SLAC国立加速器研究所は機械学習でバッテリー寿命短縮のメカニズムを探る!
急速充電はバッテリーにストレスをかけ、寿命を短縮する。このプロセスについて究明することで、電気自動車向けのものをはじめとしたさまざまなバッテリーの性能改善に役立つ可能性がある。
米エネルギー省のSLAC国立加速器研究所、スタンフォード大学、MIT、トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)の共同研究チームは、実験から得られたデータと機械学習を組み合わせて、リチウムイオン電池の充電/放電プロセスに関しての新たな性質を見出した。
リチウムイオンの移動速度には粒子の性質が影響
バッテリーの充電/放電時において、リチウムイオンはカソード/アノード間を行き来し、粒子への吸収/放出を繰り返す。粒子は膨張と収縮により亀裂が発生し、電荷を蓄積する能力が徐々に低下。急速充電ではこのプロセスが速まる。
これまでの定説では、リチウムイオンを吸収/放出する能力は、バッテリー内を移動する速度によって制限されると考えられてきた。この説では、リチウムイオンはすべての粒子にほぼ同じ速度で出入りすると想定され、粒子間の違いは無視される。
しかし新しい研究では、粒子自体の性質がリチウムイオンの移動する速度に影響を与えることが示された。
物理的性質について学習する方法を与える機械学習アプローチ
研究チームは、電気自動車のバッテリー材料として最も一般的な組み合わせ、NMC(ニッケル、マンガン、コバルト)として知られるカソード粒子の挙動を観察している。
SLACのスタンフォード・シンクロトロン放射光源によるX線を使用して、急速充電時における粒子の全体像に関する実験を、ローレンスバークレー国立研究所の走査型X線透過型顕微鏡を使用して、個々の粒子に焦点を当てた実験を実施。実験から得られたデータは、急速充電の数理モデルから得られた情報と、化学/物理プロセスを記述した方程式とともに機械学習アルゴリズムに組み込まれた。
データとともに、物理的性質について学習する方法をモデルに与える同機械学習アプローチにより、粒子にはリチウムイオンの放出速度の速いものや、ほとんどまたはまったく放出しないものがあることが判明したとのこと。
この不均一なパターンがバッテリーにストレスを与えると考えられる。同研究結果は、より優れたバッテリー材料の設計に役立つ可能性がある。
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