不動産グループがスタートアップで手がけるぶどう事業。これまでにない発想で、農業やそれに関わる人の新しいライフスタイルをどのように実現していくのか。毎年2回に増えたぶどうの旬を楽しみながら、ぜひ見守りたい。
「極旬」 WEBサイト:
https://gokushun.com/
「極旬」Instagram:
https://www.instagram.com/goku.shun/[リンク]
ウェブサイト: https://getnews.jp/
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