【レビュー】その絵は果たしてレンブラント本人が描いたものなのか―『レンブラントは誰の手に』
「光の影の魔術師」、レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン。
世界中に広くその名が知れ渡る、バロック絵画を代表するオランダの巨匠だ。
レンブラントが描いた絵画で現存するものは500点ほどと言われているが、この映画は40年超ぶりにレンブラントの作品と思しき絵画が発見された騒動に密着する。
ロンドンの競売で問題の絵画を発見したのはアムステルダムの若き画商、ヤン・シックス。
貴族の家系を継ぐ彼は、レンブラントによって描かれた先祖の肖像画を自宅に保有している。
生まれた時からレンブラントに深い縁のある彼は、画商としての腕を磨き、まさにレンブラントに導かれるように、鋭い眼で彼の作品を観察し、その特徴を見極めていく。
レンブラントに魅了されているのは画商のヤンだけではない。
一流のレンブラント専門家、コレクターの老夫婦、著名な美術館関係者たち。
登場する人物は皆レンブラントに心を奪われている。
特に国の威信までかけて、あるレンブラント作品を取り合うルーブル美術館とアムステルダム美術館のやり合いはまるで絵画の世界のW杯のようだ。
果たしてヤンが発見した絵画の作者はレンブラントなのか別人なのか。
登場人物たちの感情もたっぷり交えて映画はスリルを増しながら展開していく。
比類なき画家として今なお人気のレンブラント。
驚くことに、見ているとくらくらするほど精巧なそのタッチですら、彼は迷うことなく素早く描いただろう、と推測されている。
一方で、彼の絵に魅了された後世の現代人たちは、その作品の持つ魅力に、高い価値に、その作品の真偽にさえも翻弄され、時間をたっぷりかけて迷い続けている。
著名な画家の中でも特に生涯で多くの自画像を描いたと言われるレンブラント。
いくつものレンブラントの自画像が、迷える現代人をいたずらっぽい笑みで観察し返している場面を想像した。
『レンブラントは誰の手に』
■監督・脚本:ウケ・ホーヘンダイク
■出演:ヤン・シックス、エリック・ド・ロスチャイルド男爵、ターコ・ディビッツ(アムステルダム国立美術館) 他
■配給:アンプラグド
©2019DiscoursFilm
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